第三企画部!
「確かに田口さんが言った通りでしたね!!」
「だろう~、あいつら自分達が会社の中心だとおもってるんだよ。
“俺達がいなくなったら会社は終わる”
そう本気で言ってるらしいからな」
「・・・確かにそういう面もありますけど・・・。」
私はため息をつきながら、田口さんの意見が正しかったことを実感していた。
たしかに企画部が企画しなければ、私達技術者は製品を起こすことは出来ないけど・・・
それでもあの態度はいかがなものかと思うんだけど!!
さっきの対応を思い出して、憤りを感じていると
私と田口さんの会話に柊さんが加わってきて、
「その中心さん達が稼いでるお金は真っ赤な赤字なんだけどね~。」
「え?」
「あれ?井口さんは知らない?」
「何をです?」
「田口、こっちでは方針説明会ってないの?」
「あるけど、5月だからね・・・。
まだ2年目の子は知らないんじゃない?」
「・・・5月って・・・次の期が始まって1カ月経ってから報告かよ。」
「何なんですか、その方針説明会って?」
「去年の業績報告と、今期どういうことをしますっていう説明会。
全社を通じてやるのもあるんだけど、それは役職者級のみで、
それ以下の人達には事業所ごとに説明をしていくんだよ。」
「なるほど・・・それでそれが何か?」
「そこでわかるんだよ。
関東事業所がどれだけ赤字を垂れ流しているかが。」
「・・・え?だけど、照明事業部って赤字って聞きませんけど・・・。」
「当然。九州事業所の黒字を全部食って、
何とかトントンにしてるんだよ。」
「え!?それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫なはずないじゃん。
ちょっとでも黒字額が減ったら、一気に赤字に転落だよ。」
「・・・マジですか・・・。」
「田口、俺、気なってるのは、
毎年赤字なのに、なんって報告してるの関東事業所は?」
「企画部や営業部は、技術部が他社に比べて魅力的な商品を出さないのが問題だって言って、
赤字の理由を技術部に押し付けてるよ。」
「・・・さっきの感じだと、全部企画部が決めるんじゃないの?」
「そうだよ。俺達は企画部から上がってくる製品を作ってるだけだよ。
もしも企画部が上げたものから少しでも違ったものを作ったら、
すぐにリテイク食らって、やり直し。」
「それで何で技術部なんだよ・・・。」
「まあ、あいつらは自分達が悪いと思ってないからね。
うまく行けば自分達の企画のおかげで、うまく行かなければ技術のせい。
けど、技術部から言わせたら、そんなわけないんだけどね。」
「まあ、企画部から降りてきたモノを作ってるだけなんだろう?」
「そう。しかも・・・
他社のカタログに載っているモノをつくっているだけど。」
「・・・は?」
「うちの企画部が新しい製品を生み出す力なんてないからね。
他社のカタログを手に入れてから、
このカタログにある製品をうちのラインナップにしろ!って言ってきて、
丸写しの商品を作っていくだけだよ。」
「・・・よくそれで業界で上位に食い込んでいるな・・・。」
「まあ、トップはとれなくても、金と力にモノを言わせて上位に
食い込んでいってるんだよ。」
「・・・まさに大手ならではのやり方だな・・・。」
「そう!大手メーカーの製品と名もないメーカーの製品だと、
当然一般消費者は大手の名前を選ぶだろう?
それで俺達の商売がなりたってるんだから。」
「まったく熱意もなにもなくて、新入社員とかどんどんいなくなりそうな言葉だな・・・。」
「それでも大手だから、勝手に人が集まってくるんだよ。
俺だって、名前で選んだくちだからね~。
大学ではまったく違うことをやっていたのに、自分が社会人になって
まさか照明器具の開発やるとは夢にも思わなかったよ。」
「まあ、そうだろうね。
俺もこんなことするとは、露にも思ってなかったよ。」
「それでも柊は、有機ELを学生の頃からやっていたんだからいいだろう?
ちょっと道はズレたけど、それでも有機ELに携わってるんだからさ。」
「まあね。」
「それでこれからどうするの?
企画部がOKをくれない限り、うちの会社で商品を作るのは無理だけど・・・。」
「だよな・・・。」
柊さんは田口さんの言葉に頭を掻きながら、事務所へと戻っていくのであった。
事務所の席についても先ほどの会話は終了することなく、
村中部長を含めて話をする。
「ねえぇ、柊ちゃん。」
「はい?」
「九州事業所でやるのはどうなの?」
「製品の立ち上げですか?」
「そう!」
「うぅ~ん、向こうは産業用の照明器具ですからね・・・。
こっちもどこかの装置に組み込む照明器具とかだとできますけど、
今回のコンセプトは一般用の照明器具ですからね・・・。
向こうで立ち上げるのは難しいと思いますし・・・
あちらの部長になった人を知っているでしょう、村中部長。」
「・・・あぁ~、あのメンドクサイ奴がなったね・・・。」
「あの人、有機EL嫌いですから。
だから、有機ELの材料部隊が分離する話も進んでいるんだと思いますよ。」
「まあ、ある意味役に立ってるんだけどね~。
だけど、この件に関してはあいつの助力は仰がない方がいいな~。」
「はい、だから産業用の企画部である第二企画部を使う案は却下です。
ですから・・・。」
そういって、村中部長に柊さんは自分のパソコンを見せる。
私達はそのパソコンに見たのは、
「「「第三企画部?」」」
みんなが首をかしげるのであった。
第一企画部・・・さっきの超嫌なやつら・・・は、一般用の照明器具を、
第二企画部は産業用の照明器具を、そして第三企画部は・・・
なんだろう?
「第三企画部何ってあったんですか?」
「この4月に出来たばかりの部署だよ。俺達と一緒。」
「第三企画部って・・・そっか!」
村中部長がポンと手を鳴らす。
「そうですよ。ここは新しいモノを発掘したり、開拓するための部署ですよ。」
「・・・有機ELっていけるか?」
「うちらだって、新商品なんですからね。
向こうからしたらおあつらえ向きでしょう。」
「・・・というか、それしかないか。」
「ええ、さっきの話だとうちの第一企画部からってのは
絶対に無理だと分かりましたからね~。」
「だよな~。
俺もこれ以上話は無理だって思って、打ち切ろうかと思ってたくらいだからな。」
「村中部長でもですか!?」
私が思わず驚いてしまう。
村中部長も豪腕で知られる人で、ああいう交渉事が得意なはずである。
その人から匙をなげられるなんって・・・
「俺はよく柊ちゃんが、あそこで聞けたなって感動したくらいだよ。」
「まあ、聞かなきゃ本当に何も残らない打ち合わせになっちゃいますからね。」
「いや~、本当にすごかったよ。
俺思わず、柊ちゃんに惚れそうになったからね。」
「あ、そんなのいらないですからね。」
「いい仕事とするよ、俺。」
「そんなアピールは本当にいらないですから!」
そんなやりとりで場が和んだところで、
「じゃあ、気を取り直して第三企画部に接触してみるか!」
「ええ、じゃあ、ここの課長は俺知ってますから、連絡してみますよ。」
「そうなの?じゃあ、宜しくね~。」
こうして私達は第三企画部に連絡をするのであった。
次話は8月17日7時に更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




