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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第一章 剣に転生した兄妹
8/61

聖剣になった私(04)


 †††


 勇者に認められたセラと一緒に、私は王城に来ていた。

 ここでこの国の王様に会うんだね。勇者と言えば、やはり王様から出立金が渡されるものだもんね。武器はまあ、私を持ってくから、某木の棒を持たされることはないとして。


 真っ赤な絨毯の敷かれた謁見の間で、セラはかなり緊張しているようだった。私は今、セラの腰から提げられているんだけど、がちがちなのが伝わってくる。

 騎士さんもセラの緊張がわかるのか、声をかけた。


「セラ殿、そう心配せずとも、心配はない」

「す、すみません……田舎者なもので、この様な場では、失礼がないかと不安で」

「陛下は優しい方だ。わかっておられる」


 そうそう大丈夫。勇者は田舎の村の出身って相場が決まってるから。


 セラに言う、騎士さんの表情は穏やかだ。本当にこの国の王様はいい人みたい。


 しばらく待っていると、王様が入ってきた。くるんとカールしたヒゲを生やし、王冠をかぶった王様は、トランプのカードに描かれているような、いかにも王様って感じのおじさんだった。


 王様はセラを見て、一瞬きょとんとした。多分、勇者が女性だと思わなかったのだろう。王様はセラに尋ねた。


「セラ……といったな。そなたには、聖剣に選ばれた勇者として、危険な旅を命じるが、構わぬか?」

「はい! 勇者に志願した時から、覚悟しております」


 セラははっきりと答えた。一方、私はちょっと考えてしまっていた。

 そっか、そうだよね……聖剣は人間にとっての貴重な宝物、最終兵器的なもののはず。それを持ち出してきたってことは、これからセラは戦いに行くことになる。

 女の子が選ばれたことで、王様が心配するのは当然かもしれない。

 ここは、私がしっかりとセラを守らなくちゃ。


「そうか……しかし、そなたが聖剣に選ばれたのは事実。では、そなたには魔族との戦いに備え、魔道具集めを命じる」


 ……魔道具集め?

 いきなり魔王を倒しに行かなくていいのか。あ、これは、「勇者の最初の仕事はおつかい」的なパターンですね、わかります。

 しかしセラは、王様に尋ねた。


「魔王を倒しに行くのではないのですか? ……あっ、すみません」


 王様に口答えしたみたいだと思って、セラは慌てて謝るが、王様はよい、とセラに言った。


「そうじゃな、まずは魔王の動向について、説明せねばならないな……」


 やった!

 この世界に転生してから、人に話を聞くこともできなかった。情報が欲しかったんだよね。

 王様に目配せされた騎士さんはセラに話し始めた。



「近年、魔族が、国境周辺の村を襲っている話は知っているかな?」

「はい……」


 セラは、明らかに辛そうな表情をした。何だろう。

 騎士さんは、セラにこの世界の地図を見せてくれた。どうやら私達がいるのは大きな大陸のようだ。形は概ね、丸くて、やっぱりゲームみたいだなあと思ったり。


 南側が人間の領土、北側が魔族の領土で、その境界には「遺跡地帯」という、どちらにも属さない部分があるようだ。


「人間と魔族は、かつて長く争っていた歴史がある。しかし、二百年ほど前、我らの祖先は、互いに遺跡地帯に踏み入らず、不干渉とすることを決め、一切の交流を断つことで、戦争に終止符を打った」


 ふむふむ。一応、和平は結んでたのか。


「しかし、近年、魔族側はその均衡を破り、遺跡地帯を荒らすばかりか、我らが人間の国に攻めてくるようになったのだ。ゴーレムに、村が一つ滅ぼされたのは、記憶に新しい……」


 ぐっ、とセラが拳を握りしめた。

 王様が話を続けた。


「魔族は、魔道具を集めているだけでなく、魔剣を持ち出したとの情報もある。大きな力は争いを招くが、魔族に遅れを取るわけにはいかぬ」


 おお、魔剣!

 これは、聖剣のライバル的存在!

 やはり、勇者と魔王、聖剣と魔剣はワンセットなのね。


「……魔剣、ですか」


 セラも真剣な様子だ。


「いざという時は、国をあげて戦うこともあるかもしれぬが――争いになれば、多くの民が傷付き、土地も荒れる。できれば、戦争は回避したいと考えている」


 王様は穏やかに言う。


「だから、まずは人間領に一つでも多くの魔道具を確保するのだ。それが争いの抑止力となれば良いのだが……」


 ふむ、魔族は邪悪だから成敗する――なんて単純な話じゃないのね。

 セラも納得したらしい。


「……わかりました、魔道具を集めてきます」


 セラが真っ直ぐに、王様の目を見て言ったその時だった。



「どもっす! 呼ばれてやってきましたー、やっと勇者が選ばれたんすね!」


 緊張感のない声が、突然割り込んできた。

 声の方を見ると、弓を背負った若い男の人が、にへら、と笑ってそこにいた。


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