表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/61

魔王と勇者の旅(01)


 というわけで、俺達は北東の村、”忘却の村”に向かっていた。


 戦士が二人、弓使い、魔法使いか。四人パーティとしては、前衛も後衛もいて、まあバランスの取れた編成ではないかと思う。

 俺? 俺はアイテム扱いだろ。


 先頭を歩くのがキース、隣がセラ。その後ろに俺を連れたノエル、最後がケルンだ。

 魔族領を歩くんだから、ケルンが先頭を行くものだと思ってたが、ケルンは後ろについた。


 キースがちょっと苦笑していたのが見えて、俺は察する。

 要するにケルンは、自分の後ろに人間二人を歩かせたくないのだ。信用していないから。


 俺自身は、セラとキースの二人のことを、まあ信用できると思う。

 妹の言葉もあるが、俺からみても悪い人には見えない。

 俺が元人間っていうのもあるのかもしれないが……ただ、この世界の魔族と人間が、大きく違って見えないんだよな。

 正直、どちらの種族も、前世の人間とほぼ変わらないというか。


 さて、ケルンとは対照的に、ノエルはセラと親しげに話している。


「セラ殿、その、セラ殿はどうやって聖剣に意思があると気付いたのだ?」

「セラでいいですよ、えーと……」

「ノエルで構わぬ」

「では、ノエル。聖剣様の意思には、キースが気付いてくれたんです」


 聞けば、妹は、光の点滅でコミュニケーションを取っていたそうな。

 や、やるな……その手があったか。


「聖剣様は慈悲深い方でして」


 妹が褒められるのは、兄として嬉しいんだが、慈悲深いって……?


 俺も会話に参加しようと光ってみたのだが、しかし上手くいかない。

 聖剣と違い、魔剣は黒に銀という、どっちかと言えば暗い色だ。昼間だと光ってもあんまり目立たないのか、ノエルは気付かない。

 悔しいのでノエルの耳に風を吹きかけてみた。


「ふ、ふええっ! その、ラグナロク……急に風を吹かせるのは……」

「魔剣さんは、風を操るんすねえ」


 キースは興味深そうに俺を見る。


「すまぬ、ラグナロク。お主を無視している訳ではないのだ……ただ、どう意思を読み取ればいいのか」


 だよな。

 まあ、とりあえず意思があると気付かれただけで良しとしなければ。


「ラグナロクには、今まで守ってもらった礼も言いたいのだが」

「聖剣様と同じで、多分こちらの話は聞こえてはいると思いますが、反応が見えないとこちらからも話しかけにくいですね」


 本当に魔王と勇者なんだよな? と思うほど和やかに会話して歩いていく三人。

 特にノエル、セラと話すのが楽しそうだ。女の子同士だもんな。


 そしてそんな様子を、ケルンが険しい目で見ていた。


 †††


 村から村への移動の間、野宿をすることになった。実は、この旅において初めての野宿である。

 恐らく、これが普通の旅のスピードなんだよな……。今まで、ケルンがノエルを背負って馬のように走ってたから、そういう事がなかったんだ。


 セラは、焚き火の傍で、小刀で木を削って何かを作っている。

 ノエルは疲れたのか、セラの向かいに座ってうとうとしている。

 ケルンは食事の準備をしていた。てか、ケルンの荷物からやたら本格的な調理セットが出てくるんだが……? どんだけ荷物の準備がいいんだよ。


「お待たせっす、晩ごはん捕まえてきたっすよー」


 そこに、兎をぶらぶらさせたキースが戻ってくる。

 え、晩ごはん? ジビエって奴か……さすがファンタジー世界。


「お手柄、キース」


 セラは兎を受けとると、小刀でテキパキと下ごしらえを――すまん、俺は見れない。

 そういえば俺、血は苦手だった。なんで刃物に転生したんだ、本当。

 セラは兎肉を串に刺して、焚き火で焼いた。手慣れてるな。


「焼けましたよ」


 セラが串焼き肉を差し出すと、ケルンは断った。


「結構だ。自分達の口に入れるものくらい、自分で用意する」

「……はあ」


 頑なな態度のケルンに、キースはため息をついた。


「……そういえば聞かれてたっすね、俺の弓の出所。……これは母さんから貰ったものっす」

「自分が略奪に関わっていないと言うつもりか? 貴様ら人間が我々から奪ったものには違いない」

「アンタ、戦争は人間だけの責任だなんて言うんすか?」


 おいおい、なんか険悪だぞ。

 ケルンを止めるはずのノエルは……ああ、寝てるのか。


「……キース」


 セラが心配そうに、キースの名前を呼ぶ。キースははっとして、口を閉ざし、ケルンから目を逸らした。

 セラは静かに、火を見つめながら話した。


「ケルンさんが、人間である僕達を信用できなくても、仕方ないと思います。でも、僕達は――ノエルとケルンさんを信じることにします。立場が違っても、平和を望むのは、同じだと思いますから」

「……。」


 ケルンは、返事をしなかった。眠るノエルを起こし、食事を用意する。


 セラは、キースに串焼き肉を渡しながら、穏やかに微笑んだ。

 ……美人だな、本当。ノエルもそこそこ美少女だけど、セラはキレイ系だ。

 ちなみに妹は、阿呆可愛い。いや、褒めているんだ。


 キースは苦笑して、肉にかぶりついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ