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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第四章 忘れられた過去
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私は勇者の武器として(02)


 †††


 大鎌ゴーレムが、鎌と腕を失くしたことで、バランスを崩す。


「う、うわああ」


 片方の手から、子供が落ちてきたが、それは地面にぶつかる寸前のところで止まった。

 金色の球体のようなオーラで包まれている――明らかに聖剣の力だった。


 キースは素早く駆け寄ると、子供を抱え、急いで走り去る。

 ちら、と一瞬だけセラを振り返る。セラは、小さく頷いて、魔法の力で、空を飛ぶような速さで駆け抜けていく。


(つ、強すぎっす――セラ、というか聖剣さんが!)


 人間領で育ったキースは、一騎当千の勇者の伝承を聞いたことがある。聖剣に選ばれた勇者は、千の魔族を相手に戦ったとかなんとか。

 あれを見れば、それが誇張でもなんでもないと分かる。

 それほど、聖剣の力に護られたセラは無敵だった。


 キースは子供を抱えて、ケルンのところまで走って戻った。


「ゴーレムはセラに任せて、村人たちを避難させるっす!」

「言われなくてもやっている!」


 ケルンは、力の抜けたノエルを背負ったまま、村人たちの避難誘導を続けていた。だが、ここは森に囲まれた村。森の中に逃げても、もしそちらに火が燃え広がれば全滅しかねない。


「風上を目指して全力で走れ!」


 ケルンは村人たちに指示を出す。その背中で、ノエルは何もできない自分に、唇を噛みしめていた。


 †††


 飛んでくる炎の巨大な矢を、セラは剣の一振りで弾き飛ばした。


「このままでは村が焼けます。あの火矢を使うゴーレムを倒します!」


 聖剣様は、肯定したと応え、輝きを増してくれた。

 セラは両手で剣の柄を握り、火矢ゴーレムの足元を駆け抜けた。振るった剣は触れないまでもゴーレムの足を砕く。

 膝をついたゴーレムに、背中から更に斬りかかる。

 斬るというより、叩いたような衝撃を受け、ゴーレムは弓を手放して地面に転がった。


(感謝します、聖剣様――)


 かつて、自分の故郷の村がゴーレムに襲われて燃えた時、セラは何もすることができなかった。多少の剣の心得はあったが、魔法を使うゴーレムの前に、為すすべもなかったのだ。

 無力さを痛いほど感じ、強くなりたいと願い、故郷の焼け跡を発った。


 この力は、セラの力ではない。聖剣の力であることを理解している。

 だが、借りた力であっても、何かを守れるなら――セラは、力の限り戦いたい。


 二体のゴーレムを倒し、セラは燃え盛る炎の中、シャデラリーゼルを探す。

 だが、白い少女の姿は、どこにも見当たらなかった。

 混乱に乗じて、逃げたようだった。


 †††


(セラ、ヤバいって! いつの間にか炎にめっちゃ包まれているんだけど!)


 結界で守っているからあんまり感じてないのかもしれないけど、結構周りは大変なことになってるからね!


 あの白い少女――逃げ足が速くてムカつく! 追いかけたいのはやまやまだけど、とにかくまずは火を消さないと! でもって、折れたお兄ちゃんを回収して!


 ピッカンピッカンとハザードランプみたいに光りまくって、ようやくセラは自分の状況に気付いたらしい。


「えっ……あ、燃えてる!」


 炎の向こうから、キースと女の子の声がかすかに聞こえた。


「セラーっ! 大丈夫っすかーっ!」

「セラ! む、むうう……! ラグナロクがいれば、風を操って、こんな火をどうにかするのに!」


 ラグナロク……お兄ちゃんのことだ。魔剣ラグナロクは風を操れるんだよね。

 あ、いいこと思いついたよ。でも、うまくいくかな。

 一回折れて、で、気が付いてから、なんとなく調子がいいんだよねー。状況的に、私を修理してくれた、あの黒い服を着た男の人が、ついでにメンテナンスしてくれたんじゃないかな。だから、結界の力を前よりもうまく制御できるというか。だからきっとできるよね。


 私は結界を炎で燃える村全体に広げた。それでもって、セラと自分の周りだけ、さらに二重で囲って守っておく。

 そして、結界から――『酸素』を追い出す。


「え!?」


 私が輝いたと同時に、一瞬で消えた炎に、セラがびっくりしていた。

 うんうん、火事の時に濡れ雑巾をかけて、火を消すやつね。酸素を遮断すれば、火は消えるんだよねー。


「聖剣様……凄い……」


 セラが呆然と呟いている。ふふふ、前世では理科も得意だったんだよ。


 火が落ち着いて辺りを見渡せば、酷いことになっていた。家はほとんど焼けてなくなってしまっている。

 瓦礫みたいに崩れたゴーレムの近くに、黒いものがキラリと光った。


「……ら、ラグナロク」


 女の子――そうだ、魔王のノエルって子――が近付いて、拾い上げた。


「な、直るか? わ、私のせいで……ラグナロクがあ……」


 ノエルちゃんは目から涙をぽろぽろ零している。

 大丈夫、直るって、だって、私だってさっき、あの黒い男の人に直してもらったんだもん。

 えーっと、あの黒っぽい人はどこにいるのかな。


 キョロキョロと見渡すと、その黒い男の人が、森の中から歩いてきた。


「……ロイバンシュビッチさん、魔剣が」

「ああ――不味い事態だ。ラプラスが復活する」


 ん? 何? ラプラス?


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