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諏訪部長の暴言

私の顔を見るなり、



「大川さん、これ頼まれたものです。っていうか、小間使いさせないでくださいよ。」


笑いながら柊君が、私に九州のお土産を手渡ししてくれる。



「いや~、うちの奥さんと子供から頼まれちゃったからさ。

 ちょうど今週末に帰るから、いいタイミングと思ってね。」


「はははは、まあ、それくらいいいんですけどね。

 先日の資料はあれでよかったですか?」


「バッチリ!いや~、あまりに対応が早かったからビックリしちゃったよ。」


「たぶん、会議で使う資料だから、すぐにいるだろうって思って。

 急いで準備したんですよ。協力メーカーにもちょっと無茶いいました。」


苦笑している柊君だが、恩を着せるよな感じではなくて、

たぶん協力メーカーへのねぎらいの言葉を求めていることが分かる。



「ああ、協力メーカーにもちゃんとお礼を言っておくよ。」


「ええ、お願いしますね。」


そう言って、自分の定位置へと向かう、

柊君は会議室の中心部へ、私はその対面に座るのが定位置であった。


その後は続々と人が集まってくる。

ただ、一点今までと違うことがある・・・



「珍しいねテレビ会議って。」


村中部長の指摘通り、テレビ会議をつなぐのは、今回が初めてである。

そしてそのつないだ先は、



「諏訪部長、お久しぶり!」


「ええ、元気そうですね村中部長。」


今回自社で作った場合に、その製造場所となる九州事業所の技術部長の参加である。

このための出張を避けるためテレビ会議での参加であった。



「じゃあ、始めようか~。」


いつも通りの村中部長の号令の下で、会議が始まり、

最初は柊君からの報告である・・・


その報告はみんなを驚かせる内容であった。


今まで課題としていたものを完全にクリアしてきたのだ!!


・・・そりゃ~、みんな驚くだろうな・・・


他社の性能に関しては、うちの結果に比べて散々たる結果にしか見えないほどだ。


更には単価についても数週間前に見た結果と比べて、

更に絞ってきていたのであった。


うん、よく頑張ってる。これなら・・・・


納得がいく結果である。

これなら、他社と比べて、自社で作る方がメリットが大きい。

量産化後のキャパだって、確かに数段劣るのが実情だが、それでも数年はもつ!


これなら、その間に自社で設備導入するなり、

他社で自社製品を作ってもらうOEMするなりの時間が十分にあるだろう。


周りを見ても納得している表情である・・・


特に課題になりそうであった品質保証部の武田さんですら、

特に異論がありそうではなくて、頷いて話を聞いているのだから。



「課題を解決しているのは分かりました・・・

 ですが、他社でも選別を依頼すれば問題ないのではないですか?」


ここで柊君の話に噛みついてきたのは澤藤君だった。


まあ、前回までの話の流れからすれば

噛みついてくるのは間違いないだろうと思っていたが・・・



「ええ、可能です。

 他社にその問い合わせをしたところ、大体として

 25%ほどの価格アップが見込まれるとの回答です。」


そう言って、資料を見せる柊君。


さすが!!


すでに想定していたのか!!


私が感心する中で。



「何で価格アップに?ただ、選別するだけでしょう?」


「選別するにあたって、使用できないものが出てきます。

 その分と、選別代を乗せてくるってことです。」


「それは向こうの問題であって、うちの問題じゃないでしょう?

 なのにこちらの単価がアップする何っておかしいでしょう?」


・・・それを言われると営業としてはたまったものじゃないな。

ここで話は柊君の話が一般的であり、澤藤君の言うことは非常識な発言だ。

俺がそのことを言おうとしたところで、



「交渉はちゃんとしたのか?」


テレビ越しに諏訪部長が柊君に聞いてきたのであった。



「先ほどの澤藤さんの話については、

 価格アップについては理解できないとは言っております。

 それでもこれが商売では一般的だというのが向こうの意見です。」


「それはお前の交渉技術が低いからじゃないのか?」


「え?」


「お前の交渉が下手だから、そんなことになってんじゅねえのか?

 ハッキリ言って俺から見て、下手以外の何事でもないわ。」


その言葉に沈黙化してしまう会議室。

というか、この人は部長なのに何もわかっていないのか?

そう思いたくなる発言だ。それを怒気を強めて言うことじゃない。



「俺は海外メーカー、特にヨーロッパ製の有機ELでいいと思う。」


「え?ですが・・・。」


その発言に驚き柊君が反論しようとすると、



「ヨーロッパメーカーから価格アップの件は何とかしてアップさせるな。」


「何とかしてですか?ですが、すでに交渉はしてます。」


「そんな口答えはいらん!!いいからしろ!!いいか、これは部長命令だ!!」


この言葉にたまらず村中部長が、



「柊君はうちの事業部の部下です。

 諏訪部長のしたにいるわけではないんですよ。

 ちなみに私もヨーロッパメーカーとの話し合いには参加しましたけど、

 基本スタンスは選別すれば価格アップは当然というスタンスです。

 

 これは半導体事業部にいた時も同じで、

 選別をすればその分価格に反映されるのは当然のことですよ。」


「ち・・・、そもそも自社でリスクを背負う必要はないだろう!

 それなら他社の製品を採用した方が、問題が起きた時にはそちらの責任となり、

 賠償問題でも我々の負担は無くなるんだ!!

 それなら当然他社の製品を選ぶべきだろうに!!

 そちらに品質保証部の武田さんいるでしょう?違いますか?」


その言葉に、武田さんが反応して、



「当然、自社の製品を使用するよりも他社の製品を使う方が、

 責任問題として対応を向こうに投げれる分だけいいですよ。」


その言葉を聞いた諏訪部長が嬉しそうにしていた。

そして、柊君や村中部長の傍にいた澤藤君んも同じように嬉しそうにしている。



「でしょう!だったら・・・。」


諏訪部長が言いかけたところで、



「ですが、それは同等のスペックを持っていた場合です。

 今回のように自社で作った方が不具合が発生しないと分かっている場合は

 自社の製品を勧めるのは当然ですよ。」


その言葉に愕然とする諏訪部長

求めていた言葉とは違う回答が来たからである。

ただし、



「ただし、一発目のこの照明器具に関しては、リスクの高さを考えて、

 他社品での採用を品質保証部としては推薦します。

 その代わりに他社の性能が自社並みになることが大前提ですがね。」


「柊、何とかしろ!海外メーカーの件を何とかしろ。」


「それは自社と並列して進めろということですか?」


「ばかか!!自社何ってどうでもいいんだ!

 海外、ヨーロッパメーカーの仕様を照明器具に使用できる仕様へと改善しろって言ってるんだ!!」


「ですが、自社で出来るんですよ!!

 自社を第一にして、第二候補としてヨーロッパのメーカーをテコ入れするのなら分かります。

 万が一何かがあった場合には対応できるようにするのは必要なことですから。」


「お前に言っておいてやる!!

 自社製品は絶対にない!!

 製品化するにあたって技術部長の承認が必要だが・・・


 俺は自社で作るなら絶対に承認はしないからな!!」


・・・ここまで腐ってるか、九州事業所の技術部長は!!

体の中に衝撃が走る発言だ。


次話は8時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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