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全否定の会議

私に柊さんから、資料をまとめておいて欲しいと言ってわれて、

三日後、私達は有機ELの照明器具化に向けて、関係部署の面々を集めて会議を開催した。


会議室には20名ほどの人数が集まっている。


部署としては営業部、企画部、品質保証部、製造部、技術部などの面々が集まっていた。

しかもどこも部長や課長などのかなり力を持っている面々である。



「みなさ~ん、お忙しいところ集まっていただいありがとうございま~す。」


村中部長の気の抜けたような話し方で会議が始まり、



「まあ、村中部長のお声掛けですからね、断ると本社から睨まれてしまいますから。」


「本社の方は人事権もお持ちですしね。」


・・・ものすごい嫌味の言葉を言ってくる照明事業部の各部長や課長たちに、

私は会議室の中の空気が私達にとってアウェーであることをハッキリと感じる。



「あははは、使えるものは何でも使うのが僕の主義なんですよね~。

 当然断るようなら睨むにきまってるじゃないですか~。

 それに部長や執行役員になるには本社で2年の勤務が必要ですからね皆さん!

 ちなみに私は本社役員なのもお忘れなく。

 僕に睨まれるってことは・・・まあ、出世は諦めてくださいね。」


まったく悪びれる様子もなく嫌味に対して、全面的に認めて返すのであった。

そのおかげで一段と空気が殺伐としていくんですけど・・・



「とりあえず説明をはじめさせていただきますね~。」


そういって、村中部長が説明を始めていく。

1つ1つ丁寧に分かり易く説明をしているのだが・・・



「まあ、これが有機ELです。みなさんよろしいですか?」


「結局何が言いたいの?」


開口一番に出た質問がこれであった。


・・・いや、それを今、説明したじゃない!!



「次の世代の光源候補ってことです。」


私がそんなことを思っていると柊さんが質問に回答する。

その間には村中部長と柊さんでアイコンタクトを取っていた。



「ふ~ん・・・で、他社はやってるの?」


「研究はしてますね。」


「研究段階なの?製品化は?」


「どこもしていないです。」


「じゃあ、うちもする必要ないじゃん。」


「ただ、次世代光源候補ですから早めに開発はしておかないといけません。」


「また~!?社長のわがままで一番を取りに行きたいの?

 そんなんばっかだよね~。

 おかげで下は相当迷惑をしてるんだけどね~。」


各部の部長や課長は有機ELについて大反対という感じをもろに出してきていた。



「だいたい、こんなのに予算割くくらいなら、

 うちに少しでも予算回してくれたらいいのに。」


「他社がやってないことやる必要はない!」


「他社がやって様子を見てから、

 他社に合わせてラインナップをすればいいじゃない。」


「こんなの使えないわ。」


・・・まったく建設的ではない、ただただダメ出しをひたすら言っているだけである。


私達がやろうとしていることを全否定されるとちょっと心が折れてしまう・・・


そして・・・



「はん、将来の次世代光源ね。今までいくつそんなことを言われて、消えてきたことか。」


鼻で笑う人まで出てくるのであった。



「どうせこれも目が出ないんだろう?こんな技術ありました~ってな。」


「そんな将来ありえないモノに、ホント技術の人間割きたくないんだよね~。」


基本的には全否定しかしない人達に私は本当に心が折れそうになるのだが、



「この面発光って良くないですか?」


柊さんは何事もなかったように話をするのであった。



「そんな発光なら、LEDでも十分出来るだろうに。」


「そうですね、拡散板で広げればできますね。

 ただ、ここ!ここ見てください!ムラができないんですよ!

 拡散板だとムラが発せしますけど、これだとムラが発生しないんです!」


「だからなんだよ。

 だいたい、照明なんってのは一般人なんかには、ムラがあろうとなかろうと

 あいつらバカだからわかんないって。」


「ムラがないって、結構大きなメリットになるかと思うんですけどね。」


「ならない!そんなの分かる一般人なんっていないから!

そんなものなのメリットってさ?」


「太陽光に近い発光が出来ますよ。」


「近いからなに?

今のLEDの発光じゃ何か問題があるっていうの?」


「ちょっと日本人にとっては寒々しい灯りになりませんか?」


「はん!何を日本人としての意見みたいにいってんの?

 たしかに、青色帯びた光だけど、別にそれでクレームが来てるわけじゃないし、

 何の問題もないだろう!

 それにどうせあいつらには分かりはしないんだからな!」


・・・この人が技術部の部長って言うのが笑えないな・・・


消費者のことを何だと思っているんだろうか?



「品質保証部からの見解はどうですか?」


「さっき言ったように、こんな使えないものはうちでは許可しない。」


「やっぱり他社での実績ですか?」


「当然だ。他社での実績がないモノを認めるわけにはいかない。」


「どこら辺がダメそうですか?」


「まずこんなぺらぺらのガラスで出来たモノなんって簡単に割れるだろうが!」


品質保証部からは罵声を浴びせられる。

というか、どの部からも反対意見と罵声が私達に浴びせられて、

会議という体をなしていないように思えるのだが・・・


その中でも柊さんは笑いながら話をしていた。

村中部長は何も言わずにジッと話を聞いている。


結局1時間の会議で何も決まることもなく、

ただ、私的には心を折られてしまった感じの会議となった・・・。




「あははは、さんざんダメ出しされたね~。」


「ですね~。」


村中部長と柊さんは笑って話しているのだが、

後ろをいく私や田口さんは無口になってしまっていた。


当然、アレだけ全否定をひたすらされ続けたのだから・・・



「柊ちゃん、後ろのケアをお願いね。

 俺、今日は本社でお食事会だからさ。」


「・・・経費で落ちますか?」


「後輩をおごるのに経費ってけち臭いくない?」


「同期も混じってますけど。」


「じゃあ、同期と2人で割り勘ってところかな?」


「まあ、いいですけどね。」


2人の話が終わったところで、


「井口さん、田口、今日はちょっとだけ飲みに行こうか。」


そう言われて私達は仕事が終業すると残業することなく、

柊さんに一駅離れた居酒屋へと連れられていったのであった。



次話は20時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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