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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第五章 最終決戦
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悪魔の復活(01)


 †††


 シャデラリーゼルは、遺跡の搭の上に立ち、はるか下に広がる大地を見渡していた。

 金に光る無表情の瞳は、遠く先から進んでくる、人間と魔族の両軍を見つけた。

 何度となく見た光景。争い続ける、愚かな人々。


 まあ、今のあの両軍は、自分を――ラプラスを破壊しに来ているのだが。


「……。」


 無言で、シャデラリーゼルは搭の頂上から、身を踊らせる。

 凄まじい速度で落下しながらも、猫のようにしなやかに着地した。

 着地した目の前には、シャデラリーゼルが修理したラプラスの器、ラプラスゴーレムの中心部がある。

 掘り起こし修理したラプラスゴーレムは、三つの頭、六つの腕を持つ人の形をしている。


「――ラプラスを破壊するなど、それこそ愚かな事」


 ここまで、長い道のりだった。


 停戦したことで、魔剣と聖剣に、新たな人の魂が供給されなくなった。

 シャデラリーゼルは、遺跡地帯に眠るラプラスの器を修理し、ラプラスの魂の封印が解けるのを待った。

 誤算だったのは、停戦からいくら待っても、ラプラスの魂が解き放たれなかったことだった。

 シャデラリーゼルの計算では、二十年も待てば、封印に使われた人の魂が霧消し、ラプラスの魂はそれぞれの剣から自由になる想定だったのだが。


 仕方なく、シャデラリーゼルは再び動いた――魔剣と聖剣を破壊し、強制的に魂を解放することにしたのだ。

 そのため、意図的に魔族と人間の対立を引き起こした。双方に不安を煽る噂を流したり、村をゴーレムに襲わせた。魔族の青年を人間の街に拉致したのも、全ては戦争の引き金を作り出すため。それにより、シャデラリーゼルの思惑通り、魔族は魔剣を、人間は聖剣を取り出した。


 それぞれの剣を破壊した今、二つに分かれた魂は、元の器である、ラプラスゴーレムに宿る。後は、ラプラスを再び起動させるだけだ。


「…………。」


 もう、迷いなどない。すべてが完璧で、調和の取れた、理想の世界を作るその最後の一手――シャデラリーゼルは、ラプラスゴーレムの胸の楔を、強く押し込んだ。


 瞬間、遺跡地帯全体が揺れ――地面に巨大な魔方陣が赤く光る。

 それからゆっくりと、ラプラスがその中心の瞳を開いた。


『再起動を確認中――完了しました』

『魂の欠損を修復中――完了しました』

『情報を集めています――確認しました』


 抑揚のない声で語り続けるラプラス。

 シャデラリーゼルはその前に跪いた。


「ラプラス、あなたがその、最高の知識と計算で、かつて描いた理想の世界を、構築するがいい」


 シャデラリーゼルの声に、ラプラスは答えることなく、ひたすらに計算を続ける。


『私はラプラス――世界を楽園に導くもの』

『世界の最適化を開始します――情報の不足を確認しました』

『世界の最適化に必要な最新の情報が不足しています』


 ギギ、とラプラスは左の首を動かし、瞳をぎょろりと動かした。


「……情報の不足?」

『私が活動停止に陥り、607年50日3時間12分5秒が経過――世界の情報の深刻な欠落が危惧――解決方法を確認中――解決』


 言うや否や、ラプラスは凄まじい速度で腕を振り上げ――シャデラリーゼルの胸を突いた。

 ガラスの割れるような音と共に胸に穴が開き、シャデラリーゼルはその場に崩れる。


『個体シャデラリーゼルの人工魂の結合による情報の取得を実行中――実行しました。世界の最適化の再計算を実行――完了しました』


 右の頭もかっと瞳を開き、ラプラスは六本の腕を高く掲げた。


『種族:人の殲滅を開始します』


 †††


 遺跡地帯に向かって進んでいた俺達魔族軍は、急な地面の揺れに足を止めた。


「じ、地面が揺れたぞ!」

(なんだ、地震か?)


 日本人である俺の反応は薄いが――ノエルや周りの兵士達の動揺を見る限り、この世界では珍しいのか。


 だが、キースが遺跡地帯を指差して大声をあげた。


「あれを見るっす!」


 遺跡の建物が、ばらばらになって宙に浮かんでいく。煉瓦ほどの大きさの瓦礫は、空中で近くの瓦礫とくっつき、何か形を作っていく。


「あれは、ゴーレム……?」


 分解された遺跡は、次々にゴーレムに形を変えると、こちらに進んできた。

 反対側――人間領の側にも無数のゴーレムが作られ、攻撃を始める。


「あんなに大量のゴーレムが……!」


 ノエルは怯む。だが、ここで恐れているだけでは、魔族を、未来を守ることはできない。


「――全軍、進撃開始っ!」


 ノエルの声が、俺の作った風に乗って伝わった。


「ラプラスだ」


 俺の隣で、ロイバンシュビッチが低く呟き、遺跡地帯の上空、ゴーレムが次々に生み出される場所の中央を指した。


 魔剣の俺の視力でもかろうじて見える大きさだ。奇妙な、人影のようなものが一つ浮かんでいる。


(あれが、ラプラスゴーレムか……?)


 最強のゴーレムという割には、小さいな。

 人間よりやや大柄な程度で、シャデラリーゼルやロイバンシュビッチと似て、人の顔をしていたが――三つの頭と六つの腕という異形の姿をしており、人と見間違えることはない。何となく、前世の仏像を思い出した。罰当たりか。


「油断はするな。魔道具であるラプラスは魔法を使い、またその器を破壊できるのはオリハルコンだけだ」


 ああ、分かってるさ。


「ケンゴ、行くぞ!」


 ノエルが俺を抜く。風が巻き上がる。

 俺とノエルは高く上空へ、ラプラスを目指して飛び立った。


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