表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/67

最後の駆け引き

「・・・どうしてビールを飲みに行っちゃだめなんですか・・・。」


「空港に着いたら飲ませてあげるから、それまで我慢しておきなよ。」


「すでに会談を終えて、事務所に戻ってきて、ずっと事務所に待機してますけど・・・。


 せっかくヨーロッパに来たのにお昼もこっちの人のご厚意でお寿司を頼んでくれましたけど・・・


 私は現地の物が食べたいんです!!」


「もうちょっとの辛抱じゃん。

 16時にはここを出て、空港に向かうんだからさ。

 そのあと、手続きを終えたら好きなだけ飲めるよ。」


「だ・か・ら!

 地元の物が食べたいんです!!

 現地のお店に入って美味しいモノを食べる!これがしたいんですって!!

 もう、交渉も終わってしまったんですよ!!」

 それならせめて美味しいモノでも食べていい思い出に・・・。」


「まだ交渉は終わってないよ。」


「・・・え?」


その時だった、事務所に一本の電話がかかってきた。


もしかして!?



「柊さんにお電話です。」


これって!?


ドキドキと心臓が早鐘を打っている・・・


電話を受け取ると、スピーカーモードにしてみんなに聞こえるようにしてくれた。



「柊です。」


「大塚です。今、部長と電話を代わります。」


しばしの沈黙が走り、



「こんにちは。」


「こんにちは、部長、どういったご用件ですか?」


「こちらで君達が帰った後で協議をした結果、値段を下げることにした。」


「いくらですか?」


「2倍にまで下げる。」


「契約書通りの値段に下げてください。」


「ダメだ。それは出来ない。」


「契約書を交わしておいて、出来ないはないでしょう。」


「これ以上は・・・ない。」


「・・・分かりました。一点だけこちらからも妥協をしましょう。」


「・・・何かね?」


「直接御社と取引をします。」


「・・・ホントかね?」


「ええ、だから値段を契約書通りの値段にしてください。」


「・・・それでも難しい。」


「・・・何が難しいんですか?

 もともとそちらの提示した値段い戻せと言っているだけですよ?」


「それは・・・できない。」


「有機ELを安売りしたくない思惑があるんでしょう?

 それで南日本電機が想定以上に安く値段設定をしていたのだから、

 慌わてて交渉しようとでも考えていたんじゃないんですか?」


「・・・。」


「先に言っておきますが、こちらの妥協は直接取引をすることだけです!

 それ以上の妥協はない!!


「・・・しかし・・・。」


「直接取引が出来れば、エレクトロニクス社だって十分なメリットになるでしょう?

 世界初の有機ELの照明器具にエレクトロニクス社が

 納めた有機ELが入っていると言えるし、

 南日本電機と直接取引をしていると公言できるんですから。

 このメリットをふいにするのならどうぞ。

 こちらは・・・これ以上は妥協はしない!」


「・・・返事をするのを待ってくれないか?」


「どうして?それにご存知のようにこちらには時間がない。

 待つのなら自社製に切り替えるだけだ。」


「だ、だが・・・・。

 有機ELがまだ製造できていない!だから・・・。」


「信頼が一つ下がった。」


「え?何だって?」


「もうすでに日本に関東の倉庫にあることは確認済みなんだ。

 俺達にそこの倉庫から提供すればいいだけだろう?」


「・・・。」


どのくらいの沈黙が続いたのだろう。

柊さんが言葉を発してから長い沈黙が続いていた。



「・・・わかった。値段は元に戻す。その代わり直接取引だ。」


「いい交渉ができたと思う。

 以前の契約書に直接取引が追記されて、商社の講談商事が外れた契約書を

 今、送ったから確認してくれ。」


「・・・分かった。こちらもいい取引が出来て憂いしいよ。

 こちらにサインしてすぐに送るよ。まだこちらにいるのか?」


「あと30分もすれば空港に向かうよ。」


「サインしたらそちらに部下に届けさせるよ。」


「社内での確認は?」


「我々は君達を信用している。信頼を失った我々の償いだ。すぐにだそう。」


「ありがとう。こちらとしては助かるよ。」


2人が話した後に電話が切れる、それと同時に・・・



「うぉおぉぉぉおぉぉぉ!!!!!」


事務所中から歓声が上がるのであった!?



「え?え?え?これは何事ですか?柊さん!!」


もしかして・・・


もしかしてとは思うのだけど、確信が欲しい!!!


私が話しかけたにもかかわらず、

柊さんはスタッフさん達と握手を交わしていって、

私に説明をしてくれないのである!!



「ちょっと!柊さん!どうなってるんですか!!!」


その私の声にやっと気づいたような顔をする柊さん。



「え?英語わかんないだっけ?」


「分からないって言ったでしょう!!」


「だいたいこの雰囲気で分かるだろうに!!」


「分かりますけど!確証がほしいんです!!どうなったんですか!?」


「OKだ!値段は変わらないってさ!」


「本当ですか!?」


すごいことが起きたんだ!!!


私はいっきにボルテージが上がっていくのを感じて、思わず柊さんに飛びつくのであった!!!



「私!絶対にダメだっと思ってました!!

 みんな無茶苦茶厳しい顔をして交渉してるから!!」


「苦しい!苦しいから!首!首締まってる!!」


「私、私!!今猛烈に感動してますよ!!!

 私は本当にこの現場に来れて良かったです!!」


一段と私抱きしめる腕に力が入ってしまう。


そんなの当然だ!!


だって、こんなに驚き!


ドキドキしたこと何って今まで一度もない!!


これで、私は初めて有機ELの照明器具化に成功したんだ!!



「ああぁ!!!せっかくなら写真撮りましょう!!」


そういって、私はポケットからスマホを取り出し、写真を撮る!

柊さんと私のツーショット!



「鈴木さん!私の写真撮ってもらえませんか?」


そう言いつつスマホを投げて、柊さんに抱き着いたままポーズをとる!



「ちょっと待て!!」


柊さんが私との写真に制止をしようとするのだが、



「さっき2人での写真撮っちゃいましたからね~。

 あれ・・・奥さんに送りましょうか?」


「お、お前!?脅迫か!?」


「ほら!スマホの方を見て!あ!撮ってください!!」


何か横で言っているが私は気にせず写真を撮ってもらい、



「せっかくだからみんなで撮りましょう!」


そういって、たまたまフロアにいたメンバー全員で写真を撮るのであった。


私にも握手を求めてくる人もいたのだが、

正直何を言っているのかが分からない。

すると、



「君達は巨人に勝ったんだ。って言ってるよ。」


柊さんが訳してくれる。


そっか・・・


だからこんなにお祭り騒ぎなんだ・・・


エレクトロニクス社は本当にヨーロッパでは超大企業なんだろう。

そこに交渉でこちらの意見を飲ませたのだからすごいことなんだろうな・・・




その後、エレクトロニクス社からサインが入った書類を持ってきた大塚さん。

その確認をすると、



「サインした契約書だけではなくて、こちらが再三要求してた環境書類とかまだありますね。」


ニッコリと微笑む柊さんに、



「それだけではなくて、エレクトロニクス社は御社からの査察も受け入れるつもりです。

 先ほど御社の査察担当者に連絡を入れたので、

 調整が済み次第査察が開始されると思います。」


「それはそれは良かったです。」


「これで御社からの製品販売に何の影響もなく予定通りに販売できるはずです。

 もしこちらの不備があれば、早急に対応しますので、遠慮なくお申し出ください。」


「・・・ふはははは、先ほどまでとは打って変わってってというか、

 変わり過ぎてて怖いくらいですよ。」


「・・・御社の本気・・・というか、柊さんの本気という方が正しいのかしれませんけど、

 そちらの方が私達にとっては恐ろしいモノですよ。

 そんな怖い方には大人しく従って、こちらのメリットを甘受する方がいいです。」


「人聞きが悪いですね~。

 よっぽど大塚さんや部長さんの方が怖いですよ。」


「・・・失礼ですけど、海外との交渉経験は?」


「ああ、僕は二年ほど海外にいたんです。」


「それなら納得です・・・。これからも弊社を宜しくお願いします。」


「こちらこそ宜しくお願いします。」


私達は書類を受け取るとすぐに空港へと向かう。



「・・・出国審査した後だと、これぞ現地って食べ物がないんですけど・・・。」


「・・・さっきまでの感動はどこに行ったんだよ・・・。」


「そんな過去のことは忘れました!!今は私の食欲を満たす方が大事です!!!

 どうしてくれるんですか柊さん!!!」


「あ、あそこ、ほらご飯食べれそうだよ。」


「あんな立ち飲みスペースで騙されるなんて思わないでくださいよ!

 絶対に日本に戻ったら、美味しいモノを食べさせて貰いますからね!

 “俺のフレンチ”でたらふく食べてやる・・・。」


「あ、もう・・・お店は決まってるんだね・・・。」


「当然です!!私の給料じゃ、ちょっと躊躇しますけど、柊さんの財布なら躊躇しません!

 ありがたく思ってくださいよ!安い所を選んでるんですから!!」


「・・・どんだけ上から何だよ・・・。」


苦笑する柊さんと共に私はとりあえず立ち飲みスペースで

ウィンナーやフィッシュアンドチップスを堪能するのであった。

その後、日本行きの飛行機に乗るんだけど・・・


エコノミーでヨーロッパは本当に辛いし!!!


部長になりたい・・・村中部長、確かビジネス?ファーストクラスで行くって言ってたし・・・


次話は9時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ