井口家の団欒
「どうなの?仕事忙しいの?全然こっちに連絡を入れてこないけど・・・。」
お母さんが心配そうに尋ねてくる。
確かに全然連絡をここのところ出来ていなかった。
今晩も急遽であるが、実家で過ごすことになった。
九州事業所での打ち合わせが思った以上に長引いてしまったため、
明日の一便で関東事業所に戻ることにしたのだ。
「今日は実家に帰ってもいいよ。」
「ええ!?いいんですか!?」
「実家に戻るのが嫌だったら、別にホテル泊まってもいいけど?」
「いえ!実家に帰らせていただきます。
だって、こんなことがない限りにこの時期に
実家に帰れることなんてないですから!
ちなみに柊さんはホテルですか?それとも実家に?
もしくは・・・奥さんの実家に行かれるんですか?」
「・・・俺も実家に帰るよ。
なんか悪意のある聞き方をしてくるね・・・。」
「そんなことないですよー!
決して、奥さんの実家には帰りたくないんだろうな~って思ってもいないですから!」
「口に出るってことは、思ってるんだろう?」
ジト目で見てくる柊さんの視線を交わして、
「やっぱりご自分の実家ですよねー。
ちなみに・・・村中部長は?」
「すでに夜の町に消えた・・・。」
「さようで・・・。」
そう言えば、しきりに柊さんに、
「九州で泊まろうよ~。」
っと、駄々をこねていたのを思い出す・・・
村中部長は、今頃九州の夜の街を堪能しに行ったのだろう・・・
そんなやり取りを思い出しながら、
「仕事はやっぱり大変だけど、結構やりがいはあるんだよ。」
それが私の素直な感想である。
確かに研究から違う部署へと変わったことで、
研究をするという道からはズレたのだが、それでも違う楽しみが今は多い。
「部長さんや課長さんはイイ人なの?」
「え!?」
お母さんの言葉に考える・・・
遊び人の村中部長・・・
仕事はできるのだけど、人としては全然尊敬は出来ないんだけど・・・
そして、柊参事・・・
年齢もそんなに変わらないのにしっかりしていて、
私達をしっかりと導いてくれる頼りになる存在だ。
だけど・・・
すっごく・・・
意地が悪い!!!
うぅ!!!思い出しただけで腹が立つ!!
飛行機の件!!絶対にリベンジしてやるんだから!!
「ど、どうしたの?そんなに嫌な人なの?」
気がつけば心配そうにお母さんが私を見つめてきていた。
私はすぐに正気にもどって、
「そんなことないよ!部長も課長もいい人だよ。」
「そう・・・良かったわね。やっぱり上に立つ人によって、
仕事って辛かったり、楽しかったりするからね・・・。
お仕事の内容が変わったって言っていたからお母さん心配で・・・。」
「その点は大丈夫!毎日楽しく、充実してやってるから!」
「そう。それならよかったわ。
さあさぁ、先に食べてよう!
もうすぐお父さんも返ってくるから!」
こうして私は久しぶりの実家を堪能したのであった。
その後、お父さんも帰宅して、お父さんと美味しく晩酌をしたのだが、
嬉しそうなお父さんを見てこっちの心が満たされる感じになり、
明日からの活力を生んでくれる!!
明日の朝には関東事業所に帰らないといけないけど、
やる気はマックスだ!!
頑張るぞー!!
次の日の朝、空港での待ち合わせをしていた。
私が空港に到着した頃には、柊さんはすでに到着していたのだが・・・
「・・・じゃあ、先に戻っておきますよ。
はい、野々宮さんにすでにメールを先ほど入れておきましたので、
午前中の仕事の件は何とかなると思います。」
そう言いながら電話を切る柊さん。
そして、ため息をつく・・・
「・・・寝坊ですか?」
「みたいだね・・・。だから、俺達は先に帰っていいみたいだよ。」
「はぁ~・・・。」
お母さん・・・
若干、心配になってきました・・・尊敬やっぱりできないわ・・・
飲み過ぎて寝坊って・・・
村中部長・・・
次話は本日19時に更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




