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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第四章 忘れられた過去
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私は勇者の武器として(06)


 玄関先で話す内容でもないので、私達はファーラさんに家にあげてもらった。

 中に入ると、子供が二人、部屋で遊んでいて、こっちを振り向く。


「おきゃくさんだー!」

「おきゃくさんだー!」


 男の子と女の子。どことなく癖っ毛で、キースに似てる。多分、弟妹なんだろう。


 無邪気に駆け寄ってくる子供に戸惑うケルンさん。対して、セラは笑顔で受け止める。おねえちゃん、と呼ばれた時に、セラの表情がまた強張ったけど。


「母さん達は大事な話があるから、向こうで遊んでなさい」

「はーい」


 子供たちは素直でいい子だ。

 あの子達のためにも、さあ、頑張らないとね!



 セラは私――聖剣を抜いて、ファーラさんに見せた。ロイバンシュビッチに、柄と刃に、半円状のくぼみを彫ってもらっている。


「心運びの石を頂きたいんです」


 キースの手紙を読み、セラとケルンさんから事情を聞いたファーラさんは頷いた。


「そういうことなら、お譲りしましょう。……今、主人もこっちに向かっています」


 そう言ったファーラさんは、胸元に手を入れ、小さな半円状の、青い宝石みたいな石を取り出した。


「心運びの石は、対となる石を互いに体に触れあわせた状態でいる時、相手に伝わるよう念じた心の声が相手に聞こえるというものです。今、これを使って主人に呼び掛けていたので、すぐに来ます」


 なるほど、旦那さんとペアで、常に肌身離さず持ってるんだね。


「すみません、大切なものを」

「いえ、今は私達夫婦は、いつでも会って話せますし――本当に大切なものは、この子達ですから」


 旦那さんの石を待っている間、ファーラさんはケルンさんに、ファーラさん自身が今までどうしていたのかを話した。


「主人は、歴史学者なの。魔族と人間の戦争の歴史を調べるうちに、不審な点があることに気付いた彼は、魔族側からの記録を調べるため、こっそり魔族のフリをして魔族領に来たのよ」


 旦那さん、ガッツあるね……。

 ちなみに、歴史における不審な点っていうのは、シャデラリーゼルの介入のことだと思う。彼女は、戦争をコントロールするために、歴史の裏で暗躍していたわけだから。


「そこで私と出会って、私達は恋に落ちたのだけれど……人間との結婚に反対された私は魔族領を出たの」


 名家のお嬢様だったファーラさん。体面もあり、対外的には、人間にさらわれたことにされたという。


「姉様、なんて無茶を……!」

「だって私のお腹にはもう、キースがいたのだもの」

「…………。」


 なんか複雑な顔をしてるケルンさん。うん、まあ、身内の恋バナって恥ずかしいよね。

 お兄ちゃんに浮いた話はなかったから、経験はないけど……。


 そんな話をしていると、玄関のドアが勢いよく開いた。癖っ毛の眼鏡をかけた男の人が、息を切らしている。

 キースは父親似なんだな、と思った。


「はあ、はあ……話を聞いて、びっくりしたよ、ファーラ」

「あなた。心運びの石は――」


 旦那さんは、懐から、ファーラさんが持っているのとまったく同じ青い石を取り出した。


「君が勇者か。うちの息子が世話になっているね。ところで、石はどうしたらいいんだい?」

「こちらの、聖剣様の窪みに嵌め込んでください」


 そうして、私の刃と柄に、それぞれ青い宝石が嵌め込まれた。

 ちなみに、私と会話するだけなら、刃の方にだけ石を嵌め込んでもらって、もう片方は相手が持っているだけでいいらしい。

 わざわざ柄に嵌め込めるようにしてもらったのは、剣として、戦闘中に持ち主と会話することが自然だろうという配慮だった。


 とにかく、これで、やっとセラと話ができる。

 セラ、ケルンさん、そしてファーラさん達が私の剣の柄に嵌まる宝石に触れたのを確認し、私は念じた。


(……聞こえるかな? 私だよ、セラ)

「聖剣、様……? はい、聞こえます、聖剣様のお声が」

(改めて、はじめまして、かな)


 伝えたいことはたくさんある――だけど、真っ先に私は、教えなきゃいけないことがある。

 この世界を、救うために。


(私の魂はこことは違う世界――異世界から来たの。私は、転生者なんだよ)


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