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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第四章 忘れられた過去
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古代文明の真実(01)


 次の日の朝、俺たちは”忘却の村”に到着した。

 森を抜けた先、というより、村自体が森の中を切り開いた場所にある。村の中央には小さな湖があるためか、霧がかかっていた。


 小さな村なので、村長の家もすぐに分かった。ノエルとケルンは村長を訪ね、魔道具に一番詳しい者について聞いた。


「魔王様自ら、この村にいらっしゃるとは……」

「修理したい魔道具があるのだ。それに――心を持つ魔道具についても調べたい」


 ノエルが言うと、村長はゆっくりと息をついた。


「……ノエル様は、十五代目の魔王でしたね……そう、あの戦争から、もう二百年も経つのですか……」


 村長は立ち上がると、俺たちを連れ、森の木々の間に入っていく。


「ここは”忘却の村”。人々が忘れた歴史を、静かに守り続ける村――先祖代々語り継いできた役目も、私の代で終わるかもしれません」

「……?」


 森の中を進むと、そこには小さな小屋が、村から離れた場所にあった。


「何か音が聞こえるっすね」

「……うん」


 小屋からはカチカチと規則正しい音が聞こえてくる。時計の秒針の音に似ていると俺は思ったが、この世界には正確な時計がないみたいだからな。


 村長は不思議な紋様の刻まれた小屋の扉に向かい、呪文を唱えた。


「――目覚めよ、記憶を尋ねる者あり」


 呪文に応えるように扉は一瞬輝き、そして独りでに開く。

 ケルン、俺とノエル、キース、セラの順に小屋に入る。四人も入ると狭いな。おまけに暗くて中がよくわからない。


「村長、ここは」


 ケルンが尋ねた時、小屋の奥で人影が動いた。

 はっとしてそちらを見ると、小屋の中にいた人影は――パチリ、と指を鳴らす。

 暗かった小屋が光で満たされた。目に入るのは、小屋の奥で規則正しく噛み合って回る歯車。

 そしてその前で、静かにこちらを見る、細身の青年。

 貴族のような黒い服を着ており、髪は、まるで底の深い穴を覗きこんだみたいな漆黒、瞳は銀色だった。


「……俺が眠りについて、176年と58日。世界は滅びてはいない」

「何を……? どう見てもお主、若いではないか……?」


 ノエルが言うが、俺は目の前の青年の、整いすぎた彫刻のような美しさに、あるものを思い出していた。

 ――あの白い少女と、似ている。



「あなたは……一体?」


「俺は楽園崩壊を見届けた、最後のゴーレム。作り手の名を貰い、ロイバンシュビッチと名付けられた」


 ゴーレムと聞き、一同がはっと身構える。しかし、黒い青年は、無表情で口だけを動かす。


「尋ねよ。過去の記憶を保ち、悪魔ラプラスの復活を阻止するのが我が役目」


 悪魔……だって?


「どういうこと?」

「……長き時の間に、失われたか」


 黒い青年は、ぐるりと俺たちを見渡した。


「俺も長い眠りから覚めたばかりだ。まずはお前達の話を聞こう」



 色々聞きたいことはあるが、まずは妹のことだ。

 笛をピーピー吹いてから、風でセラの腰のあたりをつつく。


 セラはそれで意図を察してくれたのか、布に包んでいた白銀の剣を、ロイバンスュビッチに見せた。


「――これは、聖剣か」


 無表情だったロイバンシュビッチの顔が、わずかに強張ったように見えた。聖剣を取ると、目の高さまで持ち上げ、睨むように眺める。


「魔鋼オリハルコン製の剣を折るとは――魔剣によって折られたか? いや、聖剣と魔剣は互いに共鳴している。それはできないはずだ……」


 違う! 俺がそんなことするか!

 抗議しようとしたら、強く笛を吹きすぎたのか、裏返ったような甲高い音がして、ノエルが耳を塞ぐ。


「ま、魔剣ではない。白い少女のようなゴーレムに折られたのだ!」


 ノエルは更に、その白い少女がゴーレムを操り騒ぎを起こしていること、さらに魔剣をも狙っていることを話す。

 ロイバンシュビッチはまさか、と呟く。


「シャデラリーゼルが裏切ったか……? ラプラスの復活を狙うならば、魔剣を狙ってくるだろうが」


 シャデラリーゼルってのが、あの白い少女の名前か?

 さっきから何なんだ、その悪魔とかラプラスっていうのは。


「悪魔って……」

「それは魂を宿した魔道具――楽園の愚かな夢だ」


 魂を宿した魔道具、という言葉に、ノエル達が反応する。


「長い話になる。聖剣を直しながら話すとしよう。話は、古代に遡る」


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