展示会での失態!
「お店で食事・・・・は、ムリよね。」
見回すと店の外まで人が長蛇の列を作っており、
とてもじゃないけどお昼休みの間に食べれそうにはなかった。
私、舐めてたわ・・・
都会がどんなところかを初めて経験するのであった。
・・・明日からはお弁当持って来よう。
コンビニで済ませようと、近くのコンビニに行く途中、
「柊君!!」
何とコンビニには柊君がいたのである!
「あ、江田さん!お疲れさまです。お昼休憩ですか?」
「うん。柊君も?」
「ええ、何とか抜け出せました。」
思いっきり疲れたような顔をする柊君。
だから私は、
「ご飯屋さんにでも食べに行かない?」
「いや~、あの長蛇の列を見ると休憩時間では無理ですよ。」
そこで言われて思い出した!あの長蛇の列を・・・
「そうよね~。だから、私コンビニに来たんだった・・・。」
「俺もですよ。完全になめてましたね。
時間を少しずらせば空いていると思ったんですけどね。」
「関東って全然九州と違うよね。」
「九州だって長蛇の列ができるところあるでしょうに~。」
「あるけど、何か規模が違うし!
それに九州の人は長蛇の列を見たら、すぐに別の所に行くけど、
こっちの人はそのまま並ぶじゃん!アレが信じられないのよ~。」
「ああ、こっちの人は1時間くらい並ぶのが普通らしいですよ。」
「ないわぁ~。」
「俺もないです。それなら別の所に行ってご飯を食べますよ。」
「同感!」
そう言いながら、おにぎりとパスタ、野菜ジュースを手に取る。
柊君も同じようにおにぎりとパスタをとる。
そのまま並んでレジに行くのだが、
「あ、私が払うから!まとめて!」
「え!?」
「だって、アレだけ助けてもらったんだし、これくらいお礼をさせてよ。」
「いやいや、何もしてませんよ。」
「してもらた!何よ!九州の女に恥をかかせるつもり!!」
「・・・・じゃあ、ありがくご馳走になります。」
「うん!よろしい!!」
2人で、近くの花壇の一部に腰かけてご飯を一緒に食べる。
そんな些細なことなのに昼からも頑張ろうって気になるのであった!!
「じゃあ、昼からも・・・
頑張りんしゃい!」
「江田さんも、頑張りんしゃい!」
「うん!」
私はコンパニオンとして、柊君は説明員として昼からも頑張るのであった。
しばらくは大変だったものの何とか仕事をこなしていたのだが、ある時、
「Excuse me!」
急に外国人の人に話しかけられたのであった。
英語何ってわかんないし!!
思わず固まってしまったのだが、
今!私は南日本電機の説明員なんだということを思い出して、
何とかしなくてはいけないと思うのだが何を言っているのかが分からない。
すると、視線が自然に柊君へと注がれて、
思わず彼の元へと走るのであった。
「ひ、柊君!」
「はい?」
何とか伝えようとした時に、なぜかその外国人も私と共に柊君の傍に来ていて、
英語で柊君へと話しかけると・・・
柊君も英語を話してる!!
その光景にあっけに取られてしまうのであった。
説明を英語でしているので、何を話しているのかがわからなかったのだが、
「江田?」
「え?」
急に呼ばれて後ろを振り返る。
見覚えのない女性であるが、向こうは名前を呼んだということは
少なくとも向こうは私のことを知っているのだ。
必死に相手のことを思い出そうとするのだが・・・
「あれ?覚えてない?大塚だけど。」
そう言いながら、自分の髪を両手でそれぞれ掴んで、
サイドアップしてツインテールにすると・・・
「あ!!!」
それを見て思い出したのだ!!
高校で一緒だった大塚だ!!
「どうやら思い出してくれたみたいね。」
にんまりと笑う大塚に、
「思い出したわ!元気にしてる?ここで何してるの?」
「私は元気よ。ここには、まあ・・・市場調査ってところだけど・・・。
その恰好・・・江田って・・・南日本電機の社員ってわけじゃないよね?」
「ええ・・・残念ながら、このイベントに雇われたコンパニオン。」
「いや~、それでも大手のコンパニオンになるだけどもすごいことだよ!!」
「そんなことないわよ。」
「ところで、南日本電機ってこんな商品を販売するの?」
「そう!ふふふ、説明してあげるわよ。」
私は大塚に南日本電機の製品を説明してく。
まあ、台本通りの説明なのだが、
1つ1つの説明に驚いて感嘆してくれるとやっぱり気分が良い物だ。
そして、いよいよメインの有機ELの照明を説明していた時のことである。
「・・・ちなみにこれって5万くらいって聞いたんだけど、いくらか分かる?」
「ええっと・・・。」
柊君には一応、価格についてはお客さんを見て判断するからと言われている。
立ち聞きして値段は知っているのだが、それも正式に教わったモノではないのだが・・・
期待に満ちた大塚の目と、ちょっとした自尊心がくすぐってしまい、
「こっちの照明器具が4万円ぐらいだよ。」
「ええ!?」
驚きの表情を浮かべる大塚。
「へぇ~、そんなに驚くような価格なの?
だって、これに似た商品で、1万円とかで売ってるよね?」
「あ、いや、何か近代的なやつだったから、値段を聞いてただ単に驚いただけ。
そうだよね、似たような商品でもっと安いのあるよね~。」
「あるある。私も・・・。」
そこまで話したところで、柊君はどうやら外国人への説明が終わったようで、
挨拶をして、そこで別れた外国人が、こちらに向かってくるのであった。
柊君はそのまま別の人に捕まり、説明を開始する。
するとその外国人の方が大塚の所にまで、何やら話始めるのであった。
・・・この2人って知り合い?・・・もしかして同じ会社の人なんだろうか?
そんなことを2人を見ながら思っていると、
どうやら会話が終わったようで、大塚がこっちを向いて、
「じゃあ、私達は他のところも見なくちゃいけないから。」
「うん、また暇があったら見に来てよ!私の頑張ってる姿を見てね!」
「分かったわ・・・。そういえば、江田ってコンパニオンの仕事してるのよね?」
「うん。」
「私達も今度展示会に出すつもりだから、
その時のコンパニオンをしたかったら言って、
あなた美人だから間違いなくお客の目を引くわよ。」
そう言いながら私に大塚は名刺を渡してきたのである。
「ありがとう!私も名刺を・・・。」
そう言って名刺を渡すのだが、
「まだまだ名刺渡しがなってないわよ。
これから一生懸命頑張るなら、こんな些細なことでもしっかりしないとダメよ。」
「きびしいなぁ~。」
私と大塚はそんなことを言い合いながら別れたのであった。
・・・大塚・・・すっごく素敵なキャリアウーマンになってたな・・・
テレビで観るようなサラリーマン、出来るという印象を持たせる姿をしていたのであった。
私も頑張らないとな・・・・
そう思いながら、貰った名刺をしまおうとした時である。
そう言えば大塚ってどこの会社に勤めているだろうかな?
そんな疑問が湧いてきて、名刺を見ると・・・
“エレクトロニクス社 日本支社”
へぇ~、外資ってやつなのかな?
日本支社って書いてあるってことは!?
最初はその程度の反応であったのだが・・・次の瞬間、私の中でゾクゾクと寒気が襲ってくる!!
それは毎日に南日本電機が行っている朝礼の時のことを思い出したからだ!
このブースを取り仕切るスタッフが、
「お客様だけではなくて、メディア関係やライバル会社も来ます。
そのため対応は自分だけで対応するのではなく、担当者へと必ず引き継いでください。
担当者が責任を持って、上司が対応する案件か、
自分が対応する案件かをしっかりと相談して決めてください。
それとメディア関係者は正式に取材を申し込んでくる善良なメディアもありますが、
残念ながら悪質なメディア関係者もいます。
お客様のフリをして情報を聞き出して、勝手に新聞に載せたり、
中には挑発して、怒らせて態度が悪いと書くメディアもあります。
更にはメディア関係者をチラつかせて、脅してくるメディアまであります。
こういう時は広報部の面々にすぐに知らせてください。
こちらですぐに対応させていただきますので。
あと気をつけて欲しいのが、ライバルメーカーの対応です。
特に有機EL関係で、国内大手電機メーカーはもちろんのこと、
ヨーロッパメーカーのエレクトロニクス社の対応は絶対に担当者へ回してください。
分かることがあっても、必ず対応は担当者にさせてください。」
その訓示を思い出したのだ!!
そう!あの訓示で挙げられていた“エレクトロニクス社”がまさに大塚の会社なのである!!
そして私は絶対に対応してはいけないと言われていたのにも関わらず、
“4万円台”
価格を教えてしまっているのだ・・・
みんなに教えている価格なのだから大したことじゃないかもしれない・・・
そんな言い訳をしながら、どうしようと肩を震わせるのであった・・・
次話は本日19時に更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




