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展示会への参加

「展示会に参加するんですか?」


「そ!だいたい照明器具の形も出来て来たことだしさ、

 そろそろお披露目を準備しなくちゃいけないだろう?

 ただ単にカタログだけに載せちゃうだけだと埋没してしまうだろうからね。」


「どこに出すつもりですか?」


「もう照明と言ったら、国内外の照明メーカーが出す、展示会だよ。」


「なるほど、それで何をしたらいいんですか?

 正直言って、展示会だと言われても、照明器具を用意するのと

 展示ブースを作る業者と打ち合わせをするくらいしか分からないんですけど。」


「それだけ分かってればいいんだよ!

 あとは俺と大川ちゃんでやるから、柊ちゃんと井口ちゃんは照明器具の準備と設営を頼むよ。」


「設営の業者ってこちらが勝手に?」


「いや、こっちの依頼いしてるイベント会社の下請けがいるから、

 そこに依頼しないとダメみたいだよ。

 まずはこっちでブースサイズとかデザインとか決めてから、そっちに話を振るから。」


「分かりました。」


そこまで話して村中部長は嬉しそうにイベント会社との打ち合わせへと向かった。



「私達は何をしてればいいんですかね?」


「まあ、さっきも言われたように、照明器具の準備だろう。

 それとイベントに合わせた器具をいくつか別に用意した方がいいかもしれないから、

 展示内容が決まったら、デザイン部と打ち合わせだな~。」


「了解です!!じゃあ、とりあえずは今まで通り、

 製品化に向けて手続きを進めていけばいいんですね!」


「そう。宜しくね井口さん。」


私達は来年4月の製品化に向けて社内手続きや

各協力メーカーへの年間生産計画の提出をして準備を着々と続けていた。




「で・・・何でこんなことになってるんですか?」


「よくわかんないけど・・・いいじゃない?」


「柊さん・・・その鼻の下を伸ばした顔をどうにかしてください!!」


「・・・テヘ!」


「テヘじゃない!!もう完全コレセクハラですからね!!」


私達は展示会に向けての一環として、展示ブースにいるコンパニオンを

決める打ち合わせに参加しているのだが・・・


私と柊さんは関東事業所に来た、モデルさん達を控室に案内する係を仰せつかった。

その後の審査員ももちろんするのだけど・・・


来る人と来る人、さすがはモデル!って感じの人達で、

顔は小さいは、スタイルはいいわで驚きっぱなしである!


まあ・・・横にいる柊さんは・・・締まりのない顔をしているけど・・・



「・・・冷たい目で見るのは止めてください。」


「ちょっとは締まりのある顔をしてもらえるのなら、こんな目はしないですけどね・・・。」


私の冷たい視線はどうやら理解しているようなのだが、

次から次へと来るモデルたちに、どうしても案内係とはいえ、

男子なら締まりのない顔になるか・・・



「あとは・・・1人だね。」


「そうですね・・・。どうしたんでしょうか?」


「時間もないし、俺が正門で待っているから、井口さんは会場まで彼女達を案内してあげてよ。」


「分かりました!」


柊さんは入り口に向かって行き、

私は時間も迫っているため集合場所に集まっていたモデルたちを引き連れて

オーディション会場まで案内するのであった。




「遅くなってすいません・・・。」


「いいえ、一応時間内ですし問題ないですよ。確認なのですが、名前をお願いします。」」


「江田と申します。今日は宜しくお願いします。」


「案内を務める柊といいます、こちらこそ宜しくお願いします。」


柊さんに連れられて、私は南日本電機の関東事業所内を歩く。



「こんなに大きいんですね?さすがは南日本電機さんです。」


「そうですか?ここは照明事業部の一部しかないんですよ。

 だから、そんなに大きい工場ではないんですけどね。」


「そうなんですか!!あ!そう言えば私の実家の近くに南日本電機の工場があるんですけど、

 あそこもここと同じ系列の工場なんですか?」


「ご実家はどちらですか?」


「九州です!」


「ああ!それだとここの照明事業部の半分ですね。」


「す、すごい大きいですね・・・。照明事業部ってそんなに大きいんですか・・・。」


「まあ、家の中の照明から、スタンドの投光器とかも作ってますから意外と大きいかもしれませんね。」


「へぇ~。」


そんな会話をしながらも私はものすごく緊張していた。

だって、こんな大きな会社のコンパニオンなんて、やったことないもん!!



所属会社から、


「相当難しいけど・・・南日本電機からコンパニオンのオーディションが来てるんだよ。」


そう言って、イベント会社からの連絡メールを見せてくれて、

私はすぐに手を挙げた!


だって私の実家の傍にある会社である!!


しかも、これが九州から東京に出て来てからの一回目のオーディションなのである!


そのタイミングで、こんな話が来るのなんって!!


これは運命だ!と思って、絶対に通ってみせる!と思っていたのだが、

いざ、関東事業所の最寄り駅について、歩みだすとその足取りが非常に重くなっていった・・・


一歩進むだけで、一呼吸しないとダメなほどだ。

駅から数百メートルで歩いて5分しかかからないと検索では出ていたのだが、

私が事業所にたどり着くまでたっぷり20分ほどかかってしまったのだ・・・


何とかたどり着いたけど・・・


今にも帰りたい気持ちでいっぱいになっていたのだが、



「今日のオーディションに参加される方ですか?」


私の姿を見るなり、声をかけてくれる人がいたのだ。



「は、はい。」


その言葉で更に緊張が高まったのだが、

その人の笑みを見ると少しだけだけど緊張がほぐれたのである。


頑張れるかもしれない・・・


そんな気持ちがちょっとずつ湧いてきたのであった。




「あちらの建物で審査が行われますから。」


その言葉で私はまた緊張してしまう。

喉がカラッカラになってしまい、お礼の言葉を言おうとするのだけど、声が出ない。


慌てて、お茶を飲んでと思ったのだが、

カバンの中にはお茶が入っておらず・・・思い出す!


駅のコンビニで買おうと思ってたんだ!!


どうしよう・・・


今日のオーディションの一部ではナレーションもあるのに・・・


こんな状態では台本何って読めないよ・・・


その時だった。



「あ、ちょっと待ってくださいね。」


そう言って案内係の子が私の傍から離れると、近くの建物に入ったかと思ったら、

また出てくるのだが、



「水です。緊張してるかもしれませんけど、

 ナレーションの試験もあるので少しは喉を潤してくださいね。」


そう言って、渡された水を受け取りながら何と私は・・・・


泣いたのである・・・


こんなに涙腺が弱いとは思わなかった・・・


どうして泣いているのかが全く分からないのである・・


その場でしゃがみこんで嗚咽までしてしまうのであった。

そんな私をずっと擦ってくれる案内係の子。


途中で、他の人が来たのだが、

何かを話してすぐにその子は立ち去って行ったのであった。


少しすると落ち着いてきたのか、

嗚咽も止まり、涙も止まった。



「大丈夫ですか?やめてもいいんですよ?」


その言葉に私は・・・



「やります・・・。」


そう答えたのであった。


会場まで案内されると、別の係の人から名前や所属、生年月日などの確認をされて、



「試験は最後になっているので、それまで準備をお願いしますね。」


優しく言葉をかけてくれ、更には鏡を用意してくれる女性スタッフに感謝する。

急いで泣いて崩れた顔を整えていくのであった・・・・


次話は19時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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