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僕は異世界で元気です。  作者: 七色雨
使用人編
12/16

第11話

 ロベリアとの会話が終わってその場に座り込む。深く肩を落として、大きなため息をついた。

 さっきは勢いに任せてとんでもない事を口走ってしまった。わざわざ話したに行ったのに、これでは逆効果だ。

 なんでああも調子に乗れるんだろうか。嫌になる。


「……なにやってんのヒュウガ」


 気づかないうちに目の前にいた人物から、声をかけられる。今は誰とも話したくないが、そんなワガママは言ってられない。

 というより言えない。だってその相手が、


「げっ、カルミアお嬢様……」

「げって何、まるで私が怖い人みたいだね」

「いや……怖いです」

「この屋敷出るからって調子乗ってない?」


 いつもの余裕そうな表情ではなく、普通に嫌そうな顔でこちらを見下げる。ぶっちゃけカルミアの言ったことは的を射てる。昨日セーネにタメ口で話しかけたし。


「ていうか本当にどうしたの。もしかして諦めようとしてる?それならぶん殴るけど」

「そんなわけないだろ。ただ失敗したなぁって」

「何を?」

「ロベリアとの会話」

「はぁ?」


 眉間にシワを寄せ、口をあんぐりと開ける。いつもと違い、今日の彼女は表情から感情が読み取りやすい。作戦のことで少し緊張して、普段のように取り繕えないのだろう。

 それを証明するかのように、普段の彼女が絶対言わない暴力的な言葉が飛んできた。


「それ、返答次第では本当に殴らないといけなくなるんだけど」

「違うって!あいつを傷つけることなんか言ってない。どちらかと言えばプラスの事を言ったんだ!」

「プラスのこと言って失敗って、もしかして作戦のことでも話した?」


 その言葉を聞いた瞬間、背筋がゾクッとする。作戦を直接伝えたわけではないが、それでも似たようなものだ。ここはちゃんと白状しよう。


「実は……」

「もし私が本当にお嬢様を連れ去ったらどうしますか、とか?」

「……聞いていらしたんですね」


 俺が勝手に行動してやらかした事なので、文句は言えない。黙って彼女の顔を見て、怒られる準備をする。


「別に説教のために来たわけじゃない。伝えないといけないことがあったから」

「えっと、この首飾りのことですよね?」


 カルミアが話すことならこれに違いない。自らの首にかかっている白い宝石を自信満々に指差す。

 だが彼女の表情は困ったかのように、


「いや違うけど。それに関しては何もわかってないし、適当に物乞いから貰ったやつだから」

「それ、どういう経緯なんすか」


 彼女と物乞いが同じ風景にいるのを想像できない。階級を人一倍気にする彼女が、そんな存在と触れ合うのが信じられない。ヒマリならまだ分からなくもないのだが。

 彼女の場合、奪ったのを貰ったと言っている可能性がある。そんな考えはすぐに見透かして、蔑んだ眼で反論してきた。


「別に奪ったわけじゃないよ。落とし物を届けた礼に貰ったんだ。信用できない?」

「いえ、出来ます……」


 かなりの圧をかけながら、こちらを強く睨みつける。これも無神経に質問した自分の責任だ、素直に謝ろう。


「勘違いしてるんだろうけど、本気で差別意識を持ってるわけじゃないよ。世間体のためだよ、分かる?」

「はい、すいませんでした!」


 頭を下げ、大きな声で謝罪した。だがカルミアはむしろ、さらにイライラしているように見える。大きな声が癪に障ったのだろうか。


「こんな話をしにきたわけじゃないんだけどね。いい加減話させてもらえるかな」

「はい、申し訳ございません」

「はいばっかだな君は……。要件だけど、お姉様がロベリアの監視は既に書き換えたって」


 カルミアは打って変わってにこやかな表情でそう言う。だが俺はそれに疑念を抱いた。


「だからさっきのロベリアに言ったことも大丈夫、安心して」


 それはおかしい。セーネは今日の夜に書き換えると言っていた。だが、既に書き換えてるとはどういうことだ。


「待ってください。セーネは今日の夜に実行すると言っていました。ですが今はまだ朝です。とても夜とは言えない」

「どういうこと?お姉様は今日の朝に書き換えるって言ってたけど……」


 不穏な空気がその場に流れる。当然だ、これではセーネが嘘をついたことになる。こちらに不利益な嘘だ。

 そのとき、嫌な考えが頭をよぎる。セーネが主人とグル。もしそうならこのことにも説明がつく。


 でも昨日の彼女を思い出すと、とてもそうは思えない。しかし、そうでなくてはこの状況にはならないだろう。

 もしかしたらセーネが言い間違えただけかもしれない。わずかな希望を持ち、話題を変えた。


「ていうか、セーネが言っていた監視者はどこにいるんですか。さっき話していた時に一切、見当たらなかったのですが」

「……初耳なんだけれど、それ」


 俯きながらそう返される。セーネが嘘をついた。信じたくない現実が、強く頭に突き刺さる。

 頭を抱えて、静かにため息をつく。カルミアも気持ちは同じようで、床を強く睨みつけ歯をギリギリと鳴らしていた。


 不穏な空気は変わらず流れ、疑念が脳にこびりついた。

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