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渡り鳥

先日会議が終えて、私達は柊さんが言う課題について取り組むことになり、

田口さんと私は法律との確認作業に追われていた。


そんな中で、



「おはようございます。」


そういって、私達のシマに1人の男性が近づいてきたのであった。


私は見たことがない人で、挨拶しながらもチラリと胸元を見て、

本社の人間が付けるバッチを付けているし、たぶん本社側の人間だろうなと思った。


あとは年齢は、たぶん30後半くらいだろうか?


そんなことを思っていると、



「お、こんな田舎までどうしたの澤藤君?」


村中部長が声をかけるのであった。



「ご無沙汰しております。村中節を聞きにここまでこさせていただきましたよ。」


「またまた、俺に会いに来るつもり何って微塵もないくせに~。

 その嗅覚でたまたまここに来たんだろう?」


「何か面白いことがここで起きそうだったので思わず覗いただけですよ。」


「そう?澤藤君のお眼鏡にかかるようなことはここではないと思うけどね~。」


「そんなことないですよ。

 “クラッシャー”の異名を持つ村中部長が新しい事業を起こすとなれば、

 それはそれは本社でも噂になりますからね~。」


「あははは、そんな風に俺って言われてるの?心外だな~。」


「心外ですか?僕から見たら“クラッシャー”って”いう異名はまさにぴったりと思いますよ。」


「俺のモットーは波風立てずに定年を迎えることなのに~。」」


「半導体事業部での功績を持ってそれは無理でしょう。

 半導体事業部では伝説級の扱いになってますからね。

 赤字続きだったのを4年で立て直した豪腕で、

 今度は照明事業部で何をするつもりなんですか?」


「何って?分かってきてるんだろうに~。

 “渡り鳥”の異名は伊達じゃないんだろう?」


「・・・渡り鳥?」


思わず私が声を出してしまう。


そもそもクラッシャーっていうのにも反応しそうだったのを何とか我慢したのに、

続けて渡り鳥と言われたのでついには我慢できなくなってしまった。


小説や漫画じゃないのにそんな異名だなんて、

痛い人達みたいじゃない・・・



「澤藤君の通り名?みたいなもんだよ。

 澤藤君はその嗅覚で大きく芽が出来そうなプロジェクトに参加して、

 ことごとく成功してるんだよ。

 だから、彼の功績は抜群に優れているんだよね~。

 まあ、彼の嗅覚に俺達のプロジェクトが引っかかったってことは、

 成功を約束されたようなもんだね~、これは吉兆かな?」


「そんな、僕みたいな若輩者が興味を示したからって何も変わりませんよ。」


「この有機EL照明器具化プロジェクトは・・・興味を引いたんだろ?」


「・・・ふふふ、村中部長には隠し通せないですね。

 ええ、クラッシャーの村中部長と・・・


 “開拓者”の柊君


 その二人が組んだプロジェクトは成功する可能性が高いですからね。」


ニッコリ微笑む澤藤さん。

今は柊さんは席を外されているけど、居たらどんな顔をしたんだろうかな・・・


“開拓者”なんだ・・・


何か・・・


痛いな・・・



「開拓者って異名がついたんだね~。

 柊ちゃんは!

 いつも思うけど、そんな異名を誰が考えてるんだろうか?」


「さぁ~?

 誰だかわかりませんが、言い得て妙だと思いますよ。

 今まで有機EL用の材料事業なんって無かったものを立ち上げてますからね。

 今では相当儲かってるんでしょう?

 そろそろ照明事業部から独立部を作ろうかって気配があるくらいですからね。」


「まあ、照明事業部とは根本的に違ってきてるからね。

 マテリアル事業部に吸収が・・・って、材料が大きく違い過ぎるか~。」


「はい、なので、新たな部署を立ち上げることになるかと思いますよ。」


「なるほどね~。それで、そこを狙ってここに来たの?

 また成果を収めて、更には有機ELに携わる仕事をして、

 そのコネで新事業部をってところが筋書きなのかな?」


「たまたまなぜか道があったので、その道を辿っていこうと思っただけですよ。」


「その道は曲がりくねってるかもしれないから、

 気をつけた方がいいんじゃない?」


「大丈夫です。意外と真っ直ぐな道だったみたいですし。」


村中部長と澤藤さんが笑い合っているのだが、

どうも黒い笑みのように感じてしまい、私はちょっと一歩引いてしまう・・・。

これが腹黒同士の腹の探り合いなのだろうか・・・。




「てなことが、柊さんがいない間にありました。」


私は打ち合わせから戻ってきた柊さんに先ほどあったことを報告する。


一応、村中部長からは澤藤さんが来たことを柊さんに伝えておいて欲しいと

伝言を承ったので伝えておくのだが・・・



「澤藤さんね・・・。」


「ご存知ですか?」


「一応。社内展示会とかで話したことがあるからね。」


「どんな人なんですか?」


「うん?さぁ~、俺もよく知らないけど、

 話した感じだと笑顔で人を刺せるタイプって感じじゃない。」


「・・・怖いんですけど・・・。」


「まあ、否定はしないよ。」


「・・・そんな人がわざわざ何でここに?」


「たぶん、ここの部署に来るつもりなんだろうね。

 そう言えば、さっきこの間の議事録を技管から、

 澤藤さんが欲しがってるんだけど、渡してもいいですか?って言ってたし、

 それを貰いにきたんだろうね。

 それと現場の空気がどんな感じなのかを調べるために村中部長に接触したのかな?」


「本社には他にもいっぱいプロジェクトってやってますよね?

 それなのに何で・・・。」


「さっきの話だと、このプロジェクトを目的に来たわけじゃないだろう。」


「?どういうことですか?」


「さっきの話だと、有機材料が独立して部が出来るって話をあげたんだろう?」


「はい。」


「じゃあ、そっちが本命だろう。」


「本命ですか?」


「ああ、結論から言えば、村中部長もそっちの事業部長職を狙ってるんじゃない?

 それに続いて澤藤さんもそっちで役職級を手に入れるつもりじゃない。

 副部長か運が良ければ部長職くらいになるのかな?」


「すいません。どうしてそうなるのかがわかりません・・・。」


「まあ、これからを見ていけばわかると思うよ。

 俺だってあの二人の狙いは分かるけど、その手順までは分かんないからね。」


「っていうか、いいんですか!!

 だって、柊さんのおっしゃる通りならあの2人って、

 片手間にこのプロジェクトに参加するってことじゃないですか!!」


「片手間って・・・。」


「だって、そうじゃないですか!!

 このプロジェクト自体は全然興味を持ってないってことですよね!?」


「・・・思った以上に熱いね・・・井口さんって・・・。」


「柊さんの温度が低すぎなんですって!!!

 私は普通です!!」


「あ、それはそれは失礼しました。」


「むぅ~!!もっと、こう、熱くやりましょうよ!!

 リーダーはやっぱり熱くないと!みんなを引っ張るんですから!!」


「ああ、俺、暑苦しいの苦手なんだよね~。」


「リーダー失格ですよ!!

 みんなをやる気にさせてくださいよ!!」


「えぇ~!

 だけど、この間まで意気消沈していた井口さんをここまでやる気にさせたんだから、

 そこそこリーダーの資格は俺にあるんじゃない?」


「ぐぅ!?」


ニヤニヤと笑う柊さん。

確かにこの間の打ち合わせ時では私は完膚なきまで落とされてしまった・・・


だって、あんなに言わなくてもいいじゃん!

っていうか、これからっていう部門にあんなにも言う!?


若者のやる気を完全にポッキリと折ってくれてさ!!


思い出しただけで、またイライラが湧いてきてしまう!!


・・・確かに認めましょう・・・


たぶん、柊さんのおかげでこんなメンタルになっていることを・・・


前のままだと折れたままで凹んでしまっていただろうから・・・


次話は本日19時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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