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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第一章 剣に転生した兄妹
3/61

魔剣になった俺(01)


 †††


 ――ここはどこだ?


 気がつくと、俺は、薄暗い場所に立っていた。

 立っているはずなのに、歩きだそうとしても、体が微動だにしない。神経が切れてしまったかのように、体に力が入らない。


 目だけでも動かして、周りを見渡そうとすれば、全方位に知覚が広がるのを感じた。

 目で物を見ている時とは違い、景色が直接頭の中に流れる感覚。

 夢の中で見る景色がこんな感じか。自分自身を俯瞰しているとでもいうべき、奇妙な知覚。

 その知覚で、俺は自分自身の体の輪郭を感じ取り――自分が剣になっていることを知った。


 ……。

 …………は? 剣?


 自分の体が、西洋風なゲームのキャラクターが振り回す、あの剣になってるんですが。

 いや、動かねーんだけど、この体。


 しかも、ここはマジでどこだ?

 暗くてじめじめして、壁は石で組まれてるっぽい。 ピラミッドの中みたいというか……ゲームのダンジョンみたいなとこなんですが。

 周りには人どころか、ネズミ一匹いやしない。


 ううむ。流行りだからな、異世界転生のネット小説はそれなり読んだが……。

 火事で死んだと思いきや、剣に転生して、こんなダンジョンのアイテムになるとは。


 異世界転生し、俺は孤独で地味なスタートを切ったのだった。



 とりあえず、この体の仕組みを理解するところからスタートだな!

 というか、何かしてないと、退屈で精神が殺されそうだ。


 まず視界。剣である俺には目がないのに、どういう訳か周囲が見えている。

 俺が地面に突き刺さってるこの部屋は、およそ3メートル四方の狭い部屋だ。どこまで視界が広がるかは分からないが、直線距離に遮るものがなければ、まあまあ人間の時と同じように見えるようだ。

 ただし、視界は上下左右全方位に広がっている。これは目でものを見てないせいなんだろうな。どういう理屈で見えてるのかは分からんが。


 次に、聴覚は人間並みにあるようだ。ダンジョンの奥は静かだが、たまに遠くから、雫が落ちるような音が聞こえるからな。

 触覚は、どうもかなり鈍いらしい。俺が地面に突き刺さってるのは見れば分かるんだが、地面と俺の剣先との接地面の感覚が、それほどしないからだ。

 嗅覚もぼんやりとはあるようだ。湿った土の臭い。

 味覚はないだろう……多分。


 自分の体の感覚をつかんだところで、次に俺はどうにか体を動かせないか、試す。

 前世の感覚を頼りに力んでみたが、筋肉のない、鋼の塊はそれで動くはずもない。

 次に、動きたいと念じてみた。人の魂が宿っている剣なのだ。それで、ひと○いサーベルのように動くかと期待したが……どれだけ粘っても駄目だった。

 最後に、一発逆転、擬人化できないかと思ったが、これも無理だった。

 昨今、刀がイケメンになれるというのに、元人間が剣になったままって、何の罰ですか……。


 あっという間にやることがなくなった俺は、そのままぼんやりしていた。

 ああ、暇だなあ。前世では暇さえあればゲームして動画見て、睡眠時間も削るほどで、暇を感じることなんて久しくなかった。眠くてうとうとしてた時でさえ、伊織がゲーム片手に部屋に乱入してきたからな。

 目があったら、涙で視界が滲んでいたに違いない。

 真っ暗なダンジョンは時間の感覚を狂わせる。俺がここで目覚めてから、時間はちょっとしか経っていなかったのかもしれないが――俺には永遠にも感じられた。


 誰か。ここに素敵な武器が落ちてますよ。

 ダンジョン(深いのか? それすら分からない)を踏破して、手にいれてください。


 そんなことを祈った瞬間――俺のいる部屋の扉が、開かれた。

 はっと意識をそちらに向けたら、そこにいたのは、まだ若い――いや、幼いといっていいほどの、少女がいた。


「見つけたぞ!」


 嬉しそうな顔で少女が俺に近付いてくる。

 ふわふわとした金髪が、揺れた。恰好はそう――ゲーム世界の魔法使いがよく着るような黒いローブを着ている。いや、でもなんかリボンもフリルもついてるし、どっちかというと、ドレスっぽいな。俺はあんまり詳しくないけど、ゴスロリっていうのか?

 彼女は俺の前に立ち、剣の柄を握った。そして、高らかに宣言する。


「我が名は魔王ノエル! 魔剣ラグナロクよ、我を受け入れろ!」



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