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第1音
辞めてやる。こんな人生
そう決意した俺は、今日ここで死ぬ。
毎日毎日毎日ピアノピアノピアノピアノ。
幼い頃からピアニストになれと親に過剰な期待と圧をかけられ、異常な程の英才教育を施された俺は、確実にプロのピアニストとしての頭角を現していた。
出る大会やコンクールは全て最優秀、金賞、第1位。
中学三年生にして日本の大会を総ナメにしてきた天才だった。
しかし、俺はピアノが好きではなかった。最初からだ。
家が音楽一家だからと強制的にやらされただけだ。
本当はもう、身も心もボロボロだったのだ。
「来世がもしあるのなら、音楽に関わらない世界に。
それか、音楽を心の底から愛せるくらい楽しい世界に生まれたいなぁ」
そして、まだ中学三年生の俺は
自宅のベランダから飛び降り、自ら死を選んだのだった。