秘策の案!
九州事業所の有機EL開発メンバーは今日の業務を終えて、
会議室に集まっていた。
「この価格って、この海外メーカー、利益出るのかよ?
だって、製造は海外でそこから輸送費が乗るんだろ?
その価格がのってこの価格って・・・あり得ないだろう・・・・。」
高橋さんの言葉に、野原さんが付け加えて、
「それにうちの設備よりも大きな設備を入れておいて、
設備費の上乗せまで入れて価格を俺達と同程度にまで下げてきているって。
しかも商社を通しての価格なんだから、本来だったらもっと安いって事だろう・・・。」
「おっしゃる通りですね。
だけど、実際にこの価格たちで出してきたって事は、
我々は自社で作るメリットを更に出さないといけないんですよ。」
柊さんの言葉に会室内に沈黙が走る。
ただ、その沈黙を破ったのも柊さんの言葉であった。
「こうして集まってもらったのは、量産工程の見直しと材料の見直し、
後は材料価格の交渉も含めてみんなで確認したかったから集まってもらったんです。
それで、この量産工程ですが・・・。」
こうして私達は量産工程の見直しを一から初めていき、
結局夜中まで見直しを進めていったのであった。
「封止がうまくいかないな・・・。」
誰もが言葉を発しない中で会議が始まった。
すでに二週間が経過するのだが、今だに完璧なものは出来ていない。
当然条件の見直しは済ませており、以前に比べてはるかに安定している・・・。
そう、“はるか”にだ!
それを今だにゼロには出来ていないのだ・・・
それが今は問題なのだ・・・
他社の製品の中で、水分の侵入を許しているものも存在する。
だからと言って、自社製品で同じように侵入を許してもいいとはならない。
「他社の製品については、母体数が少ないとはいえ、
かなり高い確率で出てきてる。
これを考えるとうちの製品は優れた性能は出しているだろう?」
野原さんの言葉に柊さんはうなづく。
そのうなづきに野原さんも胸をなでおろすのだが・・・
「それでも・・・ゼロではないんですよ。」
「だから!他社はもっとひどいんだって!」
「他社と比べて優れている・・・それは分かってるんです。
だけど、それでもゼロには抑えてないんですよ。」
「だけど!!そこまでする必要があるのかよ!!」
野原さんの言葉はきっとここにいる全員の言葉だろう。
だって、他社の製品よりも優れているのだ。
なのに・・・
何が不満なんだ・・・
それが今のみんなの考えだ。
私もそう考えていた。
「ありますよ。当然ありますよ。」
そう断言する柊さん。そしてみんなの顔を見ながら、
「もし現状の発生割合で製品化したのなら、
必ず一般消費者の手元にある製品で不具合のあるものが発生するだろう。
他社よりも水分の侵入は優れているんです。
そんな言い訳が通用すると思いますか?
その人はうちの商品を好んで選んでくれたんです。
その人の信頼を裏切ることになるんですよ。
それが分かっていて商品化する?
僕がその勝った人なら、許すはずがありませんよ。
僕は南日本電機を嫌いになり、今後絶対に買うことはないですよ。」
「だけど、数千分の一、数万分の一かもしれない可能性だぜ?」
「だから?
そもそも不具合が発生するのが分かっていて、
製品化する何って技術者としてのプライドが許せないです!
そして・・・
人の信頼を裏切る何ってもっと許せないですよ!!」
柊さんの声が会議室に響く。
その言葉はすくなくとも私には響いた・・・
グッと胸が熱くなっていくのを感じる。
人の信頼を裏切る何って絶対に出来ない!
それも自分達を信じている人達を!!
だけど・・・
だけど、その思いは全員には伝わることはなかったのです。
「・・・柊・・・お前さ・・・俺達を解散させたいんだろう?」
「・・・え?」
「じゃなきゃこんな偏屈なことを言うかよ!!」
「こんな理不尽なこと言ってるんじゃねえ!!」
「何でこんなに頑張ってるのに!
お前の嫌がらせのせいで俺達が解散させられなきゃいけないんだよ!!」
「どうせ、お前は関東事業所にいるからな!
しかも本社との兼務してるんだから、次に行くところはあるだろうけどよ!
俺達は次に行くところはないんだ!」
「そうだ・・・お前は俺達の気持ち何ってこれっぽっちも理解してないんだろう!!」
堰を切ったように柊さんへの罵詈雑言が会議室に響く。
何とかみんなを納得させようと言葉をかけるのだけど、
柊さんの言葉を聞きいられることなんてない。
「もう知らない!勝手にしろ!!」
そう言って、会議室から立ち去って行く野原さん。
それに続いてみんなが会議室から出ていきならが、
「もう俺達は手伝わない!お前のわがままには付き合いきれない!」
「最低だよ柊。」
最後まで吐き捨てるような言葉をかけていく面々・・・
「・・・柊さん・・・。」
「はぁ~・・・思ったよりも応えるな。」
そう言って苦笑する柊さん。
だけど・・・
「井口さんは出ていかないの?」
「私は・・・知ってますから。
柊さんが本気で自社で有機ELを作製したいと思っていることを。
そしてそのために必要なんだということを・・・。」
「・・・このままだと間違いなく、自社での製造は無くなってしまう・・・。
ハッキリ言って、完全でないものを自社で作る何って俺が上司なら絶対に許可しないよ。
だから、他社の製造したものを。
しかも購入先で信頼性試験を評価クリアしたモノの選別をして、出荷を依頼するね。
購入者側の立場としてそれが出来るからね・・・。
ハッキリって、他社で購入する方がメリットもあるし、
当然の選択肢だな・・・。」
大きなため息をつきながら、会議室に写し出されている資料をスライドさせながら観ていく。
「・・・十分だと思うよ・・・。」
そう呟きながら柊さんは見ていくのであった。
その後、事務所に戻ると誰も柊さんを見ることはない。
ただ無言で事務所で働く面々。
終業のチャイムが鳴るとみんなが一斉に事務所から出ていくのであった・・・。
その後、残っているのは私と柊さんだけであり、
「ご飯でも食べに行こうか?」
珍しく柊さんの方から私を誘ってくれたのであった。
「ここに食堂があったって、知らなかったですよ。」
「だろ?この辺りって、会社の入り口からは逆サイドになるから
なかなかこないんだよね。」
「ただ、まあ・・・微妙な店内ですね・・・。」
いろんなものがごちゃごちゃとしていて、
落ち着きのない店内・・・
しかも結構、音量が大きな音楽をかけているのだ。
「よくこんな大音量の音楽が外に漏れないですね?」
「ああ、ここは二重扉になってただろう?
わざわざ防音のために二重扉にしたんだよ。」
「はぁ~なるほど。
だから、面の入り口は食堂って感じの扉なのに、
内側の扉は重い扉になっていたんですね。」
「そうそう・・・・。」
そこまで言って柊さんの顔を突きが変わる。
それは今までにないほどの真剣な顔をつきになったのだ。
「?どうしたんですか?」
「シール材の安定化・・・出来るかもしれない。」
「え?」
「悪い!俺は戻るは!これで好きなの食べてこい!」
そう言って、柊さんは私に一万円札を渡して、会社へと戻っていったのであった。
次話は20時に更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




