3.集いの村
3話目です。すごく遅いですがちゃんと書いていますよ。…亀の歩みですが。
ということで前回の話を忘れちゃったーって人は前回のお話を読んでね!(他人任せ)
では本編をどうぞ!
「じゃあ、早速手伝ってもらおうかな」
オシャレイケメンのタケシはそう言うと、こちらに白衣を手渡してきた。
「これが仕事着ね。私服の上からでいいから。見た目でお医者さんって分かるように、仕事中は常に着てるんだ」
白衣ってすげーよな。着てるだけで医者って分かるシンボルマークだもん。あとはマッドサイエンティスト。やだ、世界線移動しちゃう。
そんなことを言いながら白衣に袖を通しきった俺を見て、タケシは微笑んだ。
「うん、とっても似合ってるよ、ソーマ。目つきの悪い君の顔に似合うかどうか不安だったけど、あれだね、ちょっと当たりがきついけど本当は患者さんのことを第一に考えてる腕の立つお医者さんに見えなくもないよ」
「さらっとディスりを入れてきやがったぞこいつ。目つきが悪いのは生まれつきだ、悪かったな!お前だって…おま…ぐっ!性格はクソだが容姿に関して言えば貶せる部分がひとつもねぇ!」
「いや〜照れるなぁ」
「褒めてねぇよ!」
「あはは。君は本当になんでも反応してくれるから、からかい甲斐があるよ」
こいつと会話するのは疲れるし、話が進まない。
「んで、これを着て、俺はなにをすればいいんだ?」
「う〜ん…見てもらった方が早いかな。早速だけど、ついて来て」
そう言うと、傍にあったカバンを持って外に出るよう促した。俺も慌ててタケシについて行く。
さて、初めての外の世界、一体どんなふうになっているのか…。
…結論から言うと普通だった。別に変わったものはなく、むしろ少し古びた中世の時代劇なんかに出てきそうな木造、ないしはレンガ造りの建物がポツポツと建っていて、あとは畑が広がってたり動物たちがいたり…。The田舎町って感じだ。
もっとオシャレな建物とか、見た事もないような建築物とかを期待してたんだが…。まぁ村って言ってたしこんなもんか。
「今日は8件仕事が入ってるよ。まずはヒルドさんの所だね」
そう言って村を歩いていると、度々、村の人から声をかけられる。
「やぁ主様、いつもご苦労さま。あぁそうだ、良かったらうちで取れた野菜、食べてよ」
「主様!昨日はありがとうございました!おかげで妹はすっかり元気になって…。またお礼に伺いますね!」
「あるじさまだー!あるじさまきたよー!…あれ、この人だれ?ふしんしゃ?」
ゆく人々に声をかけられ、野菜やら果物やらを貰っているタケシ。ほぇ〜タケシって人望厚いんだなぁ…。…それと最後のガキ、誰が不審者だ。俺は今からニートを脱退し社畜になる男ぞ?
生意気なガキが興味深そうに俺を見て質問やら何やらをしている内に目的地に着いたようだ。…このガキの家だったのね。
「いつも来てくださってありがとうございます」
「いいえ、診察に伺うのも僕の仕事ですよ。足の調子はどうですか?」
椅子に座り、少し申し訳なさそうに微笑みながら待っていた方、この人が最初の患者さん、ヒルドさんで間違いなさそうだ。
「えぇ、だいぶ良くなってきましたわ。主様のおかげで痛みもほとんど無いの。…あら、今日はお連れの方がいらっしゃるのね」
「はい、今日から僕の助手として働いてもらう、ソーマです。これから会う機会もあるかと思いますので、どうぞ宜しくしてやってください」
「あ、成瀬颯馬っていいます。よろしです」
「主様が見立てた人だのも、きっと優秀なお人なのね。これからもよろしくお願いします」
すみません、偶然選ばれただけなので優秀ではありません。
心の中でそんなことを思いつつ、俺はその言葉の飲み込んだ。
「じゃあ見ますね。失礼します」
そう言うと、タケシはヒルドさんの足に触れた。すると、タケシの手の周りが緑色の光によって覆われ、その光がヒルドさんの足を包み込んだ。
「おまっ…これ、魔法か?魔法なのか!?おぉ、やっぱあるんだなぁ、魔法!まさか俺を驚かすためにLEDを手に仕込んでた、とかじゃないよな!?」
「…え?あ、えっと、ちょっと何言ってるか分からないけれど、魔法、だよ?…どうしたの、急に興奮して。…まさか魔法を見るの初めてとか言わないだろうね」
「おう、初めて見た」
「…それでどうやって生きてこれたのか、僕は不思議で仕方ないよ」
魔法だぜ、魔法。俺の世界にはなかった特別な力、超能力と言ってもいい。それがこの世界にはあるって分かったんだ。これが興奮せずにいられるか。
俺の興奮した様子を見て、タケシはやや困ったように笑っていた。
「…あぁ、失礼しました。診察に戻りますね。…うん、前よりだいぶ良くなってきています。この調子なら、あとは処方する薬と治療を継続していけば、また歩けるようになるまでそう日はかからないでしょう」
「ほんと!?おかぁさん、また元気になる?」
「ほんとだよ。だからそれまでユリちゃんも、お母さんのお手伝い頑張れる?」
「うん!がんばれる!」
ユリちゃんはそう言うと家の中へ走っていった。微笑ましいな。
そして、思ったよりかなり優秀だったタケシ。歩けるようになるのかよ。まじかよすげーな。俺もなにか怪我した時はこいつに見てもらおう。絶対。
「よし、次のところへ行こう」
「あの…これ、少ないですが前回と今回のお礼です」
差し出された布袋。恐らくお金が入っているのだろう。だが、タケシはそれを受け取らなかった。
「お代は頂けません。気持ちだけで十分ですから」
診察料を取らないだと…!?どこまで聖人なんだ…!
「でも…」
ほら、ヒルドさんも困ってるじゃないですか。無償の善意こそ怖いものは無いんですよ。後で何請求されるか分かったもんじゃないからな。
押し問答を繰り返してると、家の中からドタドタと足音が聞こえてきた。
「あるじさまー!これ、おかぁさん元気にしてくれたお礼ー!」
ユリちゃんが持ってきたのは草花で作った花かんむりだった。
「素敵な花かんむりだね。…よし、今回の報酬はこれ、ということで」
「いやでも……分かりました。あなたのご好意、受け取らせて頂きます。本当にありがとうございます」
「ではこれで。次に行こうか、ソーマ」
俺たちは次の人の所へと足を運ばせる。道中、先のやり乗りで気になったことを質問してみた。
「なぁ、気になってたんだけど、なんでお前って報酬受け取らねぇの?」
「ん?あぁその事か。…僕自身に課した制約、みたいなものかな」
「制約?そりゃまたなんでそんなもの」
「…僕は、人から多くのものを奪ってきたから…。今も昔も…これからも。人から貰うことなんて、そんなこと出来ないよ…。…許されない」
こいつは、過去になにかあったのだろう。それぐらいは今ので想像出来る。
だが、その真意がどこにあるのか、何を言ってるのかはピンと来ない。当たり前だ。俺はタケシの過去を知らないし、どんな人なのかもよく分かってない。
自身から話さないのであれば、それは彼にとって話したくないことなのだろう。だから無理に詮索などしない方が良い。
「おっけーわかった。その制約があるから極力人から貰わないってことね。でも,そしたら生活費はどうしてんだ?」
「あぁ,お金とかは貰わないんだけど,薬や治療費と交換って条件で生活に必要な物はいただいてるかな。物々交換,みたいな。そうしないと僕は生きていけないからね」
「それって治療費とお金を交換するのと違いなくねぇか?」
「この村は人と建物,農作物はあるけど,鍛冶屋や商店みたいなお金と物とで取引する場所はここにはないんだ。もちろん村人同士,個人個人でお金と必要な物を交換することはあるかもしれないけどね。お金は専らこの村の外で使うものなんだ。…僕はこの村からは出ないから,お金があっても使わないから」
「なほどねぇ。まぁ,お前がこの村から出ない理由とかいろいろ疑問はあるけど,話したくないんだろ?聞かないでおくよ」
「…助かるよ。さて、次の依頼人の所はもうすぐだ」
タケシの秘密。気になるっちゃあ気になるが、本人は喋りたく無いようだ。だから、本人が話したくなるその日まで、この秘密はお預けってことで。
8件の仕事が全て終わった頃には辺りは夕暮れでオレンジになっていた。
今回の仕事内容は診察周りがほとんどだった。足の治療の経過を診たり、風邪の引き始めに薬を処方したり、後遺症を治したり。…後遺症ってあんな簡単に治るもんなんだね…。やっぱ魔法の力って偉大だわ…。
魔法をこの目で実際に見て、やっぱ異世界に来てしまったんだなって実感すると同時に、未知の世界、新たな世界での冒険に心躍らせている自分もいる。だって男の子だもん。
だけどまぁ疲れたなぁ…。今日1日、驚きや戸惑いの連続でいつも以上にどっと疲れが出たような、そんな感覚さえ感じる。ただタケシに付いて回っただけなのにな。
「お疲れ様。どうだった、やって行けそう?」
タケシの自宅に帰ってきた俺たちは夕飯を食べながら(ご馳走になりながら)今日一日を振り返る。
「あぁ…疲れたことには変わりないが、まぁ慣れてないってだけで、慣れればやって行けそうだよ」
「そっか良かった。じゃあ、僕の助手兼親友として、これからもよろしくね!」
「おう!お世話にな…おい待て、親友ってなんだ親友って」
「僕には親友って呼べる友達がいなくてね。同年代の子がいないって言うのもなんだけど…。良かったら僕の親友になってくれないか?」
「おいおい、親友ってのはな、深い友情関係を長年築いてきた者たちにのみ許されるものなのでまずは友達から始めましょうお願いします」
「…ぷっ…あははははっ!」
「なぜ笑う」
「いやぁごめんごめん。てっきり断られるかと思っていたからさ。うん、こちらこそよろしくね!ソーマとなら今度は上手くやっていけそうな気がするよ」
「気になる言い方だが、お前が話す気になるまでは詮索しない。だから、いつかお前の過去話についても聞かせてくれや」
「…うん。いつか話すよ、絶対」
俺たちはテーブルの上で握手を交わす。お互いの約束を破らないようにと。
こいつとの関係は絶対大切にしよう。そう心に決めた。なにせ、これが俺にとってこの異世界で出来た初めての友人なのだから。
俺の異世界での物語はここから始まるんだ!
その夜、○○○の部屋。
「…っぐっ!?…なんでっ…!?なんで今回に限って…早いんだよ…!!」
そして、悲劇の悪魔はその目を覚ます。
次回「崩壊の日」
(2020/3/3一部文章改変済)