情報収集
その後もたわいもない話をしていたのだが、
急に真剣な顔をして西さんが私達に、
「そう言えば、関西の電機メーカーさんと材料メーカーが
手を組んで会社を立ち上げるようですよ。」
「・・・へぇ~。」
「基本的には材料メーカーが主体で、電機メーカーさんに有機ELの製造を
依頼するといった形態で新規会社の立ち上げをするみたいですがね。」
「何でまたそんなことを?」
「材料メーカーからすれば、1つでも材料の売り先を増やしたいってことと、
すべての材料を自社で提供することで、作り上げた有機ELで技術力のアピールはもちろん、
今一歩及び腰の電機メーカーに代わって、自分達が有機ELの旗振り役を担いたいんだと思います。
そうすれば自分達の思い通りに物事が進められますから。
その材料メーカーは今後の成長戦略に有機ELを掲げてますからね。」
「・・・なるほど・・・。」
「それと東北地方での・・・。」
さすがは有機EL材料を取り扱う商社であって、事情をよく知っている。
私は・・・まあ、知らないのだが、柊さんが知らないことまで良く知っていた。
・・・こうして情報を得ていたのか・・・
柊さんが各企業の情報に詳しいのは、
こういうところから情報を得ているからなんだろうな・・・
その後も情報を提供してくれるのだが、当然こちらにも情報を要求される。
急に西さんの話題が話が終わったかと思うと、
笑みを絶やすことはないのだが、鋭い視線をして、
「御社は自社製のパネルで行くんですか?
それとも今回他社のパネルを購入しているところからみて、
他社のパネルで行くんですかね?」
たぶん、これが今日私達を接待に呼んだ一番の理由なんだろう。
うちの舵をどちらに切るかで、講談商事にとってのメリットが大きく違ってくるからだ。
柊さんの回答を静かに待つ西さん。
山田さんも少し緊張した面持ちで次の言葉を待っていた。
「現状ではフラットですよ。
まあ、ご存知のように量産ラインもあるのは知っておりますよね?」
「はい。おかげさまで弊社からも大量に材料を毎月購入していただいております。」
「正直言えば、どちらで行くかは決まっていないですし、
判断材料があまりに少ないんですよ。」
「そうですよね。現状では、他社はどこも値段開示はしていませんからね。
それに特性もも各会社が公表はしていますが、本当なのか眉唾物ですからね。」
「ですよね。だから、まずはパネルを入手、評価していく方針です。
そこで得られた知見から有力なメーカーについてだけは、
弊社が有機ELの照明器具化を検討していることを情報開示して、
量産した場合の有機EL価格を出していただき、比較になると思ってますよ。
弊社で作った場合と他社で作った場合の。」
「ちなみにどこらへんで判断をするつもりですか?」
「夏までには目途をつけたいので、できれば早くパネルの準備をお願いしますね。」
「そうですか!分かりました、すぐに各社の有機ELの見積もりを出させていただきます。」
「ええ、宜しくお願いします。」
嬉しそうな顔をする西さん。
まあ、有機ELを講談商事から購入するとすれば儲かるからそれはそうだろう・・・
「もし自社で生産される場合はどちらで・・・。」
「そりゃ~、九州事業所でしょう。
設備があって、動かすことはなかなかできないですからね。」
「そうですか!!それだと材料の窓口は・・・いつもの通りなんですかね?」
「そうですね。今まで通りだと思いますよ。」
嬉しそうな顔をする西さん、ホッとした顔をする山田さん。
他社からの有機EL購入に関しては今回の購入を講談商事にした経緯もあるし、
材料供給の場合も今までの付き合い通りだとすればそれは嬉しいことだろうな・・・
ここでどちらかだけしか携われないとなると、儲け話にのれないのだから・・・
どちらにも噛めればそれは安心だろう。
柊さんの言葉を聞いて、嬉しそうな顔をする西さんが、
「どんどん食べてください!
お肉の追加なんっていかがですかね?
私も初めて葉山牛を食べましたが美味しいですね~!
これならいくらでも入りますよ!!」
そう言って、どんどんお肉の追加注文を進めてくれるのであった。
分かり易い・・・さっきまで多分、気が気じゃなかったんだろうな・・・
「そう言えば、さっき言ってた電機メーカーと材料メーカーの有機ELは、
購入できるようにしといてくださいね。」
「はい、わかっております。
まだ会社が設立しておりませんので、窓口が決まってないとのことです。
これからも随時コンタクトを取っていきますので、
その都度状況の説明はさせていただきます。」
深々と頭を下げる西さんに、軽く挨拶をする柊さん。
その後も色々と情報交換をしてながら食事を食べていったのであった。
正直私的には、高級な葉山牛であったとは言え、
初めての接待で勉強することだらけだったので食事処ではなかった・・・
ちなみに私が食べたのはコースで・・・〇万円!?
・・・え?私の一カ月分の食費なんですけど!!!
それにお酒もプラスされると・・・
とりあえず考えないようにしとこう・・・
「・・・いつもこんな感じなんですか?」
私はコッソリと山田さんに聞いてみると、
「普段は柊さんはこういう食事会はほとんど断られますよ。」
「・・・え!?」
「だから、今回は結構こちら側も頑張って店を選んだんです。」
「そうなんですか!?」
思わず驚いてしまう。
柊さんは慣れたように対応していたから、
てっきり多分に接待を受けていると思っていたのだが・・・
「今回は、私達を呼んでこちらでの仕事に携わらせていただいたので、
そのお詫びとして食事会にお応えいただいたんだと思いますよ。」
「・・・意外ですね・・・。」
「まあ、柊さんも御贔屓にされている業者さんがいると思います。
そちらとはよくお食事をされているともっぱらの噂なんですけどね。」
「あ?そういう業者はいるんですね?」
「ええ、ですけど、目的は今日のように情報収集をしているみたいですよ。
たぶん、今度井口様もご一緒にさせてもらえるんじゃないですかね。」
「そこのメーカーの方はご存知なんですか?」
「ええ、知っております。
ただ、同業なので一緒に話すことはあまりないですが、
業界筋では、結構やり手で有名な方です。」
「そうですか・・・。」
「それと、今日のは私達と井口様のための食事会だと思いますよ。」
そう言って、話を締められるのであった。
そういうことか・・・
私のためでもあるのか・・・
・・・勉強させていただきました!!
次話は本日19時に更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。