新卒採用試験にて
「・・・何か高そうなんですけど・・・。」
私は入り口に掲げられた本日のおすすめを見て、
足がどうしてもすくんでしまう。
そこには本日のおすすめが書かれているのだが、
“葉山牛ステーキ 200g 8000円~”
・・・ちょっと、私の財布には全然安くない値段なんですけど!!!
「まあ、気にせず入ろうか。」
そういって、柊さんが入り口から店内に入ると、
入り口のすぐ傍に山田さんが待っていたのである!
「お疲れさまでした。どうぞこちらです。」
そう言って私達を本日予約を入れている席まで案内してくれる。
お店の人でもないのに・・・
・・・何か、野々宮さんみたいな印象だな山田さんって・・・
出来る女!って感じがする。
「遅くなってすいません。」
「いえいえ、こちらこそお呼びだてして申し訳ないです。」
西さんが私達に席を進めてくれて、勧められた席に行き、
上着を脱ごうとすると今度は・・・
「お預かりします。」
そういって、山田さんが私の横で微笑むのであった・・・。
出来る人ってこんなに出来るんですね!!
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、
「最初から山田さんもしっかり者って感じじゃなかったんだよ。」
苦笑しながら柊さんが教えてくれるのであった。
柊さんの言葉に苦笑を浮かべる山田さん。
「そうですよね。私が入社してからずっとお仕事をご一緒させてもらってますから、
柊さんは良くご存知ですよね。」
料理はすでに西さん達が注文されていて、
私達には飲み物を確認されただけなのだが、
「ワイン飲めますか?」
「ええ、僕は大丈夫ですけど、井口さんは?」
「私も大丈夫です。」
「じゃあ、最初はグラスでシャンパンを、その後の魚にはこの白ワインをこちらはボトルで、
それとメインの時にはこちらの赤をボトルで・・・。」
慣れた手つきで注文する西さん。
やっぱり営業の方々って接待慣れしてるんだな~。
最初は山田さんの話となり、驚くべき情報がもたらされた!
何と山田さんは柊さんがリーダーを務めていた共同研究の相手先の
大学の生徒の1人だったらしくて、
山田さんが学生の時から知っていたらしい。
「本当は私も有機ELの研究開発に進みたかったんですけど、
そんなに学力がある大学ではなかったので、どこも受からなかったです。」
「そうなんですか!?大学時代に有機ELの研究していると有利に思えますけどね。」
「そんなことはないんですよ。
やっぱりまずは大学の学力ありきですから。
ほとんど書類選考で落とされました。」
「そうですか・・・。」
「ええ、それで付き合いのあった柊さんにお願いして、
今、勤めている講談商事を紹介してもらったんです。」
「ええぇ!?そうなんですか!?」
「そうなんですよ。だから、柊さんには今でも頭も上がらないんです。」
「それはそうですよね・・・。
というか、それなら柊さんに頼んで、
うちの会社を受けても良かったんじゃないですか?」
「はい、柊さんに推薦状を書いてもらって書類選考は通らせてもらったんですけど、
次の筆記試験と一次面接で落ちてしまったんです。」
「・・・そ、そうですか・・・。」
なるほど、すでに柊さんにはお願い済みで、
しかもそれで何とか書類選考は通ったと・・・
そして、そこからは自分の実力の段階まで進んだけど駄目だったのか・・・
「・・・あの面接心が折れますよね?」
私は自分が受けた面接を思い出していた。
ハッキリ言って女子に対してはセクハラである!!
“女子は子供産むよね~”
“女子には研究なんって体力的に厳しいでしょう”
“結婚したらやめるんじゃないの?”
“彼氏はどう思ってるの?ここの会社を受けることを?”
“女子は研究なんかよりも営業で笑顔を振りまいてる方がいいんじゃないの?”
そんな質問を平気でやってくる面接官達。
イラつきを覚えてるのは間違いなく、セクハラとして訴えるレベルのモノであった・・・。
ちなみにそれが一次面接の集団面接で行われていたため
隣にいた男子の質問とは全然違うことは分かっている!!
男子に対しては、
“大学の時の研究は何を?”
“英語の勉強はしている?会社に入ると英語は必須だからね”
“学生時代にバイトはしていた?”
等である・・・
ああ、思い出しただけで腹が立ってきた!!
「はい・・・。それで全然応えることが出来なくって、
残念ながら落ちたんです・・・。」
「どうしてうちの会社って女子にきびしいんですかね!!」
「セクハラ大好きおやじたちが会社の上にいるからねぇ~。
ちなみに男子にも厳しい場合があるからね。」
「そんなこともあるんですか!?
私と一緒に受けていた男子は、それはそれは普通の質問をされてましたけどね!!」
「あるよ。誰が推薦してきたかの影響を受けるんだよ。」
「?どういうことですか?」
「大体、役員でも人事系の役員が面談の2次とか3次面接担当するだろう?」
「そうですね。」
「そうするとそこの役員と仲が悪い場合には意図して落とすんだよ。
意地悪な質問をして、回答できなかった場合にはそれを理由に落としていく。」
「・・・本当ですか?」
「ちなみに俺の同級生がとある部長の推薦状を貰ったんだけど、
その部長と人事の部長が仲が悪いため1次面接の時に、
『会社からどこかに行けって言われることがあるけど、行ける?』
って聞かれたらしいんだけど。」
「・・・その結果は?」
「俺の友達は、
『どこへでもいけます』
って答えたんだよ。」
「・・・まあ、そう答えるしかないですよね。」
「そしたらその部長が、
『自分の意見はないのかね!!』
って激怒したんだよ。」
「・・・じゃあ、行けませんが回答だったんですか?」
「ちなみに俺の同期に同じ質問をされた女子がいたんだけど、
そいつはもちろん、
『どこへでもいけます』
って答えたんだ。」
「・・・で?」
「まあ、俺の同期なんだからそれで受かっているんだよ。
しかも、
『大変だろうけど、頑張ってね』
って言われたらしい。」
「・・・他の質問で間違えたとかですかね?」
「ちなみに俺の同期と落とされた同級生の質問はそれがすべてだったらしいよ。」
「・・・そんな事ってあるんですか?
私だって、質問は一次面接でも結構聞かれましたけどね・・・。」
「ちなみに俺は『体は丈夫?』って聞かれただけだったよ。」
「・・・ありえないんですけど・・・。」
何か、柊さんに教えて貰うと面接なんて
形骸化しているように思えてくるんですけど・・・
あとは個人的な感傷で落とされたりとか・・・ひどすぎる!!!
「どうもすいません。」
思わず、山田さんに謝ってしまう。
「いえいえ、そのおかげで講談商事に入れましたし、
今、こうして有機ELに携わった仕事ができてるのでいいんですよ。」
・・・大人だ・・・
絶対にこの人、私よりも大人ですよ!
次話は8月15日7時に更新予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。