横浜の新居
転居の場合には会社が契約している不動産屋が案内をしてくれる規則になっており、
今回も当然不動産屋さんが案内してくれる。
私達が横浜駅に着くと、すっと1人の男の人が近づいてきて、
「はじめまして、今回担当させていただきます不動産屋です。」
そういって、私達に名刺を渡してくれる。
・・・私は貰う必要はないのだけど・・・
もしかして奥さんか何かと勘違いされたりしてないよね?
そんなことを考えていると、
「どうして僕ってわかったんですか?」
「それは御社から資料を渡されておりまして。」
そういって、うちの会社から送られてきた資料を見せてくれたのだが、
「・・・顔写真入りですか・・・。」
「はい。」
「個人情報駄々洩れだね。」
そう言って苦笑する柊さんであった。
「わざわざお出迎えありがとうございます。今日は宜しくお願いします。」
「こちらこそ宜しくお願いします。
それでは早速あちらに車を止めておりますので、
乗っていただき、本日ご紹介する4件をご説明させていただきます。」
そういって私達を車まで案内してくれて、
後部座席に座るように促してくれた。
そして、不動産屋さんが運転して案内をしてくれるのであった。
「金子さん、すでに絞りこみはされてるんですか?」
「うん、4つまで絞ってるよ。」
横浜駅までくる間に敬語で話すのを止めてもらった。
当然なのだが・・・私が年下で、しかも部下なのだから・・・
「見せてもらっていいですか?」
「うん。」
柊さんから渡された4つの物件なのだが・・・
うらやましすぎる・・・
私が住んでるのは都会では格安の家賃8000円ではあるが、
かなりぼろい寮である。
それに対して、今回柊さんが見る物件は・・・
ワンルームで10万ぐらいの部屋となっていた・・・
都会ってつくづく高いんだな~って思う。
ただ、柊さんと私とでは歳もそんなに離れていないし、
同じ院卒であるため給料なんてそんなに変わらないはずだ。
それなのに10万円を家賃に出す何って・・・
「家賃10万円ってめっちゃ高くないですか?」
「俺みたいに会社都合での転勤の場合は、補助が出るんだよ。」
「え!?」
「単身の場合は10万円が上限で、そのうち2万円が自己負担なんだよ。」
「ええ!?そんなうらやましいことになってるんですか!?」
「そうだよ。じゃないとこんな高い所には住めないよ。」
「ですよね・・・。
私と柊さんってそんなに年も変わらないから、
すごい大変だろうなって思ってしまって・・・。」
「お互いの給料なんてバレバレだよね。
まあ、それと単身赴任手当がつくからそれで生活できればな~って思ってるよ。」
「どのくらい付くんですか?」
「月で8万。」
「8万も!?そう言えば奥さんは来ないんですか?」
「奥さんは幼稚園の先生だから、そんな簡単には来れないよ。
だから向こうのマンションは解約して、奥さんは実家に帰ることにしたんだ。」
「実家って・・・今って私の実家のある市に住んでますよね?」
「そうだよ。だから隣の市から通勤することになって、
奥さんはちょっと大変になったかな~。」
「そうでしょうね・・・。」
「けど、交通費はちゃんと出るみたいだから、いいって言ってくれたんだよ。」
「なるほど~!幼稚園の先生って人手不足って言いますし、
なかなか放してくれないんでしょうね。」
「そうそう。それにそこって親御さんが働いている系列の幼稚園らしくて、
なかなか辞めさせてもらえないらしいよ。」
「・・・それ・・・余計に辞めにくいでしょう・・・。」
そんな話をしているとすぐに目的の場所について、物件を見て回るのだが・・・
・・・
結構いい物件ばっかりだ。
どうしても築年数は経ってしまっているが、
ちゃんとリフォームされており、どの部屋もキレイである。
「・・・マンション玄関にオートロック・・・うらやましい・・・。」
ボソッと漏れる私の本音。
追い炊きできるし・・・
室内洗濯機置き場もあるし・・・
エアコン完備・・・
広さは1LDK・・・
「本音がボロボロと漏れてるよ。」
「うらやましすぎるんですよ~。
しかも南むきだし、角部屋だし!何気に窓から海が見えますもん!!」
「だね~。結構この物件いいかも。」
結局他にも見た結果、この物件に決めてすぐに手配をしていたのであた。
「ここなら、みんなで横浜で飲んでも、泊まって帰れますね♪」
「・・・何恐ろしいこと言ってんの?」
「ええ!?やっぱり先輩に甘えないと!!それに独身者じゃないですか~!!」
「く・・・。」
イヤそうな顔をするが、絶対に私はここに遊びに来ようと心に決めるのであった!
「そう言えば、家具・家電ってどうするんですか?」
「ああ、それは会社が用意している単身赴任用のパックで頼もうかと思ってるよ。」
「そんなのあるんですか?」
「あるんだよ。
テレビと冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機とかのセットで月1000円である。」
「ええ!?それってめっちゃお得じゃないですか!?」
「まあ、誰かが使った中古ってのがネックだけどね。
ただ、もちろん専用の業者が洗浄済みって言ってたから
大丈夫だと思うけど。」
「私もそんなのがあるんなら、それにすればよかったです・・・。」
「ああ、これって、新入社員には適応されないんだよ。
一応は単身赴任用として用意されてる奴だからさ。」
「それズルいじゃないですか!!
だって、新入社員の方がお金がないのに!!」
「あはははは、そうだよね~。
けど、うちの会社の家電になってしまうから、好きな物は選べないよ?」
「別に安いのならうちの会社の家電でも構わないです!」
「そうなの?女子だとレンジはここ!とか、掃除機はここのがいい!とか
こだわりがありそうだけどね。」
「そりゃ~ありますけど、それよりも値段ですよ!
ちなみに壊れた場合はどうするんですか?」
「交換してくれるよ。」
「・・・タダで?」
「タダで・・・。」
「本当にずるいじゃないですか!!!
絶対に私、ご馳走してもらいますからね!!」
「おかしくない?何でたかられるんだよ!?」
「だって、単身赴任手当も貰って、更には普通に給料貰ってるでしょう?」
「そうだよ。」
「奥さんは実家で。」
「そうだね。」
「お金がたまる一方でしょう!!
経済を回さないとダメですよ!
だから、私がお金を回しますって!」
「別にいいじゃん!お金はお金を持ってるところがまわせばさ!
小市民はコツコツとお金を貯めるんですー!」
「全然小市民じゃないでしょう!柊さんって!」
何でこんなに単身赴任者が優遇されてるんだ!!
うらやましすぎる!!
次話は20時更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。