私は勇者の武器として(01)
†††
甲高い、澄んだ音。
白い少女の細い手と、剣がぶつかって立てるには、似つかわしくない音が響き――二つに折れた漆黒の剣は、地面に転がった。
「……あ」
呆然と、ノエルが呟く。
白い少女は――くすりと笑った。
「愚かね。そんなにも人の命が大事かしら――どうせ短くすぐに消えるというのに」
「お前――!」
セラが吠える。
相手は何百年もの間、人々を争わせ続けてきたゴーレムだ。人の命など、何とも思っていないのかもしれない。
キースもまた、ぎりぎりと歯を食いしばりながら、シャデラリーゼルに向かって叫んだ。
「……魔剣は渡したっすよ! 早くこの村からゴーレムを引き上げさせるっす!」
決して、魔剣が失われる結果など望んでいなかった。だが、こうなった以上、シャデラリーゼルに退くように要求するしかない。
だが、シャデラリーゼルは残酷な笑みを浮かべた。
「……ふふ。無駄よ。ラプラスが復活すれば、人々はすべて死に絶えるのだから――ここで死んだって同じことよ」
シャデラリーゼルの背後の二体のゴーレムは、再び村を破壊し続ける。鎌を持つゴーレムは、再び手にした子供を掲げ、片方の刃で突き刺そうとした。
「そん……な」
絶望的な状況に、ノエルは青ざめ、その場に膝をつく。
戦うにしても――魔剣ラグナロクをも失い、あのゴーレムに抵抗する手段がない。
自分のせいだ。ノエルは震える。
あの時確かに自分は、心の中で思った。
子供を見捨てたくない。助けたいと、叫んでしまった。
結果――魔剣ラグナロクは、自分の命令に従った。そして――。
「あ……ああ」
村だけでなく、魔族全てを、いや、この世界の人々全てを、危険に晒すことになった。
今度こそ、ゴーレムの持つ鎌が、振り下ろされた――
†††
(うりゃあああああっ! 『結界』発動!)
異世界に転生して。剣の形になって。
それで奇跡的に、兄妹水入らずで会話しようとしてたところに――!
何してくれてんの、よお――っ!
「こ、これは――!」
金色の光に、セラが私に気付く。そう、結界を発動して、私は地面を拒絶――反動で自ら高く跳ね上がって、セラの元に回転しながら落ちる。
ざくり、と地面に突き刺さった私を、セラは迷わず引き抜いた。
「聖剣様、僕に力を貸してください!」
もちろん!
気が付いたら、知らない場所にいるし、どうにもこうにも明らかに悪者っぽいゴーレムが村を焼いているしで、正直何が何だかだけど、はっきりしていることがある。
あの白い少女、私を折った女だ。
そして足元には――二つに折れた黒い剣。お兄ちゃん。
(絶対、許さない!)
セラが私を手に、ゴーレム目がけて駆けだす。
同時に、私はセラの体全体を結界で包み込む。そして、セラの足と地面の間を、結界の能力で弾く様に勢いをつけてやって――要するに、セラの走る速さを上げているわけ。
「……! ありがとうございます、聖剣様!」
お礼はいいから、今は目の前の敵のことに意識を集中するよ!
金色のオーラで覆われたと同時に、急に体が軽くなったセラは驚いたようだったが、すぐにそれが私の力だと察してくれた。
セラは真っすぐ、鎌を構えたゴーレムの前に立つと、跳びあがった。
跳びあがる力を、結界で地面を弾き飛ばすことでアシスト! 3メートルはありそうなゴーレムの頭まで、一気にジャンプしたセラは、そのまま私をゴーレム目がけて振り下ろす。
ここでさらに結界発動! 私自身をぶ厚く結界で包みこんで、思い切りゴーレムを弾き飛ばす!
片方の手に捕まっている子供は、呆然とセラを見ていた。
まあ、だよね。金色に輝く青年が、光り輝く剣の一振りで、巨大なゴーレムの鎌を持つ腕を切り落としたんだから。
さあ、勇者の聖剣の力――とくと見せてあげる!




