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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第四章 忘れられた過去
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私は勇者の武器として(04)


 会話をする方法があるの!?

 私は驚いてピカピカ輝く。


「方法……?」

「魂であるならば、その剣に魔道具を組み込むことで対話が可能となるはずだ」


 な、何と!


「心運びの石という魔道具がある。楽園では多く作られた魔道具の一つだが――手に入るか?」


 心運びの石……テレパシーみたいなのが使える魔法の石なのかな。


「あ、俺の母さんは持ってたっす!」

「キースのご両親は今どこに?」


 キースは頭をぽりぽり掻いた。


「……非常事態だから言うっすけど。”光の都”っすよ」

「それって、王都じゃないか?」


 そうだ、私達の旅の始まりの場所。あれ、ケルンさんが何故か驚いた顔をしている。


「そんな人の多いところで……!?」

「隠れるなら、むしろ人の多い街の方がいいって、考えたらしいっすよ」


 セラが私を腰に差して立ち上がった。


「じゃあ、今から人間領に向かおう。ラプラスのことも王様に知らせないといけないよ」

「待て。その聖剣に、心運びの石が組み込めるよう、細工しなければならない」


 ロイバンシュビッチに止められ、セラはちょっと顔を赤くして、私をロイバンシュビッチに差し出した。


「……心運びの石ならば、魔王城にもあるぞ」


 ノエルちゃんが小さな声で言った。


「そっちは、修理した魔剣さんに組み込んだらいいんじゃないっすかね?」

「うむ……」


 元気ないな、ノエルちゃん。……大丈夫かなあ。

 お兄ちゃんはノエルちゃんを慰めたって言ってたっけ。やっぱり、魔王のパートナーは魔剣だよね。ノエルちゃんのためにも、早くお兄ちゃんには直ってほしい。



 それから。

 私は加工されながら、今までの事情を聞いた。そして、みんなで――まあ、私はほぼ話し合いには参加できなかったけど――色々話し合った。

 結果、セラと私、ケルンさんが人間領の王都へ。

 ノエルちゃんとキース、ロイバンシュビッチがお兄ちゃんを運んで魔王城へ向かうことになった。


 何故この組み合わせかというと、色々理由がある。

 まず、人間領に向かう方が遠くて危険だから、ということ。


「セラと聖剣さんなら、遺跡地帯でゴーレム達と戦闘になってもどうにか出来るし、素早く移動できるっす。で、体力的についていけるのは、ケルンさんくらいっすからね」

「キースは怪我をしてるしね……」


 加えて、ラプラスに対抗するために、人間と魔族の共闘を呼び掛けた方がいいということになった。ケルンさんは、魔族側の使者としての役割があるのだ。


 お兄ちゃんを修理しないといけないロイバンシュビッチは、ノエルちゃんと共に魔王城へ。さらに、ロイバンシュビッチは、戦えないノエルちゃんやキースの護衛も兼ねていた。


「オリハルコン製のゴーレムでない限りは、俺が倒せる」


 とのこと。

 うーん。いや、素手でカンカン金属を叩いてるから、生身の体ではないだろうとは思ってたけど、まさか彼がゴーレムとは。


 ノエルちゃんが魔王城に帰るのは、非常事態に備えて、魔王が城にいる――という以上の意味があった。

 ノエルちゃんは、だいぶ疲れているみたいだった。そうだよね。だってまだ、私より小さい女の子だもん。

 一度ゆっくり休むという意味でも、帰った方がいいという話になったのだ。


「すまぬ、ケルン……」

「いいえ、姫様。後は私にお任せ下さい」


 そうして、私達はそれぞれ、出発した。


 †††


 キースは、ケルンから渡された大きな荷物を背負った。


「よっ……と」


 大きい上に、見た目以上の重さがあって、バランスを崩してよろめく。ノエルから力の手袋を借りたので、持ち上げられないわけではないが、うまく背負わないと、ひっくり返った亀になりそうだ。


「す、すまぬな、キース」

「いや、いいんすけど……」


 こんな大荷物、少女に背負わせるわけにいかない。

 キースは、ノエルと共に魔王城に向かうにあたって、ケルンの荷物のほとんどを託された。

 あまりに多いので、何かと聞けば、全てノエルの身の回りのものだという。


「マジ、あの人、ハンパないっす……」


 食料などの基本的な荷物に始まり、着替え、美味しい料理を提供するための調理道具に調味料。さらに屋外でも快適に眠っていただくための天幕、茶器まで、驚異的な収納技術でしまってある。

 ケルンはこんな大荷物を抱え、場合によっては更にノエルを背負い、旅をしていたのだ。

 ノエルは申し訳なさそうな顔をした。力の手袋なしでは、魔剣さえ持ち運べないノエルは、手ぶらだった。なお、魔剣は今はロイバンシュビッチが持っている。


「ケルンさんって、凄いっすね……」

「うむ。ケルンがキースの叔父だと聞いた時は驚いたが……」

「俺もびっくりっすよ。ということは、ケルンさんは、夜霧一族の人なんすね?」


 ノエルは頷いた。

 夜霧一族は、代々魔王に仕える名家だ。かつての人間との戦争では武功を挙げ、一族の者は今も武芸の鍛錬を積む習わしとなっている。


「そうか、キースの母上も夜霧一族ということになるのか」

「弓の腕前は半端ないっすよー」


 名家の出身だからこそ、キースの母は人間と駆け落ちするためには、自分を知るもののいない人間領に逃げるしかなかったのだが。


「夜霧一族は……ケルンも、ケルンの父上もな、父上によく仕えてくれて、皆、本当に優秀なのだ」

「そっすね……」


 ケルンを見ていたら分かる。強くて、料理も上手で、顔もいいとか何者だ。


「優れているがゆえに――我のような王に仕えさせて――心苦しいのだ」


 ノエルが、小さな声で呟く。キースは、ふと、気になっていたことを思い出す。


「……そういえば、ノエル様が魔王を名乗ってるってことは、先代魔王様は亡くなってるんすよね?」

「うむ、そうだが……」

「なんで、ケルンさんに姫様って呼ばれてるんすか?」


 幼い少女とはいえ、正式に即位したなら魔王様と呼ばれるべきではないのか。

 ノエルは、首を横に振る。


「即位はしている。だが、父上は立派な王であった……だから、皆には我のことは、王だと認められていないのであろう」


 俯くノエルの顔を、髪が隠した。キースは、かける言葉を失った。


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