折れた聖剣(03)
聖剣を修理できるかもしれない、だって!?
「う、うひゃっ!」
腰にいた俺が魔剣バイブでばたついたので、ノエルくすぐったそうに悲鳴をあげた。
ノエルは慌てて立ち上がり、俺を腰から離し、鞘に入れたまま両手で持ち上げる。
「……ラ、ラグナロク。その……お主も行きたいというのか? ”忘却の村”に」
妹を復活させられる見込みがあるなら、勿論だ!
という意思を込めて、風をぶわっと吹き上げる。
ノエルはしばらく考えた。
「……。その村、我も行ってよいだろうか」
「え?」
「……我も”忘却の村”に行って、ラグナロクと、その聖剣のことを調べたいのだ。それに、村は魔族領。人間であるセラ殿とキース殿の二人だけで行かせるわけにはいかない」
キースは頷いて、ノエルの申し出をありがたく受けた。
「俺たちだけで行くと、ソンタさんみたいなことになりかねないっすから、魔王様が来てくれるなら大助かりっすね」
「私は反対です!」
ケルンが言うと、ノエルはケルンを振り返った。
「何故だ、ケルン?」
「そもそも、それは人間側の魔道具、聖剣エクスカリバーなのです! 先の対戦において、我々魔族の命を奪った剣なのです! 何故それを直さなければならないのですか! 姫様は魔族の王なのですよ!」
「う……」
ケルンに言われ、ノエルが怯む。そこにキースが割って入った。
「確かに昔の戦争で人間と魔族が殺しあったのは確かっすよ。だけど今俺たちはこの先の戦争を回避しようとしてるっす――そもそも今俺たちの共通の敵になってるのは、あの白い少女じゃないんすか? その少女への対抗手段として、俺たちは聖剣を取り戻す必要があるっす」
キースは腕組みをして、ケルンを真っすぐ見たが、ケルンは鋭い目でキースを睨む。
「歴史を知らない若造がほざくな」
「ケルン……」
ノエルは、ケルンを止める。ケルンは主の命に従い、口を閉じたが、キースにはガンを飛ばしたまま。
あああ、まずいまずい。
どうにか、ここは魔族の皆様に協力してもらって、聖剣の妹を治療(修理?)してもらわなければならないのだ。
ええい、こうなれば!
俺は風を巻き起こし、シュパッと鞘から勝手に飛び出した。
刃物が勝手にこういうことをするのは危ないから、今までこういうことはしてなかったのだが、今は緊急事態だ。
勝手に飛び出してきた剣に、一同がぎょっとしたが、俺に攻撃の意思はない。俺は、そのままセラとキースの足元にころんと転がった。
「あ、あう、すまん、こら、ラグナロク!」
ノエルは俺の持ち主としての責任があると思ったのか、急いで俺を拾い上げて鞘に収める。……まるで、勝手によその人に飛びかかった犬みたいな扱いだな、おい。
ノエルは困った目でケルンを振り返る。
「……聖剣エクスカリバーと、魔剣ラグナロクは明らかに反応していたのだ。聖剣が折れた時も、ラグナロクは異常な反応をみせていたし……」
妹が目の前で襲われたら、そりゃあブチ切れるだろ。
「魔剣……にもかかわることなのですか……」
ケルンはしばらく悩んだが、やがて渋々、セラ達を”忘却の村”に案内することを了承した。




