魔王と勇者の旅(01)
というわけで、俺達は北東の村、”忘却の村”に向かっていた。
戦士が二人、弓使い、魔法使いか。四人パーティとしては、前衛も後衛もいて、まあバランスの取れた編成ではないかと思う。
俺? 俺はアイテム扱いだろ。
先頭を歩くのがキース、隣がセラ。その後ろに俺を連れたノエル、最後がケルンだ。
魔族領を歩くんだから、ケルンが先頭を行くものだと思ってたが、ケルンは後ろについた。
キースがちょっと苦笑していたのが見えて、俺は察する。
要するにケルンは、自分の後ろに人間二人を歩かせたくないのだ。信用していないから。
俺自身は、セラとキースの二人のことを、まあ信用できると思う。
妹の言葉もあるが、俺からみても悪い人には見えない。
俺が元人間っていうのもあるのかもしれないが……ただ、この世界の魔族と人間が、大きく違って見えないんだよな。
正直、どちらの種族も、前世の人間とほぼ変わらないというか。
さて、ケルンとは対照的に、ノエルはセラと親しげに話している。
「セラ殿、その、セラ殿はどうやって聖剣に意思があると気付いたのだ?」
「セラでいいですよ、えーと……」
「ノエルで構わぬ」
「では、ノエル。聖剣様の意思には、キースが気付いてくれたんです」
聞けば、妹は、光の点滅でコミュニケーションを取っていたそうな。
や、やるな……その手があったか。
「聖剣様は慈悲深い方でして」
妹が褒められるのは、兄として嬉しいんだが、慈悲深いって……?
俺も会話に参加しようと光ってみたのだが、しかし上手くいかない。
聖剣と違い、魔剣は黒に銀という、どっちかと言えば暗い色だ。昼間だと光ってもあんまり目立たないのか、ノエルは気付かない。
悔しいのでノエルの耳に風を吹きかけてみた。
「ふ、ふええっ! その、ラグナロク……急に風を吹かせるのは……」
「魔剣さんは、風を操るんすねえ」
キースは興味深そうに俺を見る。
「すまぬ、ラグナロク。お主を無視している訳ではないのだ……ただ、どう意思を読み取ればいいのか」
だよな。
まあ、とりあえず意思があると気付かれただけで良しとしなければ。
「ラグナロクには、今まで守ってもらった礼も言いたいのだが」
「聖剣様と同じで、多分こちらの話は聞こえてはいると思いますが、反応が見えないとこちらからも話しかけにくいですね」
本当に魔王と勇者なんだよな? と思うほど和やかに会話して歩いていく三人。
特にノエル、セラと話すのが楽しそうだ。女の子同士だもんな。
そしてそんな様子を、ケルンが険しい目で見ていた。
†††
村から村への移動の間、野宿をすることになった。実は、この旅において初めての野宿である。
恐らく、これが普通の旅のスピードなんだよな……。今まで、ケルンがノエルを背負って馬のように走ってたから、そういう事がなかったんだ。
セラは、焚き火の傍で、小刀で木を削って何かを作っている。
ノエルは疲れたのか、セラの向かいに座ってうとうとしている。
ケルンは食事の準備をしていた。てか、ケルンの荷物からやたら本格的な調理セットが出てくるんだが……? どんだけ荷物の準備がいいんだよ。
「お待たせっす、晩ごはん捕まえてきたっすよー」
そこに、兎をぶらぶらさせたキースが戻ってくる。
え、晩ごはん? ジビエって奴か……さすがファンタジー世界。
「お手柄、キース」
セラは兎を受けとると、小刀でテキパキと下ごしらえを――すまん、俺は見れない。
そういえば俺、血は苦手だった。なんで刃物に転生したんだ、本当。
セラは兎肉を串に刺して、焚き火で焼いた。手慣れてるな。
「焼けましたよ」
セラが串焼き肉を差し出すと、ケルンは断った。
「結構だ。自分達の口に入れるものくらい、自分で用意する」
「……はあ」
頑なな態度のケルンに、キースはため息をついた。
「……そういえば聞かれてたっすね、俺の弓の出所。……これは母さんから貰ったものっす」
「自分が略奪に関わっていないと言うつもりか? 貴様ら人間が我々から奪ったものには違いない」
「アンタ、戦争は人間だけの責任だなんて言うんすか?」
おいおい、なんか険悪だぞ。
ケルンを止めるはずのノエルは……ああ、寝てるのか。
「……キース」
セラが心配そうに、キースの名前を呼ぶ。キースははっとして、口を閉ざし、ケルンから目を逸らした。
セラは静かに、火を見つめながら話した。
「ケルンさんが、人間である僕達を信用できなくても、仕方ないと思います。でも、僕達は――ノエルとケルンさんを信じることにします。立場が違っても、平和を望むのは、同じだと思いますから」
「……。」
ケルンは、返事をしなかった。眠るノエルを起こし、食事を用意する。
セラは、キースに串焼き肉を渡しながら、穏やかに微笑んだ。
……美人だな、本当。ノエルもそこそこ美少女だけど、セラはキレイ系だ。
ちなみに妹は、阿呆可愛い。いや、褒めているんだ。
キースは苦笑して、肉にかぶりついた。




