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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第四章 忘れられた過去
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私は勇者の武器として(01)


 †††


 甲高い、澄んだ音。


 白い少女の細い手と、剣がぶつかって立てるには、似つかわしくない音が響き――二つに折れた漆黒の剣は、地面に転がった。


「……あ」


 呆然と、ノエルが呟く。

 白い少女は――くすりと笑った。


「愚かね。そんなにも人の命が大事かしら――どうせ短くすぐに消えるというのに」

「お前――!」


 セラが吠える。

 相手は何百年もの間、人々を争わせ続けてきたゴーレムだ。人の命など、何とも思っていないのかもしれない。

 キースもまた、ぎりぎりと歯を食いしばりながら、シャデラリーゼルに向かって叫んだ。


「……魔剣は渡したっすよ! 早くこの村からゴーレムを引き上げさせるっす!」


 決して、魔剣が失われる結果など望んでいなかった。だが、こうなった以上、シャデラリーゼルに退くように要求するしかない。

 だが、シャデラリーゼルは残酷な笑みを浮かべた。


「……ふふ。無駄よ。ラプラスが復活すれば、人々はすべて死に絶えるのだから――ここで死んだって同じことよ」


 シャデラリーゼルの背後の二体のゴーレムは、再び村を破壊し続ける。鎌を持つゴーレムは、再び手にした子供を掲げ、片方の刃で突き刺そうとした。


「そん……な」


 絶望的な状況に、ノエルは青ざめ、その場に膝をつく。

 戦うにしても――魔剣ラグナロクをも失い、あのゴーレムに抵抗する手段がない。


 自分のせいだ。ノエルは震える。

 あの時確かに自分は、心の中で思った。

 子供を見捨てたくない。助けたいと、叫んでしまった。

 結果――魔剣ラグナロクは、自分の命令に従った。そして――。


「あ……ああ」


 村だけでなく、魔族全てを、いや、この世界の人々全てを、危険に晒すことになった。


 今度こそ、ゴーレムの持つ鎌が、振り下ろされた――


 †††


(うりゃあああああっ! 『結界』発動!)


 異世界に転生して。剣の形になって。

 それで奇跡的に、兄妹水入らずで会話しようとしてたところに――!

 何してくれてんの、よお――っ!


「こ、これは――!」


 金色の光に、セラが私に気付く。そう、結界を発動して、私は地面を拒絶――反動で自ら高く跳ね上がって、セラの元に回転しながら落ちる。


 ざくり、と地面に突き刺さった私を、セラは迷わず引き抜いた。


「聖剣様、僕に力を貸してください!」


 もちろん!

 気が付いたら、知らない場所にいるし、どうにもこうにも明らかに悪者っぽいゴーレムが村を焼いているしで、正直何が何だかだけど、はっきりしていることがある。

 あの白い少女、私を折った女だ。

 そして足元には――二つに折れた黒い剣。お兄ちゃん。


(絶対、許さない!)



 セラが私を手に、ゴーレム目がけて駆けだす。

 同時に、私はセラの体全体を結界で包み込む。そして、セラの足と地面の間を、結界の能力で弾く様に勢いをつけてやって――要するに、セラの走る速さを上げているわけ。


「……! ありがとうございます、聖剣様!」


 お礼はいいから、今は目の前の敵のことに意識を集中するよ!

 金色のオーラで覆われたと同時に、急に体が軽くなったセラは驚いたようだったが、すぐにそれが私の力だと察してくれた。


 セラは真っすぐ、鎌を構えたゴーレムの前に立つと、跳びあがった。

 跳びあがる力を、結界で地面を弾き飛ばすことでアシスト! 3メートルはありそうなゴーレムの頭まで、一気にジャンプしたセラは、そのまま私をゴーレム目がけて振り下ろす。


 ここでさらに結界発動! 私自身をぶ厚く結界で包みこんで、思い切りゴーレムを弾き飛ばす!


 片方の手に捕まっている子供は、呆然とセラを見ていた。

 まあ、だよね。金色に輝く青年が、光り輝く剣の一振りで、巨大なゴーレムの鎌を持つ腕を切り落としたんだから。

 さあ、勇者の聖剣の力――とくと見せてあげる!


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