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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第四章 忘れられた過去
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私は勇者の武器として(05)


 †††


 セラとケルンさんは、人間領に向かって全力疾走していた。


 いやもう、速いのなんのって。

 セラは私の能力――結界でセラを包んで、周囲を弾くことで、エンジンをつけたように脚力が上がる技――(なお、この技は勇者モードと命名)にて、ガンガン走っていく。

 まあね、ちょっと地面を蹴ったら、数メートル軽く飛ぶからね。


「助かります、聖剣様!」


 いやまあ、元々運んでもらって助かってるのはこっちだからね。


 で、それにケルンさんが猛ダッシュでついてくる。

 本当に、ケルンさんは凄すぎる。

 魔道具の鎧の効果で疲れないから全力疾走を続けても平気と言っていたけど、そういう問題じゃない。


 やたらでっかい荷物を下ろしたら、とんでもないスピードで走るようになった、この人。あれは修行のための重りだったんじゃないかと思ったほどだよ。



 そんな訳で、私達はあっという間に、遺跡地帯前の”遠見の村”に到着。

 ソンタさん達に事情を説明、すぐに避難してもらう。遺跡地帯に近い村ほど、危険だからね。


 さらに、ここで私達が回収した、双子水晶の片方を貸してもらった。


「もう片方は、魔王城に届けてください」


 そう頼み、覚悟して遺跡地帯を通った。

 あの白い少女――シャデラリーゼルや、彼女の操るゴーレムに襲われることも警戒していたけど、何もなく通り抜けることができた。


「何もないのが、却って不気味ですね……」

「魔剣、聖剣それぞれの封印を解いた今、奴は、我々を気にかけてはいないのだろうな」


 遺跡地帯をくまなく探せば、シャデラリーゼルや、ラプラスゴーレムを見つけることもできたかもしれないけど、お兄ちゃんが修理中のため、戦闘力が足りない。今は戦闘を避け、とにかく人間領に急いだ。



 そして、人間領の街、”煉瓦の街”に到着。

 ここでも、街の人達に避難を指示した。

 金色に輝くオーラをまとった勇者モードのセラは、持ち前の美人さも合わせて、尋常でないカリスマを発揮。街の人達は素直に従ってくれた。


「勇者様! 私達の街をお守りください!」

「勇者様!」

「あ、えっと……」


 街の人に囲まれて、セラが困っていたので、勝手に輝いた。


「聖剣様……」


 セラは仕方なく、私を掲げた。



 熱烈な声援を後にして、私達は王都へ向かった。

 ”忘却の村”を出発して六日、走り通して、私達は”光の都”に到着した。


「さすがに疲れましたね……」


 セラはぐったりとした様子で、門をくぐった。

 ケルンさんは頷く。


「魔道具の補助があるとはいえ、決して楽な旅ではなかったろう。女性の身でよく頑張った」

「……え?」


 セラが固まる。

 私もびっくりしていた。もしかして、ケルンさん、ここまで一緒に生活して、まだセラを女の子だと勘違いしている……?


「あ、あの……僕は……」


 さすがにショックだったのか、がっくり落ち込んで、自分の性別を明かせないセラ。

 ドンマイ……。


 そんなセラを放っておいて、ケルンさんは懐から手紙を取り出した。

 キースが、この都に住むお母さんに宛てた手紙だ。


「住所はこの辺りのようだが……」

「案内します……」


 ふらふらと歩くセラは、ぼそっと呟いた。


「ケルンさんみたいに男らしく、逞しくなりたい……」

(い、いや勿体ない! セラはそのままが素敵だよ!)



 私達は、キースの家についた。

 可愛いお家だな、というのが私の第一印象。窓際には花が飾られ、中から子供の声がする。


「すみません、ファーラさんはいますか?」


 セラが玄関の扉を叩いて呼び掛けると、すぐに返事があり、エプロンをした女の人が現れた。


「はい、どなたかしら?」


 笑顔で出迎えてくれた女性に、ケルンが恐る恐る尋ねる。


「姉様……姉様なのですか?」

「……ケルン?」


 ファーラさんは、目を丸くしてケルンさんを見つめていたが――やがて、よく来たわね、と微笑んだ。


「ああ、姉様、ご無事で……!」

「一体どういうことなのかしら。それにあなたは?」


 ファーラさんがセラを見る。セラが、キースの友人だと名乗ると、嬉しそうにするファーラさん。


「まあまあ、キースも隅に置けないのね、こんな可愛らしい子がお友達なんて」


 ……ファーラさんも、セラが女の子だと思ってるよ。

 セラはもう自分が男だと言うのが面倒くさくなったのか、誤解されたまま話を進めていく。


「すみません、姉弟の再会に水を差したくはないんですが……急ぎの話があるんです」


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