怠惰の王とベルゼブブのクリア
九階層は今までの大部屋とは違い、どこか神殿を彷彿とさせる造りをしていた。
「なんかすごい造りしてんな……」
「ダンジョンに見えないね~」
「ん? ……二人とも来たぞ!!」
「グルルルッ! お前達が愚かにも暴食などという穢れた力を求める者どもか、恥を知れ!」
まずいっ!
「ジュエル! 従魔空間にもどれっ!!」
「うんっ! 宝石結界かけとくよ!」
危なかった、いきなりジュエルを攻撃するなんて……
何者なんだよ! 鑑定!
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神狼王フェンリル
△▽〇◇……
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まじかよ……
「まずいぞ、セシル!! こいつグラトニー以上に何も読み取れない! 俺達よりはるかに格上だ!!」
「なら一気に叩かねば! 私がやる!」
「いや俺も手伝う! 革命があるから足手まといにはならないはずだ。いくぞっ」
セシルが見えないほどの速さで剣を降り下ろす。
俺も負けじと神出鬼没で後ろに回り込み一閃。
だがどちらもあっさり止められ、動揺した俺達は、すかさず振られたその大きな爪で弾き飛ばされる!
「ぐはっ!!!!」
「弱いな、話にならん。スライムは何かしていたようだな。さっきの消えた女、カーバンクルの臭いがした。宝石結界か? だがそちらの女はもう動けんだろう。お前の主が死ぬところを見せてやるっ! ふはははっ!!」
フェンリルのそんな声が聞こえた瞬間、体に衝撃が走り俺は意識を手放した。
死にたくねえなぁ……
「主ー!!!!!!!!!!!!」
セシルside
「主ー!!!!!!!!!!!!」
「ふんっ、死んだか。暴食とは言っても所詮力を扱いきれていない雑魚、あっさりしたものだ。では次はお前だな、安心しろ。すぐに主のもとに行かせてやる」
もうそれでもいいかもしれない……
私は主に生かされて今があるというのに、そんな恩人である主を守りきれなかった。死んで償うしかない……
しかしそのとき、ふとある疑問が浮かんだ。
主が死んだのにジュエルが従魔空間からでてこない? どういうことだ?!
「死ぬ覚悟はできたか?さらばだっ?! 何だっ、この気配は!」
フェンリルのそんな声が聞こえ我に返ると……主の体がゆっくり起き上がった。
そして形がどんどん変化していき、やがて黒髪の妖艶な美女に変わった。
「はぁ~、やっと出てこられたわ~しんどかった~。スライムに転生しちゃってあんなに弱かったのに、なかなか死なないんだもの! あの人そっくりでびっくりしちゃったわ。ところで……お久しぶりねフェンリルちゃん?」
「なっ、お前その魔力は……初代怠惰之王っ! 何故貴様が生きている! 四大天使の総攻撃で死んだはずでは……」
「あら、貴様だなんて。ひどい物言いね、私達と神達の戦いを震えながら見ていたくせに。前は見逃してあげたけど、アスタロトちゃんを閉じ込めているみたいだし今回はしっかり潰すわねっ!」
「うるさい! 質問に答えろ! 何故生きている!」
「簡単よ。死にかけたから人の魂に寄生しただけよ、あなたも怠惰が寄生する能力を持っていることくらい知ってるでしょ? 流石に寄生先の魂がまた暴食を継ぐとは思わなかったけど……」
どういうことだ?! 主に寄生していた? 初代ベルフェゴール?
また?
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
「どうしたの? 確か……セシルちゃん!」
「あなたは主に何をしたんだ?!」
「あー、心配なのね。この体の主は死んだわ」
「なっ!!!!」
「ああ、でも安心して! 死んでまもないから私の力で治すことができるわ。何個かスキルは消えちゃうけど」
「そっ、そうか……それなら良かった。恩に着る」
「いいえ、どういたしまして~。
「じゃっ! フェンリルちゃんは消しちゃいましょう! 空間超越魔法 『圧殺の手』」
それは一瞬の出来事だった……
ベルフェゴールが何かの魔法を唱えたとたん、フェンリルの体は上から押さえつけられているかのようにへこんでいき、やがて地面に赤いシミだけ残して消えてしまった。
「なっ……何をしたんだ……?」
「んー……分かりやすくいうとベルフェゴール特有の魔法、空間超越魔法の圧殺の手って魔法で潰しただけよ?」
……あの一瞬でそれだけのことをなしたと言うのか。
超越魔法……人間には届き得ない領域……
「しかしあなたは、序列6位のはずでは? 魔王の一人とはいえ何故そんなに強力な魔法が使えるんだ!」
「それは怠惰の罪を背負っているせいね。私のように怠惰を司る者は沢山眠る必要があるからあまり長く起きていると弱くなっていくのよ。ついでに暴食を司るあなたのご主人様なら大喰らいになるわ。まあそういうわけだから短期決戦なら序列は三位よ? 知られてないんだけどね。」
「!! ……そうなのか。説明ありがとう」
「それじゃ私は眠いからもういくわ。この体の子の魂だけ治しとくわね。空間超越魔法 『蘇生』 !! ……よし治った、流石あの人! あっ、あとこの子に 怠惰の力も練習すれば使えるようになるから、気になるなら今の代の怠惰に教えをこいなさい って伝えといてね! それじゃばいば~い!」
途端に人の形が崩れもとのスライム体に戻っていった。
「……う~ん、ここは?」
気になることは沢山あるが、ひとまず主が生き返った。
それだけで私は満足だ。
「あ~る~じ~っ! おがえりだざい~……」
気がつくとフェンリルはいなくなっており、目の前には泣き顔のセシルがいた。
「ちょっ! 落ちつけ! フェンリルはどうなったんだ? 俺達は無事なのか?」
「それば~あるじが~たいだの~……」
「ちょい待て! まず泣き止もうか?! 何言ってるかわかんねえよ!」
2時間後、何とかセシルを泣き止ませ、ジュエルと二人であれから起きたことを聞いた。
「そんなことがあったのかよ……初代ベルフェゴールか。」
しかし俺にベルフェゴールの魂が寄生している限り、二つも大罪の能力が使えるわけか。これは是非とも今代の怠惰の王に教えをこわねば……
「とりあえずなんとかなったならいいか! 最後の階層にその……アスタロトさん?だっけ、閉じ込められてんだろ。助けに行こうぜ。」
「そだね~、いこいこ~!」
「そっそうだな、いくか。」
俺達はベルゼブブ最後の階層への階段を下り始めた。
?????side
「あっ! クックックッ、ハッハッハ!」
「王よ、どうかなさいましたか?」
「ククッ、ついにベルゼブブクリアだってさ!」
「へっ? あっ! 失礼しました! しかしまだ挑戦を始めて三年足らずでは?」
「そうなんだ! まだ三年たってないんだよ! 強欲の中でも歴代最強と名高い現皇帝7代目マモンでも四年ちょっとはかかったってのに、それより段違いに難しいダンジョンを三年かからずって……ククッ、だめだ、笑いが止まらない」
「才能のかたまりですね……、しかし九階層には四大天使の眷属であるフェンリルがいたはずでは? あやつは私でも本気を出さねば倒せるか怪しいですよ。」
「そう、そこなんだ! 僕の笑いが止まらない理由はさっ! 前に知ってる魂が二つあるっていったでしょ? そのもう片方の魂ってのが初代怠惰之王、つまりベルちゃんだったのさ!!」
「はああーーーー?! はっ! もしやベルフェゴール様の寄生ですか?!」
「あったり~! 面白いよね、三代目は暴食と怠惰、どっちも使えるようになるってことだ。いつか僕を越えるかも! 神魔大戦ではとっても頼りに出来そうだよ。多分ダンジョンでたら、旅とかしたいだろうから少し間を開けてから会いに行こうか。」
「わかりました。全ては王の、魔王ルシファー様のために!!!!」
次の次に、ついにダンジョンを出ます。
読んでいただきありがとうございます。
神託から2年たっているはずなのでずれを直しました
ストックをためずに書いているのでおかしな点が多いかも知れません ごめんなさい おかしな点がございましたら言ってくださると幸いです