九州事業所 野原の決意
会議の一部始終をビデオ会議で見ていた・・・
柊を疑っていた俺達は本当に情けない・・・
柊は必死に諏訪部長や澤藤さんと最後まで戦っていたのだ。
だけど、その壁を最後まで崩せることはなかった・・・
この瞬間、俺達の存在意義がなくなったのである。
その後は柊から電話があり、駄目だった旨が伝えられた。
「すいません野原さん、高橋さん・・・。
ですが、必ず有機ELの自社製品は必要となります。
だから、このまま研究開発を続けていきましょう!
予算は今期分は新事業推進本部から出ますし、来期以降は必ず僕の方で探しますので。」
「ああ!分かったよ!今、俺達が出来ることを必死にやらせてもらうよ。」
そう言って、テレビ会議の通信を切った。
九州事業所の有機ELチームがいる会議室は完全にお通夜状態になっていた。
どれだけ柊が次があると言っても、現実厳しいのは分かっている。
正直、こんな状態からどうやったら上昇出来るのかが俺には分からない・・・
柊だったら、何とかするんだろうけどな・・・
会議が終わってから数日が経過したのだが、まだまだ沈んだままの有機ELチーム。
どうにかしないとっとは思うのだが、その手段がわからない・・・
そんな時だった、俺宛に電話がかかってきたのだ。
「野原さん!企画部の大川課長からお電話です。」
「大川課長?」
一瞬誰だったのか思い出せないままいたのだが、
そう言えば、以前に柊に紹介されたことを思いだして、
机の名から名刺を取り出しながら、電話をとる。
「お電話代わりました野原です。」
「ご無沙汰しております。第三企画部の大川と申します。」
「ご無沙汰しております。」
「覚えておられますか?」
「ええ、以前にこちらに来て、日本建設との打ち合わせに参加していただきましたよね?」
俺は名刺を見ながら、思い出していく。
名刺には会った日付とともに、何で会ったのかの理由を書いているため
その名刺を見れば思い出せるようにしていた。
“日本建設”
そう書かれていて、思い出したのだ!
確かにいたな!
面白い方で、本当に課長さんなのか?と疑うほどの人だった。
「そうですそうです!いや~、覚えて貰っていてよかったですよ~。」
「それでどうされたんですか?こっちには柊は、今はいないのですが・・・。」
「ああ、柊君は別件で動いていて、九州事業所にいないのは分かってますよ。
今日は野原さんに確認と依頼をしたくて、お電話させていただいたんです。」
「僕にですか?」
「ええ。以前に柊君からお話をいただいたことがあるのですが、
今まで作ってもらっていたのは白色でしたが、
赤とか青、緑の単色の有機ELも作れると聞いていたのですが?」
「ええ、作れますよ。」
「それってすぐに商品化できますか?」
「え?・・・いや~、先日開発した封止技術を使った有機ELを作り直して、
一部の試験を再度確認しなければなりません。
その他のモノについては完了してますので、それがOKであれば商品化できます。」
「なるほどなるほど・・・。
じゃあ、その封止技術を使った有機ELを作製して、
評価していただくことって出来ませんかね?」
「それはかまいませんけど・・・。
どういう理由かお伺いしてもよろしいですか?
なにぶん作製にも評価にも時間がかかってしまうため
即断即決で安請け合いがなかなか難しいものですから。」
「まだ・・・漏らすわけにはいけませんので、詳しいお話はできませんが、
野原さん達にとっては間違いなくプラスになる話です。」
ドクンと心臓が跳ねる・・・
俺達にとってプラスになる話・・・
「・・・柊や村中部長には?」
「いえ、これは完全に私独自で動いてます。」
「・・・そうですか・・・。」
どうする!このまま大川課長を信じてもいいのか!?
俺の頭の中でどうするかの判断を必死に考えるのだが、
「・・・柊君の援護をしたいんですよ。」
小さな声だけど、俺の耳にはハッキリと聞こえてきた。
「え?」
「まあ、あの会議で必死になっていた彼の姿にちょっと心を動かされてね。
だから、少しでも自分の出来ることを探しているところですよ。」
この言葉に俺の心は決まる!!
俺だって柊の役に立ちたいんだ!!
俺は柊のメンター・・・所謂、教育係をしていた。
だけど、柊にメンターらしいことというか、先輩らしいことは何一つ出来ていない・・・
まあ、あいつがしっかり者だったのもあるけど・・・
そんなことを思って思わず苦笑してしまうが、
いかん!そんなことを考えている場合じゃない!!
「分かりました。それじゃあ、こっちでは作製・評価を今日から進めます。」
「今日からですか!?いいんですか!?」
「ええ、だって、これが柊にとってプラスなんでしょう?」
「もちろん!!」
大川課長のハッキリとした口調に俺の決心は揺るぐことない大樹へと変わる。
柊のためにも俺もあいつを助けなければ!!
「なら、問題ないですよ。他に何かあるのなら、遠慮なく言ってください。」
「ありがとうございます!では、一点だけ。随時データを送付願えますか?」
「ええ、それくらいお安い御用ですよ。」
「ありがとうございます。」
俺と大川課長はその後は談笑を終えて電話を切るのだが、
その切る直前に、
「次の会議・・・参加してくださいね。」
そう言われるのであった・・・
次話は本日19時に更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




