悪魔の復活(03)
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ラプラス目掛けて飛び立った俺達だが、空中に向かうというのは、ラプラスが作り出すゴーレムの群れに突っ込んでいくということだ。
行く手をゴーレムが阻み、避けながら進んでもなかなか近付けない。
「くっ……邪魔で飛べぬ!」
(囲まれる訳にはいかないぞ……)
風魔法でいくつかは打ち落とせたが、あまりにも立ち塞がるゴーレムが多すぎる。
何とかならないか――周囲を見渡すと、地面で巨大な赤い旗を振っているのが見えた。
(ノエル、あれは!?)
「あれは魔道砲台! ケンゴ、一度下りてくれ!」
(分かった!)
ノエルの体を風で包んで守りながらも、急降下する。地面には大きさが3メートルはありそうな巨大な弓が設置されていて、矢もないのに、その弦を兵士が数人がかりで限界まで引いていた。
弦が放された――と、同時に弓から巨大な炎が発射される。
それは上空から迫るゴーレムの群れを飲み込み、燃やし尽くした。
†††
「第二弾、構え――撃て!」
地上の魔族軍は、所有する魔道具の中でも、最大火力を誇る魔道砲台を、惜しみ無く撃ち続けた。
さらに砲台の範囲外にいたゴーレムを、歩兵が二人一組となり、弓矢で撃ち抜く。
「矢を運べ、撃て!」
キースもまた、弓を引き絞っていた。愛用している幻惑の弓ではなく、魔族軍から支給された普通の弓矢を背負い、魔道砲台を狙おうと近付くゴーレムを撃ち抜いていく。
「ゴーレムは再生する! 破壊したゴーレムは火をつけて砕け!」
魔道砲台の炎で燃やしたゴーレムが再生されないことを確認していた隊長は、軍全体に指示を出す。
戦場は、炎と煙に包まれ、まさに地獄絵図だった。
「前からもゴーレムの群れが来ます!」
「……空からでは撃ち落とされるのを危惧して、下りて歩いてきたっすか……」
キースはぎり、と奥歯を噛む。
「隊長、陣形を変えますか」
「いや――」
魔族軍の隊長は、空に浮かぶラプラスと、それを守るように未だに作られるゴーレムを見た。
「空への射撃を緩めるな!!」
雑魚をいくら倒してもキリはない。だからこその、苦渋の判断だった。
「ケルン様がいない状態での、白兵戦は厳しいぞ……」
誰かが呟く。それでも、戦わなければならない。
「行くっすよ!」
キースは、空になった矢筒を捨てる。腰の剣を抜いて、数人の兵士と共に駆け出した。
†††
「ケンゴ、戻ってくれ!」
(駄目だ!)
俺はゴーレムの合間をスラロームのように飛び、ラプラスへと向かう。
上空から見たら戦況がよく分かる。魔道砲台が立て続けに撃ち込まれた後、ゴーレムが地上からの攻めに転じた。そこから、魔族軍はかなり押されていた。
理由ははっきりしている。前の守りよりも、空への攻撃を優先したからだ。
ノエルの道を開くために。
涙目のノエルの気持ちは分かる。分かるが――だからこそ行かなくてはならない。
(今戻れば、みんなの戦いが無駄になる! あの魔道砲台ってやつだって、そう何発も撃てないだろ!?)
ああいうMPをバカ食いしそうな大技は、撃てるのは数発と相場が決まっている。
「分かっている、我にも聞こえるのだっ……!」
魔王様のために、と自分達を鼓舞して戦う、兵士達の声が。
その肩にのしかかる重圧が、ノエルを苦しめるのも。
(大丈夫だ、俺がついてる、必ず勝つぞ!)
「……うむ!」
向かってくる雑魚ゴーレムを空気砲で撃ち落とし、俺達はラプラスの前に対峙した。
「――我が名は魔王ノエル! ラプラスゴーレム、お前を倒す!」




