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フェアプレイ信者の本格ミステリー魂 奥田光治さん「イキノコリ」他

 次にご紹介するのは奥田光治さんの本格ミステリー作品群です。

 奥田さんの作品は、このエッセーと似たような「なろう」おすすめ小説を紹介した企画で、これまで複数回紹介されていたようですので、すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれません。


 この世の中には本格ミステリーオタク、またはフェアプレイ信者という人種が少なからず存在します。

 彼らはミステリーの話題になると相手がまだその小説を読んでいない場合、絶対に”犯人”やラストのオチを教えないというマナーを守ります。それこそ拷問してもネタバレになることをしゃべらないのではないか、と思われるほど律儀で礼儀正しい人種です。

 彼らはエラリー・クイーン、ヴァン・ダイン、アガサ・クリスティーなどの作品をミステリーの”聖典”だと信じており、フェアプレイでないミステリーは認めません。

 エラリー・クイーンの国名シリーズには物語のクライマックスシーンで「読者への挑戦状」が出てきます。読者が犯人を当てられたら読者の勝ち、当てられなかったら作者の勝ち、というルールのゲームです。

 私に言わせればミステリーを読み終えて読者が面白かったと思えば読者も作者も勝ち、つまらなければ読者も作者も負け、というルールでいいのではないかと思いますが......。


 ところでこういう本格ミステリーオタクの天敵が中間小説マニアだと思います。彼らの小説の価値観は本格ミステリーオタクとは真逆だからです。

 中間小説マニアは、文章が魅力的でない小説、人物描写がしっかりしてない小説を嫌い、本格ミステリーを軒並み軽蔑します。しかしながら、文章と人物描写にうるさいわりに純文学は堅苦しいといって敬遠するところがあります。

 福永武彦という純文学の作家は、加田伶太郎のペンネームで本格ミステリーを書いていました。

 福永は、文学をやりたいなら純文学、ミステリーをやりたいなら本格ミステリーというふうに切り分け、中間小説など認めなかったのかもしれません。

 


1.スコッパー 一押し「なろう」ミステリー作家


 私は以前エッセーに書いたように「なろう」は「書き専」として付き合っていますが、本格ミステリーに関しては「読み専」を通り越していわゆるスコッパーの域に達しているのではないかと自負しています。

 現在のところ、奥田光治さんを越える本格ミステリー作家を私はまだ「なろう」内で発掘していません。

 フーダニットの本格ミステリーに必要とされるフェアプレイの諸ルールを守り、奇抜なトリックもあり、しかも小説としての完成度も高い。これだけのクオリティーのミステリーを無料で読めるとは、作者様にはただただ脱帽ものです。


 奥田光治さんのミステリーは、「名探偵・榊原恵一事件ファイル」、「名探偵・榊原恵一事件ファイル 外伝集」、「復習代理人・黒井出雲シリーズ」の三種類のシリーズに大別されます。


 探偵の榊原恵一は元敏腕警察官で、独立して私立探偵業を営んでいます。

 私は榊原恵一の外見をテレビドラマ「刑事コロンボ」の風貌に重ねてイメージしていますが、シリーズ全作品、彼のキャラクター描写がぶれていないことが驚きです。

 漫画やアニメなど視覚でキャラクターの外見を表現するならともかく、活字でキャラクターのイメージをここまで統一させるとは、作家の並々ならぬ力量を感じます。


 また事件が起きた住所を詳しく設定したり、事件を担当する警察の部署名を詳細に記述するところなど、リアリティーに満ちた描写も奥田ミステリーの魅力の一つです。

 女子高生のキャラクターがよく登場しますが、このへんは読者サービスでしょうか。


 一方、「復習代理人・黒井出雲シリーズ」は黒いセーラー服を着た”殺し屋”黒井出雲の活躍を描くクライムノベル。アニメの『地獄少女』や『デスノート』を連想させます。


2. 個別作品について


 最後に具体的に個別の作品を解説していきます。奥田ミステリーにハズレはほとんどありません。どの小説が面白いか選定に迷いました。またミステリーですので感想を書くだけで随所にネタバレが発生しそうな気がします。


①イキノコリ

 いわゆるクロースドサークル物です。

 バスが奥多摩の白神村に転落。乗客たちが村に閉じ込められ、一人ずつ殺人鬼に殺されていくというストーリー。白神村は廃村になったいわくつきの村で過去に凶悪な殺人事件が起きた「平成の八つ墓村」。

 ミステリー以上にホラー小説として楽しめます。前半部の殺人鬼の描写、後半部の犯人と榊原恵一の対話など、小説という形式を生かしたトリックは綾辻行人のミステリーを想起します。


②ディテクティブ・ロジック~真の探偵

 学校を舞台に別々の部屋で同時に複数の殺人事件が起きるという仰天のトリック。探偵が謎を解いたと思ったらまた別の探偵が現れ、事件は意外な方向に。

 トリックのすごさではこの小説が一番でしょう。


③業火の殺人者

 ホテルで火災が発生。消防士が死亡するが、解剖の結果、なぜか焼死でなく首の骨が折られていた......。


 この殺人事件のトリックは本格ミステリーでなく倒叙ものにすると面白い作品ができるのでは......と勝手に妄想しています。

 江戸川乱歩の『十字路』という作品がありますが、殺人事件の犯人の視点から物語が進行します。殺す側にも犯行の際、殺される側と同様にハラハラドキドキがあります。特に殺人事件の計画が途中で予定通りにいかないときは犯人はパニックになり、ハラハラドキドキがピークに達します。


④シリアルストーカー

 千葉県で若い女性が次々に殺されていく。被害者同志に何の接点もないと思われたが、海外から帰国した榊原恵一は彼女たちの共通項を見つけて犯人を特定する。犯人はわりと小説の最初の方にすでに登場していた......。


(ネタバレですが、この文章の中にすでに犯人を割り出すヒントが隠されています)


⑤榊原恵一の日常

 ショートミステリー集。榊原恵一ファン向けに書かれたエピソード集といった趣向。

 

拙作ミステリーも紹介させていただきます。


①空飛ぶカレー本舗 (クライムノベル)

②ドッペンゲンガー殺人事件(「蜜蜂男爵の館」)

③コロボックル殺人事件(「蜜蜂男爵の館」)

④ガネーシャ殺人事件(「蜜蜂男爵の館2」)

⑤ワラ人形殺人事件(「蜜蜂男爵の館2」)

⑥観世音菩薩殺人事件

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