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秘書

「おはようございます。」


私が出社した頃には、すでに柊さんは会社にいて仕事をしていた。

いつもは私が座った状態で挨拶をしていたので、

座っている柊さんに、立った状態で挨拶をするのってすごく新鮮だ!



「おはよう。」


「・・・慣れないですね~この席。」


「俺もこっち側の席にはなれないな~。」


苦笑している柊さん。


私は柊さんの前に席となっているのだが、昨日まで隣のシマに席があったため

今朝もそちらに行こうとしてしまい、慌てて私はこっちに座り直したのであった。


柊さんは所謂課長席で、みんなが見えるような配置の場所に座っている。

その後ろには通路を挟んで村中部長の席となっている。


昨日から出社している柊さんなのだが、


「視線を後ろから感じるのは・・・やっぱり気になる!」


とイマイチ課長席になれていない様子だった。



「あの・・・本当に雑巾がけとお茶出しはいいんですか?」


「いいよ。本人にやらせなよ。」


「分かりました・・・。」


今まで出社してから、机の雑巾がけやみんなのお茶出しをしていたため

そのルーティンがしみ込んでいる。


それが無くなると急に手持無沙汰になるのだが・・・



「元の仕事は大丈夫?」


「あ、はい。引継ぎは全部終わってますんで。」


「そう。じゃあ、こっちの仕事をするんだね?」


「はい!」


そういうと柊さんはささっと動いたかと思うと、



「今、メールで有機ELについての資料を送ったから、まずは目を通してよ。

 どんなモノなのか理解してもらいたいから。

 それと添付しているURLには、うちの社内の有機ELのデータベースになっていて、

 現状がどんなものかわかるから、見ておいてね。

 すでに井口さんはデータベースにアクセスできる権限は与えられてるはずだから。」


「はい。」


私は柊さんの指示に従って開いて、資料に目を通していく。

その資料は有機ELの原理から、現在の用途までまとめられた資料であった。


本当に詳しくまとめられている・・・んだけど・・・

今までやってきたことがない分野であるため知らない言葉が多すぎて・・・

結局イマイチ理解できない。


それにネットで調べてはみるのだけど、有機EL自体がまだまだ新しい技術であるため

ネットにも書かれていないことが多いい。



「柊さん・・・すいません、質問してもいいですか?」


「いいよ。」


結局は柊さんに質問して教えて貰うのであった。

その後も質問をするのだが、一つ一つ丁寧に答えてくれて、嫌な顔を全くしない。



「すいません・・・。」


「何で?分かんないことはドンドン聞いてくれてかまわないから。」


そう言ってくれるのでちょっとだけ気持ちが楽になるのだ。


8時00分になると1人の女性がやってきた。



「おはようございます。柊リーダー。」


「おはようございます、野々宮さん。

 ・・・リーダーの呼称いらいないですよ。」


「じゃあ、何とお呼びしましょうか?」


「柊で結構ですけど。」


柊さんがにっこりと微笑むのだが、



「柊さんは私の上司になりますので、柊さんもしくは柊参事でお呼びしたいのですが?」


「・・・さんでいいです。」


「呼ばれ慣れてないかもしれませんが、柊さんは参事になられてるんですから、

 参事で呼ばれることに慣れてください。

 まずはさん付で呼ばせていただきますが。」


「・・・はい。」


「・・・あれ?参事なんですか?柊さんって・・・。」


2人の話を聞いていた私が質問すると、



「柊参事は今回、照明事業部と本社の新事業推進本部との兼務をしているの。

 本社の新事業推進本部に配属になるにあたって、参事級に昇進したのよ。」


野々宮さんが説明してくれる。


野々宮さんは昨日挨拶をしてくれた女性で、

本社の新事業推進本部の部長に就任した村中部長の

秘書さん兼、照明事業部の私達の庶務さんである。


今日は照明事業部に村中部長が出社予定であるためこちらに野々宮さんも出社している。

説明してくれた野々宮さんにお礼をいうと、今度はおもむろに柊さんに近づいて、



「コップをお渡し願えますか?」


「え?」


「お茶を入れてまいりますので。」


「自分で淹れますよ。」


「駄目です。」


野々宮さんがピシャリと柊さんにダメ出しをする。

そして、続けて、



「柊参事のことですから、新人の方などにお茶を煎れさせないということは理解できます。

 そもそもそれは仕事の一環ではないですから。

 ですが、秘書の場合はお茶を準備したり、机をキレイにしたりするのは仕事の一環です。

 ですので、それを取り上げるのは止めていただきたいのです。」


「・・・わかりました。」


そう言って、コップを渡す柊さん。



「井口さんも私にコップをください。」


「は、はい。」


私は井口さんにコップを渡す。

コップを受け取ると給湯室へと足早に行くのであった。



「・・・怖い・・・。」


ボソッと漏らす柊さん。

話を聞いていると柊さんよりも年上らしくて、何やら頭が上がらないらしいのだが・・・

けど、普通に仕事だけではなく、昨日はプライベートの話もしていたな・・・


どんな関係なのかが気になるんですけど!!!


けど、聞けないけど・・・



しばらくすると野々宮さんが机を拭いてくれて、

更にはコーヒーを出してくれるのであった。



「あ、そういえば、御茶代ってどうしてるんですか?」


ふと疑問に思って聞いてみると、



「本社では各部署にお茶代が月々出ています。

 照明事業部ではないとのことでしたので、村中部長に聞いてみたのですが、

 照明事業部での費用も新事業推進本部から出す了承を得てますので

 気にしなくて大丈夫ですよ。」


「そうなんですか・・・。」


何か本社って全然違うな・・・

こっちだとそんなお金何って出てないのに・・・


自腹です・・・自腹・・・


うらやましいな・・・


そんなことを思っていると、野々宮さんはうちの部署に来ていた手紙などを

みんなの席に置いていく。



「あ!?」


私は思わず驚いたのだが、すでに私の席に来る時には封筒の一部が切り取られており、

すぐに取り出せるようになっていたのであった・・・


ここまでするのが秘書なんですね・・・


今まで経験したことがないのでちょっと感動です。


8時半ごろになると2人ほどが出勤してきた。

1人は村中部長で、



「おはよ~。」


なぜか朝一番で体調不良のような顔をしているのであった。



「「「おはようございます」」」


私達三名からの挨拶に軽く手を挙げて応えて、自分の席に座るのだが・・・



「目の前に柊ちゃんの頭があるのにはなれないな~。」


「僕も背後から視線を感じのには慣れないですよ・・・。」


2人で笑いながら仕事をし始めていたのであった。


次話は8時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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