殿様気質
「そういえば、いよいよこのプロジェクトにも正式に予算がついたから、
他社の有機ELパネルの評価をしたいんだけど。」
「あ、ついたんですね!了解しました!
以前に柊さんがリストアップしてくれ他社の有機ELを購入しときます!
・・・そう言えば、購入ってどうすればいいんですかね?」
一年目では、まず購入もさせて貰っていなかったためやり方が分からないのだ。
それを察した柊さんは、私に購入の手順を教えてくれる。
「まずは購入先の購入口座を作んなきゃいけないんだけど・・・。
そう言えば、調達に俺の後輩いたな・・・。」
そういって、おもむろに内線をかけて、どこかに電話を掛ける。
電話越しに数分話した後に、
「じゃあ、調達部に行こうか。」
「あ、はい。」
私は柊さんに付き添って調達部に行く。
初めて調達部に行ったのだが、結構・・・殺伐とした雰囲気だな・・・
なぜかみんな必死に仕事をしていて、一切の喋り声が聞こえてこないのである。
「すいません。お忙しいところ、わざわざ時間を割いていただいて。」
「まったくですよ。こんなことでわざわざ呼ばないでくださいよ。」
そのやり取りに柊さんの後輩の調達部の人と私は何も言えなくなる・・・
っていうか、え?なに?何でこんな態度なの調達部の課長さんって!?
「じゃあ、端的にお話させていただきます。
うちの部でこれから取り引きが始まるんですけど、
購入するに当たって新しい口座を作っていくとことになると思います。」
「あぁ~、無理ですから!
新しい口座の開設は無理です。」
「無理なんですか?」
「はい、無理です。なので諦めてください。」
そこまで言って、調達部の課長が立ち上がり、立ち去ろうとしたのであった。
・・・ここまで顔を会わせ1分ほどだろうか?
なんなんだろうこの人?
無理の一言だけ言ってたりさるって!?
「どうすれば口座って開設してもらえるんですか?」
それでも落ち着いた感じで柊さんは尋ねると、
「年間取引が10億をこえる場合には口座を開設します。
それ以外では何を言われまして開設しません。」
それだけを言い残して立ち去って行ったのであった。
「10億か~・・・九州事業所とはやっぱり違ったな~。
良かった、先に確認しておいて。」
「って、なんでそんなに落ち着いてるんですか!?
あんな態度をとられて腹が立ちませんか?」
「立つに決まってるじゃん。
だけど、どうすればいいのかを確認できるまでは我慢しないといけないからね。」
柊さんのいうことはもっともだ。
癇癪を起しても、何をうまれないのだけど・・・
「・・・おっしゃる通りです。」
確かにどうすればいいのかを確認するまでは、どんなに
嫌味を言われて怒っても我慢する必要はあるけどさ・・・
どうしてこっちがあんな風に言われなきゃいけないのよ!!
同じ身内の人間として、あの態度は恥ずかしいわ!!
そのことを私だけが思っていたわけではないようで、
「すいません。」
申し訳ないように謝る調達部の人。
確かに・・・自分の上司があんな態度をとると申し訳ないと思うよね・・・
「ああ、いや、こっちこそ時間を作ってもらって申し訳ないね。
今回は助かったよ、ありがとう。」
そう言って、調達部の打ち合わせスペースから立ち去って、
私達は自分達の部署へと戻っていくのであった。
「なかなか、厳しいね~。」
先ほどの件を村中部長に報告する。
その報告を受けた村中部長は苦笑していた。
「そうですね。思ったよりも融通が利かないですね。」
「どうしようか?他社の有機ELを買えないとなると困っちゃうね。」
「ああ、それについては九州事業所で贔屓にしていた商社がいますので、
そちらを呼んで対応してもらおうかと思います。」
「へぇ~、そんな都合のいい商社があるの?」
「ええ、元々、有機EL関連の取り扱い部門を作ろうとしていたので
こちらからの申し出は喜んで受け入れてくれると思いますよ。」
「じゃあ、当面の購買窓口はそこにする?」
「はい、大丈夫だと思います。」
「じゃあ、柊ちゃんお願いね。」
「すぐに連絡入れておきます。」
その返事をすると柊さんは自分の席に戻って、名刺を取り出し、
メールを作成し始める。
「しっかし、どこの部署も賛同してくれないね~。
照明事業部って思っていた以上にお堅い感じの事業部なんだね。」
「う~ん、というか、関東事業所がって感じだと思いますよ。」
「こっちだけなの?九州事業所は?」
「こんなことないですよ。
まだ建設的な話し合いをしてくれます。
口座開設も必要があれば柔軟に対応してくれますしね。
何よりどうすればいいのかを親身に相談にのってくれますよ。」
「へぇ~、じゃあ、全然違うね。何がそんなに事業所で違いがあるんだろうかね?」
「ああ、それは関東事業所はBtoCの商売で、
九州事業所はBtoBの関係だからだと思いますよ。
少なくとも九州事業所は相手が企業だから態度が悪かったり、
応対が悪かったりしたら、すぐに取引に直結しますからね。」
「・・・なるほどね。関東事業所は殿様商売ってことか・・・。
まあBtoCだと、こっちが提供してやっているって気持ちなるかもね~・・・。
それでこんな風な態度に・・・ってのは納得いくな。
あぁ~、めんどくさいな、それ!」
「まあ、その考え方が関東事業所全体にあって、
僕らみたいな身内だけで身内じゃない人間に対して
あんな態度を取らせてるんじゃないんでしょうかね。」
「そうだろうね・・・。
しっかし、凄いな~この関東事業所って!
だって、ものすごい赤字毎年出してるじゃん!
なのにプライドだけは高いって!!
そりゃ~潰される話が出てきてもおかしくないわな。」
「え!?そんな話があるんですか!?」
「おぉ~っと失言だった~。」
ニヤニヤしながら話す村中部長。
っというか、たぶんみんなに聞かせるために声のトーンを
落とさずにわざと話してるように思える・・・。
私達の部署だけではなく、同じフロアにいる他の部署のメンバーも
思わずこっちを見ているのが、そのせいであろうに・・・
・・・この人も腹黒いな・・・
人が困っているところを見て、ニヤニヤとしているんだから・・・
次話は8月14日7時に投稿予定です。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。