表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/61

魔王と勇者の旅(05)


 †††


「うっ……」


 キースが呻きながら、薄く目を開けた。横にいたセラが、顔をのぞきこむ。


「良かった……やっと気がついたんだね」

「……セラ? 一体――」


 キースが体を起こすと、パサリ、とキースの体にかけていた毛布が落ちる。上半身裸だったキースは、自分の腹の傷痕を見て、今までのことを思い出した。


「俺……あれから」

「ノエルとケルンさんが、魔道具で助けてくれたんだ。でも、傷は治っても、しばらく安静にしてた方がいいって」


 そう言ってセラは、キースを再び横になるように促し、破れた上着を縫う作業に戻る。キースの上着は、白い少女の攻撃で、腹に大きな穴が開いてしまっていたからだ。


「……。」


 森の木々を見上げながら、キースはぼんやりした頭で、横にいるセラに尋ねた。


「……見た、っすか?」

「…………。」


 何を見たと聞かれているのか、セラはすぐに分かる。セラは血を洗って干した、キースの上着の穴を縫いながら、静かに頷いた。


「キース、君は」

「……お察しの通りっすよ。俺は、人間と魔族の間に生まれたっす」


 キースはそう言いながら、自分の胸にある刺青を指でなぞった。


 †††


 お、キースが気がついたっぽい。

 ノエルとケルンと、少し離れたところにいた俺は、ぴょろ~、と笛を吹いて知らせた。


「ラグナロク、どうしたのだ?」


 ……うん。やっぱり笛だけじゃ、コミュニケーションに限界あるよな。

 しかし、ケルンがキースとセラの方をちらっと見たので、何となく意図は伝わったらしい。


「――あのキースという若者、人間と魔族の血をひいていたとは」

「……ケルン、魔族の祝福である月の紋章、そして人間の太陽の紋章が、同時に表れることがあるのか?」


 話を聞いていると、魔族には月の、人間には太陽の形の刺青が彫られているということが何となーくわかった。

 道理で、キースの体に太陽と月が両方彫られていたらみんな驚くわけだ。


 ケルンは、失礼します、と断って、自分の着ている服の前をはだけた。


「我々魔族は、生まれた時より、体に月の紋章を持っていますね?」

「……うむ」


 そう説明するケルンの胸には、三日月のような刺青がある。ノエルも服の上から自分の胸の辺りに触れた。


「同様に、人間には太陽の刺青があります。――これは、かつて人間と魔族が戦った際、魔道具にて刺青を彫った名残なのです」

「魔道具……?」

「戦争では、激しく争い、多くの死者が出ました。ですから、敵味方の区別、とりわけ遺体の区別をつけるのに、印が必要でした。魔法により刻まれた刺青は、その子孫にも受け継がれたのです」

「そうなのか……」


 へー、そうなのか。

 しかし、そうなると俺としては次の疑問が出てくる。


 魔族と人間を見分けるために、月と太陽の印をつけた。

 となると、その戦争以前において、魔族と人間の違いは何だったんだ?

 そもそも、二つの種族は、印を見ないと違いがわからないレベルで似ているということだ。キースが魔族と人間のハーフだというなら、混血も可能だし。


 そこのところを詳しく尋ねたいが、俺のコミュニケーション能力では無理がある。

 ノエルは何やら考えこんで黙ってしまったし、ケルンも難しい顔をしている。


 仕方ないので、俺はセラやキースの方の会話に意識を集中した。や、盗み聞きじゃないよ。でも暇なんだよな。


「すまないっすね、黙ってて」

「……ううん」


 セラは、縫い終わった上着をキースに渡した。キースは礼を言って、その上着を着る。

 ……相変わらず器用だな、セラ。ボタンもろくにつけられない妹とは大違いだ。いい奥さんになりそう。


「キースが隠していた理由はわかる。……僕は魔族を嫌ってはいないけど、そうでない人も多い」

「そうでない人の方が多いっすよ……俺の親が奇特すぎるっす」


 種族を越えて愛を貫いたのか。とはいえ、種族間の壁は大きいから、その苦労はどれだけのものだったか。


「キースのご両親は……その」

「ああ、父親が人間、母親が魔族っすよ――ま、俺の話は後でいいっす。それより……」

「どうしたの、キース」


 キースは首を振ると、立ち上がった。ふらつくキースをセラが支える。


「気付いたことがあるっす。……いつまでも休んでられないっすね。そろそろ出発するっすよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ