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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第四章 忘れられた過去
48/61

俺は魔王の武器として(02)


 †††


 気が付いた時に最初に見えたのは、豪勢なシャンデリアだった。

 俺は寝てるのか? そう思って体を動かそうとすると――む、動かない。

 周りを見ると、俺を覗きこむ、ノエルの顔があって――俺は今までのことを思い出した。


(そうだ! あれからどうなったんだ!?)


 俺は折られて……いや、剣の体は、しっかりとくっついている。その上、見覚えのない半月状の赤い宝石が、刃と柄の部分にそれぞれ嵌め込まれている。


「ラグナロク……意識はあるか? あれば、返事をしてくれないか?」


 返事か……弱い風を操って、ノエルの髪をふわりと揺らした。


「そうか……意識、戻ったのだな」


 涙ぐむノエル。心配かけたのか、すまん。

 ノエルの後ろにいたキースとロイバンシュビッチが、俺に近付いてきた。


「やはり意識があるのか。驚いたな……」

「ここは魔王城っす。折れた魔剣さんは、ロイバンシュビッチが直したんすよ」


 折れた魔剣。

 それを聞いて、一気に記憶が呼び起こされる。やはり俺は折られたのだ。

 あの後、村は!? いや、俺の中に封印されたラプラスはどうなったのか。

 それに同じく折れた聖剣――妹はどうなった!


「魔剣に宿る魂よ、尋ねたいことがある」


 ロイバンシュビッチはそう言って俺の柄に触れた。それにノエル、キースも何故か俺に触ってくる。


(ああもう何だよ、聞きたいことが山程あるのはこっちだっつーの!)


 ノエルがびくっと震え、目を丸くした。


「あ、あう」

「……あ、えっと、それは、申し訳ないっす」


 ……ん?

 キースが今、俺の心の声に返事したような。


「魔剣ラグナロクに宿る魂よ、今、その剣には心運びの石という魔道具を組み込んだ。剣の柄に触れている者は、お前の声が聞こえる」


(な、何だと!? 修理されている間に、テレパシーが使えるよう改良されたのか!?)


「てれぱし……とは、何なのだ?」

「さあ……想像してたより、気安い感じなんすね……」


 ノエルとキースが顔を見合わせた。


(俺、ノエルやキースと年はそんな変わらないよ)

「そんな訳は……ラグナロクは古代から代々の魔王に伝えられていたのではないのか?」

(いや、剣自体は昔からあったのかもしれないけど。俺、前世でまだ若かったから)


 改めて考えると、俺、まだ男子高校生だったな……。


「ぜんせ?」

「この魂、知らない言葉を使う――尋ねたいのは、お前の正体だ。お前の魂は何者だ?」


 ロイバンシュビッチが尋ねてきた。しかし、そんなこと言われてもな。


(俺だってよくはわからないんだ。死んで、気が付いたら魔剣に宿ってたんだよな)

「人なのか? あり得ない。人の魂が、こんなに長く自我を保ち、霧消しないなど」


 魂の霧消。その言葉を聞き、俺は思い出した。

 人の魂は、輪廻転生の理により霧消する。だから、ラプラスの魂を封印するための人の魂を、戦争によって供給する必要があったと。


(――俺の魂は、多分、輪廻転生しないんだと思う)

「何だと?」

(俺はここから違う世界から来た魂なんだ。何でかはわからないけど)

「違う世界……?」


 三人とも訳がわからないという顔だ。

 まあ、それはそうだよな。自分が実際に全然違う世界にいるから納得するしかないが、異世界の存在をあっさり理解する方が難しい。

 兄妹で、異世界転生ファンタジーはよく読んだからな……。


(俺はこの世界の人じゃないってこと。だから輪廻転生のシステムってやつに組み込まれてないんだろ)

「しすてむ?」

「……信じ難いが、認めるしかないようだな」


 いちいち俺のカタカナ語に首を傾げるノエル。正確な内容が伝わったかどうか怪しいが、一応は納得してもらえたようだ。


「聖剣さんの意思もそうなんすかね……セラ達が確かめてるはずっすね」

(聖剣に宿ってる魂も俺と同じで、違う世界の魂だ。それより、あいつ直ったのか!?)

「あ、それは直ってるっす。今はセラとケルンさんと人間領に向かったっす」


 良かった……。

 俺自身がこうして修理できているから大丈夫だったんだろうが、改めて聞くと安心する。


「聖剣さんと、知り合いなんすか?」

(ああ、俺の妹だよ)

「ええーっ!?」


 ノエルは驚いた。


「聖剣は女性だったのか!?」

(……驚くとこ、そこかよ。持ち主の勇者だって女だし)

「確かに……」


 ん、なぜかキースが苦笑しながら、明後日の方を向いている。どうした?


「知りたいことは分かった……成程な。お前に尋ねたい」

(……何だ?)


 ロイバンシュビッチはさっきから俺に尋ねてばかりだ。

 無表情で、淡々とした調子で、ロイバンシュビッチは何てことないように俺に聞く。


「この世界を、救う気はあるか?」


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