昇給システム
「先に言っておくけど、井口さんとそんなに変わらないからね給料は!
年齢3つ上なのと、確かにランクアップしてるから多いいけど・・・。」
「・・・そう言えば気になったんですけど、
ランクアップするとどのくらい給料って上がるんですか?」
「ランクが一つ上がると月でだいたい3万くらい上がるかな。」
「ええ!?そんなに!?じゃあ、私の給料よりも少なくとも月3万多いじゃないですか!?」
「ちなみに・・・2つランクは上だからね。」
「はぁ!?それって6万以上多いいってことでしょう!!!
そんなに貰ってるんですか!?」
「井口さんは院卒だから、今年2年目だったよね?
だったら、早ければ今年1つランクが上がるよ。」
「ええ!?本当ですか!?」
「7月を楽しみにしておけばいいよ。」
「は、はい・・・。
って、騙されるところでした!!
今は、柊さんがたらふく貰っている話です!!
危うく話をすり替えられるところでしたよ・・・まったく油断もすきもあったもんじゃない!」
「・・・だましてないからね。人聞きが悪い!!」
「それでも、もう一つランクが高いんでしょう!?柊さんは!!」
「たぶん、今年もう一ランクあがるかも・・・。」
「えぇ!?」
「大体、ランクを一つ上げるのに最短で3年ほどだからね。
5段階評価されて、3年連続一番高い評価をされれば、
ランクアップするのに必要なポイントがたまってランクアップする仕組みなんだよ。」
「・・・もう一度詳しく説明してもらっていいですか?」
私は思わず柊さんとの距離を詰める。
私が詰めすぎたせいで、少しだけ身を反らす柊さん。
「・・・割と食いついてくるね。」
「だって!お金って大事じゃないですか!!!」
「そ、そうだね・・・。
ただ、ちょっと離れてくれると助かるんだけど・・・。
周りの視線がちょっと痛いからさ・・・。」
そう言われて、ハッ!と気づく。
今、私達は不動産の物件を決めたので、近くのコーヒーショップで休憩をしていた。
窓際の席に二人並んで座っており、道行く人が私が思わず柊さんにしがみついたのを
好奇な目で見ていくのが見えてしまっているのである・・・・
「す、すいません・・・。」
「まあ、いいけど。
まずはランクアップの話だけど、1つランクをあげるには、
100ポイントを貯めなきゃいけないんだよ。」
「ああ、それは何か聞いたことがあります。」
「基本的には仕事の成果で付与されるポイントが決まってるんだけど、
一番上の評価で20ポイント、次からは15ポイント、10ポイント、
5ポイント、3ポイントって順番になってるんだよ。」
「それってボーナスとかの査定の評価のことですか?」
「そうそう、あの時、ランク付けされてるだろう?
うちの会社だと上からS、M、A、B、Cって具合に。」
「あれってボーナスだけじゃなくて、昇給にも影響があったんですね!?」
「そうだよ。
ちなみに仕事との評価だけで100ポイントを貯めようとすると
一番高い評価のSをとっても5年かかるじゃん。」
「20ポイントだから、5年で100ポイントですね。」
「だけど、100ポイントのうち50ポイントは自己啓発で取ることもできるんだよ。」
「自己啓発?」
「そう。会社がこのポイント判定に認定している資格を取ればポイントがもらえるんだよ。
例えば、照明コンサルタントとか、日商簿記3級とか取ると
その都度10ポイントがもらえるんだ。
これらは自己啓発ポイントに換算されるんだ。
だいたいが5~10ポイントだけど、大きいのになると大学院卒、
会社に入って大学院を卒業したりすると30ポイントが付加されたりとかもあるかな。」
「へぇ~!?知らなかったです!」
「それと一年目は色んな教育があるだろう?」
「ありますね・・・。」
「それもポイントの対象になってるから、
教育でたまったポイントと、更には大学院卒のポイント30ポイントで
うまくいけば1年目でランクアップするんだよ。」
「え?だけど、会社の業績で50ポイントを稼がないといけないんですよね?」
「普通はそうなんだけど、大学院卒入社の場合には30ポイントが
自己啓発ポイントではなくて、業績ポイントとして加算されるんだよ。
だから、一年目でS評価の働きをしていた場合には20ポイントが加算されて、
うまくいけばランクアップする仕組みになってるんだよ。」
「な、なるほど・・・。」
「だから、あとは自己啓発をどれだけやっているかだよ。」
「ちなみに柊さんはどれくらいやってるんですか?」
「俺はせこせこ稼ぐために日商簿記を4級から受け初めて、結局1級まで取ったり、
日商簿記1級を持っているから税理士をとって・・・あとは行政書士とかも持ってるよ。」
「えぇ~!?」
「ちなみにそこら辺も自己啓発ポイントが高くって20ポイントとかなので
取るのならおすすめするよ。」
「・・・絶対に無理ですよ・・・。」
「そう?意外と何とかなるもんだよ。」
「毎日仕事していて、それが終わってから勉強するなんって・・・
想像しただけで気持ちがげんなりします。」
「あははは!大丈夫だって!頑張ってね~。」
「うう・・・、絶対できないって思ってるでしょ~!!」
「人聞きが悪いな~、俺は少なくとも出来たんだから、
絶対に出来ないってことはないと思うよ。」
「そうでしょうけど・・・。
柊さんが出来たからって、みんなが出来るってことはないと思いますよ!
何か柊さんって・・・変人みたいな感じがしますし・・・。」
「変人って!?ひどくない?」
「そうですかね?的確に言い得てると思います!我ながら!」
「自画自賛かい!」
「誰も褒めてくれないんで・・・はぁ~、上司が褒めてくれないと辛いな・・・。」
「何で、俺の悪口を言っているのに、俺が褒めなきゃいけないんだよ・・・。」
「そこはちょっと大人なの対応をお願いします。
心が狭いですよ!柊さん!!」
「・・・。」
お互い笑いながら、コーヒーショップで過ごすした後、
買い物がてら、横浜の街を案内して、羽田空港に分岐する駅まで同行した。
「じゃあ、四月から宜しくね。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
そう言って私は深々と頭をさげるのであった。
あれだけ、最初は嫌がってたのに、結局は柊さんの元で働く決心をするんだなと苦笑しながら。
次話は8月12日7時更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。