エピローグ
さて、いかがだったでしょうか。
ここでご紹介した作品は、ラノベでも異世界ものでもありません。
最近、「カクヨム」でプロの編集者が書いていると思われる連作エッセーを読んでいるのですが、前半部で自分はラノベだけでなく、一般小説のよさが理解できる編集者だと書いておきながら、後半部では作家は自分が書きたいものを書くのでなく、売れ筋ジャンルである、ラノベや異世界ものを無理してでも書くべきだ、というようなことを主張していました。
彼の意見とちょうど真逆なのがディーン・R・クーンツの「ベストセラー小説の書き方」です。
この本の前半部でクーンツは、作家たるもの、純文学だけでなく、大衆小説も書かなくてはダメとしておきながら、後半部では、どんなにあるジャンルの小説が流行しても、自分がそのジャンルを好きになれなければ、書いてはいけない、としています。
売れているからといって、好きでもない小説にむやみに手を出しても、結局、いい小説は書けないとクーンツは主張しています。
一見、矛盾した表現のように見えますが、クーンツの意見をまとめると、どんなに売れていても自分がどうしても好きになれない分野の小説は書いてはいけないが、好きになれる分野の小説ならできるだけ手を広げ、複数ジャンルの小説をマルチに書くべきだ、ということです。
私としてはクーンツの方に軍配を上げたいと思います。
BL小説のような一部の読者にしか受けないマニアックなジャンルが成り立つ多品種少量生産の時代。反ラノベ、反異世界ものの小説にも、存続できるニッチ市場があっていいでしょう。
(了)