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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第五章 最終決戦
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最後の戦い(01)


 セラはノエルを片腕に構えたまま、宙に立っている。今は、俺の風魔法で浮遊させている。


(お兄ちゃん、大丈夫?)

(助かった……だが、どうするか)


 何しろ、目からビームを出しやがる。


「聖剣か魔剣、どちらかだけでも、ラプラスゴーレムに届けば……」


 ぐっ、とセラが聖剣を持つ手に力を込めた。ラプラスはお構いなしに、口をがば、と開いた。何やら赤い光みたいなものがどんどん集まっていく。


(破壊光線が来る!!)


 すぐさま、風を操って上空に逃げる。


(……お兄ちゃん、ラプラスの真上に行って!)

(分かった!)


 俺はラプラスの真上に逃げるが、ラプラスの首はぐりん、とありえない方向に曲がり、俺達を追う。


「ノエル!」


 ラプラスの真上まで来た時、セラは抱えていたノエルを前に突き出すように投げた。前に向かって飛び続ける俺の風魔法の範囲から外れ、セラと伊織は真っ直ぐにラプラス目掛けて落ちていく。


「セラ!?」

(ちっ……無茶しやがる!)


 防御性能なら、聖剣の方が上だ。対して空中の機動力は、空を自由に飛べる魔剣の方が上。

 セラと伊織は、破壊光線を発射しようとするラプラスに、真っすぐ上から突っ込んでいく。


(俺達も行くぞ!)

「う、うむ、うわああ!」


 旋回からの、ターン、急上昇。俺とノエルは、戦闘機のようなアクロバティック飛行で、ラプラスに斜め下から迫る。

 だが、ラプラスの頭は三つある。残り二つの首がこちらに向き、レーザーを放った。


(奴も恐らく全方位が見えてるはずだ、死角はない!)

「あ、あう」


 ノエルは返事をする余裕がない。さっきからジェットコースターなどの比ではないほど空中を振り回されているからだ。悲鳴をあげてないだけ偉い。


「はあああ!」


 セラが思い切りラプラスに聖剣を降り下ろすが、あと数メートルというところで、ラプラスの口から巨大な赤い光線が放たれる。


(う……うりゃあああ!)


 伊織が、渾身の力を振り絞ったような声を上げた。こちらまでバリバリと振動が伝わるほどの衝撃だ。あの結界の能力を持ってしても、簡単には防ぎきれないのか。


「イオリ、耐えて……!!」


 光線に飲み込まれ、姿は見えないが、苦しげなセラの声が確かにした。

 くそ、こっちはこっちで、二つの頭の両面から発射される、計四本のビームを避けながらだから、簡単に近付けないんだ!


 だが――さらにラプラスゴーレムの六本の腕が、ガチャガチャと奇妙な動きを始め――その手の上にそれぞれ、炎を生み出す。その炎が、赤い光線の中のセラ目掛けてぶつけられ、大爆発を起こした。


「ケンゴ!」

(ああ!)


 ラプラスに近付くのを止め、俺達は吹き飛ばされたセラと伊織に向かって飛ぶ。ノエルの小さな手が、どうにかセラの手を掴み、俺達は空中に再び静止した。


「あ……ありがとう」


 セラは、荒い息をしていた。あちこちから血を滲ませ、服もボロボロだった。だが、あれほどの攻撃を受けて、この程度の傷で済んだのは、やはり聖剣の力なのだろう。


(強すぎるよっ……!)


 伊織は嘆くように言う。だが、諦める訳にはいかない。


(大丈夫、勝てるはずだ……!)


 俺は、伊織やノエルに、何より自分に言い聞かせるためにそう言った。

 相手は強いが、勝てるはずだ。かつて、ロイバンシュビッチとシャデラリーゼルの二人がかりで、ラプラスと戦って封印してるんだから、やれないことはない。


 だが、そんな俺達を見透かすように、ラプラスは絶望的な言葉をこちらに投げる。


『あなた達が私を破壊する可能性を計算――あなた達は私に勝てません――』

「何を言うか! お前は一度負けているのだぞ!」


 ノエルが噛みつく。


『確かに、過去、ロイバンシュビッチとシャデラリーゼル、魔剣、聖剣の四つの魔道具を合計した戦闘能力は、私を僅かに上回りました。しかし、今対峙しているのは魔剣と聖剣、そしてゴーレムより遥かに劣る人類が二人。加えて私は、個体シャデラリーゼルの人工魂を取り込み、計算性能を上げています』

(……なんだって?)


 ラプラスが、シャデラリーゼルの魂を取り込んでいる?


「確かに……人工の魂は同化する可能性が高いって、ロイバンシュビッチも言っていた……」


 セラは呆然と呟く。

 ラプラスは、冷たい機械仕掛けの声で、淡々と告げる。


『あなた達、人に選択肢はありません。脆く、壊れやすく、過ちを犯す、魔道具より遥かに劣る存在は、世界のために消えるべきなのです。理想の世界のために、消えるのです』

「そんなこと……!」

『いいえ。現にあなた達は、私に今ここで劣っています』


 ――誰も、何も言い返せない。

 傷一つなく、こちらを見下ろすラプラス。対してこちらは、疲労し、傷付いている。


(そんなのない……だからって、みんなみんな、殺していいはずない!)


 伊織の言う通りだ。

 だが――俺達は反撃できないでいる。

 ラプラスがこちらに、三対の冷たい目をむけた。俺と伊織は、それぞれの能力で対抗しようとした、その時――



「――ラプラス!」


 突然、黒い人影が、俺達とラプラスの間に割って入った。


 ロイバンシュビッチだった。だが――何だ? どうにも何だか、違和感がある。


(ねえ、何か……怒ってない?)


 同じ違和感を、伊織も感じていたらしい。

 あの冷徹とも言えるほど無表情なロイバンシュビッチが、怒りをあらわにしていた。


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