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男・大川

「柊は頑張ってるんですよ・・・。」


「そうでしょうね・・・・。」


「ええ、体を張って、必死に頑張ってくれます!

 この技術を完成させるのにどれほどの睡眠を削って、つぎ込んできたか。

 

 それだけじゃありません!!

 そんな彼に僕は無茶なお願いをしたんですよ。

 いや、これは本当に申し訳ないとは思っていたのですが、

 彼しか出来る人がいなくてお願いすることになったのです・・・


 それは飲食店の看板を設計することだったんですが、

 彼に依頼をかけた次の日には協力メーカーから

 見積もりを出してもらってたんですよ。

 普通は数日、もしくは一週間以上かかるのが今までの経験上だったのですが、

 その次の日にその設計図と見積もりがいると考えて、

 わざわざ、協力メーカーに図面付きで送ってくれたんです。

 そりゃ~、早く回答ができだろうなっと思って納得しながらも、

 どうしてここまでやってくれるんだろうって思いましたよ。


 だけど、彼にとっては僕が困るだろうと思って必死でやってくれてたんですよね。

 図面を起こすのはご存知のように簡単ではないですよ。

 それを一日・・・・いや、半日ほどで起こしてくれました、

 きっと彼はこの設計図だけに集中したことでしょう。

 アレだけ忙しい中でも僕のことを優先してやってくれたんです。

 いい奴ですよ、ホントいい奴過ぎて心配になってしまうくらいです。


 だから、次は僕の番です!!

 彼がやりたいと思っていることを今度はやらせてあげるのが僕の番だと思ってます。

 会社内でどうこうしても、変わらないことは分かってます。

 だったら、僕が出来ることは・・・。」


そう言いながら、俺はソファーから立ち上がって、

そのまま床へと座をついていき、そして・・・土下座をする。



「お願いがあります。


 どうか!


 どうか!!


 自社製の!


 南日本電機が作った有機ELを使ってもらえないでしょうか!!」


俺は額をこすりつけながらお願いをするのであった。

会長がOKというまで絶対に立ち上がることはないと決めて!!



「頭を上げてください。」


「いえ!できません!!

 このお願いを聞いていただけるまではあげることはできません!!

 どうか!どうか!お願いします!!」


「分かりました。」


するとすぐに了承する声が聞こえて来たのであった。

いきなりの了承の声であったため、思わず顔を上げてしまう。



「え?」


「ですから、仕様には御社製の有機ELを用いた照明器具と記載しましょう。」


「・・・い、いいんですか?」


「ええ、もちろん。元々そのつもりだったんですよ。

 土下座なんかしなくても、あなたが本心で話してくれれば、

 その仕様にしようと思ってましたから。」


「そ、そうなんですか・・・。」


俺はいっきに自分の体が脱力していくのを感じて、

そのまま地面にへたりこんでしまうのであった。



「それで柊さんのことだけを思って、こんな行動をしたんですか?」


「ええ・・・。ただ、柊の言葉にもちょっと感動したという思いもあるんですよ。」


「言葉・・・ですか?」


「はい、柊は“メイドインジャパン”っていう言葉を使ったんです。」


「メイドインジャパンですか?」


「ええ、これだけグローバル化が進む中で、

 実際に弊社の照明器具も海外で作っている製品が多数存在します。

 だから、正直言ってメイドインジャパンってのは、

 ほとんど化石のようなモノになってきているんですけど、

 やはり日本人なんでしょうね・・・。

 メイドインジャパンって言いたいんですよ、みんなに。」


「・・・その気持ち、わかりますよ。」


「ホント、甘っちょろい考えなのは分かるんですけどね。

 出来るのなら、やってみたいし、みんなに伝えたいんですよ。

 うちの有機ELを用いた照明器具は“メイドインジャパン”だってね。」


「それで年甲斐もなく張り切ったんですか?」


「ええ、もう、恥ずかしい。

 だけど、49歳になってこんなに興奮したのは初めてでしたからね。

 20代の柊の言葉に奮起させられるとは思ってもみなかったですよ。」


「・・・いい、後輩をお持ちで。」


「ありがとうございます。

 ですが、厳密には違うんですよ。

 僕は北海道の4流、いや5流って言っていい私立大を出て、

 地元の小さな電機会社の営業で入ったんです。

 

 そして、15年ほど過ごした時に地元の電機会社が

 南日本電機に買収されましてね。

 私は南日本電機の会社員になったんですよ。

 だから、柊君みたいに直接南日本電機に入社したわけではないんですし、

 今でも北海道の支店では直接採用をしていて、

 そっちは後輩っていうイメージはあるんですけどね。

 本社入社した子達を後輩だって言うのは、憚られるんですよね~。」


「ですが、きっと柊君からは素晴らしい上司、先輩だと思われてますよ。」


「そう思われるとホント心苦しいですね。

 課長なんてやらせてもらってますが、本当に奇跡だと思ってますよ。

 普通買収された場合には役職者になる人なんて皆無ですからね。

 僕の場合は本当に運が良かった。

 そのせいもあって、今だに本社では色々言われてますけど、

 柊やその上司に当たる村中なんかは全然気にもせずに接してくれるんですよ。

 バックグラウンドを知っても全然変わらずに接してくれる本当に気持ちがいい奴ですよ。」


「うらやましい限りです・・・。

 どうです?うちの会社の部長のポストを空けますから転職しませんか?」


「いえいえ、本当に不相応ですから。

 部長何って、やった日にはあまりのプレッシャーに寝れない日々になりそうですよ。」


その後はすぐに仕様の変更をした書類を会長が指示して作らせて、



「これでお願いします。」


俺に手渡ししてくれたのであった。



「はい、近日中に押印してお届けできるようにさせていただきますので。」


こうして日本建設本社から立ち去るのであった。

だが、俺はまだまだその緊張を崩すすことはない・・・

なぜなら・・・


「次は・・・・ハンバーグチェーン店の会長か・・・。」


次話は8月26日7時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。


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