表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 夜空
3/3



あんなに満開だった桜がいつの間にか散っている。若々しい緑の葉が風になびくたびに、佐川椎華は静岡の茶畑を思い出す癖があった。


「お待たせ!」


幼稚園からの友人の松井理央に再会するのは、2年ぶりだった。確か、最後に会ったのは高校を入学したての頃だったはず。

家が近所だから会おうと思えばいつでも会えたのだろうが、互いに連絡することは無かった。

いくら近所だからといって偶然そこら辺でばったり会うなんて小説のような事も、この2年間では起こらなかった。


たった2年の間に、理央は随分と派手になっていた。元々、大きな目が特徴的だったが、たっぷりと塗られたマスカラが余計に目力を強調している。

オフショルのトップスに、ダメージの入ったスキニー、8センチほどのヒールを履いている。

手に持っているバックはLOUIS VUITTONだった


自分とは全く違う世界に居るようで、この劣等感のような空気を掻き消したくて、思わず出た言葉は

「葉っぱ見てると、茶畑思い出さない?」

だった。

「なにそれ?思わないわ!」

ガバガバと甲高い声で笑うのは、昔と変わっていなかった。


「何かお茶飲みたくなっちゃった」

「もう椎華なんなの?コンビニ行こうよ」


2人の背中を押すように、生暖かくなり始めた5月の風がブワリと吹いた。

風に靡く理央の髪からは、ふわりと香水の匂いがした。


その甘く纏わり付くような苦手な匂いに、思わず口元がクスリと歪んだ。

理央とは、なにもかも趣味が合わない。昔から。

だからだ。だからこそ、一緒に居られる。


なにも変わっていないんだ

ただ自分を落ち着かせたかったのか、強がりなのか、マウンティングするつもりなんてなかったが、負けてるーーそればかりが椎華の心の中で膨らみを増すばかりだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ