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魔剣と聖剣が出会う時(03)


 †††


 いきなり、聖剣の私の中から金色の光が出てきて、魔剣の方からも銀色の光が出てきた。


「聖剣様? こ、これは……」


 いや、私にもさっぱりわからないのだよ。


(……え? 何? 何なのこれ?)


 勇者と魔王はセット。

 聖剣と魔剣もセット。

 うーむむ、この謎現象って、共鳴とかそういうやつ? 互いが互いに対しては正しく作用しない的な? と考えていたところに――私の頭の中に直接響いてくるように、声が響いた。


(おい! 伊織? 伊織なのか!)


 私の前世の名前を、ちょっと焦ったような声で呼ぶ声は聞き覚えがある。

 

(――え? お兄ちゃん?)

(本当に伊織なのか……!? そうだ、俺だ!)


 いやいやいや。急に何が起きているの?


(ちょっと待って、どういうこと?)

(こっちが聞きたい! 火事で死んだと思ったら気が付いたら魔剣になってたんだが、まさか……)


 お、同じだ。私も気が付いたら聖剣になっていた。


(まさか、こんな形で再会するなんて……。)

(こんな形ってのはアレか? お互いこんな形状になってってことか?)


 いや、それもあるけど。私は複雑な気分だった。


(お兄ちゃんを持ってる、その女の子って魔王なんだよね? 私を持ってるセラって、人間の勇者なんだよ……。まさかの、兄妹で戦う運命的な……。)

(あーそれだ、そこなんか勘違いがある気がする。まずそのソンタって奴? 何、お前達が助けたわけ?)


 私は、こっちの様子を見ているソンタさんに意識を向けた。


(あ、うん。色々あって、魔族の村まで送り届けてるとこかな?)

(ノエル――ああ、こっちの魔王の名前だけどさ、助けようと必死になってるだけなんだよ。悪いやつじゃないし、人間さえ魔族に手出ししようとしなかったら、戦争したいとも思ってないしさ)

(そうなんだ? ちょっと待って、セラと話してみる。)


 私もお兄ちゃんともっと話したいし、何よりも仲のいいお兄ちゃんと戦うなんて嫌だ。


(な、何!? 伊織、持ち主と話せるのか!? どうやって!)


 お兄ちゃんが、何やら喚いているけど、一旦私はセラの方に意識を向ける。

 セラはといえば、光の粒で繋がった私とお兄ちゃん(魔剣)を見ながら、ノエルを警戒している。

 私はセラに呼びかけるためにパパパパッと点滅した。


「聖剣様? 一体何を……」


 むむ。しかし話してみるといったところで、イエスorノーしか伝えられないんだよねえ。困った。

 とりあえず、戦ってはダメということを表すために、二回点滅してみる。


「……いいえ? 何が違うのでしょうか」


 ううむ、難しいな。

 魔王は悪い人じゃないと伝えるには……そうだ。

 私は結界をできるだけ広く広げて、セラとソンタさん、さらにノエルとお兄ちゃんを一つに囲ってみた。


「え……? 聖剣様、どういうことですか? 魔王を守る……戦うなということですか?」


 よく伝わった! ピカッと一回輝いて肯定。

 段々、セラの勘も良くなってきてるみたいだ。


「し、しかし、魔王は……僕たちを攻撃して……」

(それが誤解なんだって! ノエルはいい子だから、話せば分かるから!)


 お兄ちゃんがテレパシー(?)で横から声を飛ばしてくる。

 私は二回ほど点滅した。


「え……? 魔王は攻撃してこない……? けど、さっきの槍を持って向かってきたのは魔族なんじゃ……」


 セラは混乱してきたらしく、困惑していた。

 うーん、もどかしいなあ。


 †††

 

 さて、俺も妹が人間側の勇者とやらを説得している間、何もしていなかったわけじゃない。


 ややこしい事態をどうにかするため、まずは何とかノエルの耳栓を外させようと、耳に弱い風をふわーっと吹きかけていたのだ。

 しかしまあ、敵前で無様な姿を見せまいとするのか、顔を真っ赤にしながらくすぐったいのを耐えているというありさま。


「こ、こんな時にな、何なのだあ……?」


 ……涙目のノエルを見ていると、いじめている気分になるな。

 その時、聖剣(妹)を持った勇者の横に隠れるようにしていた茶髪の青年が、さっとこちらに走ってくる。


「あなたが魔王ノエル様なのですか? お待ちください!」


 ソンタはノエルの前に跪くと、慌てて話し始める。

 ノエルはさすがにソンタの表情に何か思うところがあったのか、ちょっと迷った後、耳栓を外してソンタの話を聞いた。よし。


「あの方々は人間の街に倒れていた私を助けてくれたのです! 遺跡地帯に入ってしまったことを、どうかお見逃しいただけないでしょうか!」

「なっ?」


 目をぱちぱちさせたノエルは、少し考えた。

 

「……。民の話に耳を傾けない王は愚かだと、父上も言っていたし……」 

「魔王様?」

「人間よ、魔族の領土を侵すというのであれば我は許しはせぬぞ。だが――何か事情があるというのであれば、話を聞こうではないか」


 ノエルは俺を下ろすと、セラに対して、精一杯の威厳を保った言い方で呼びかける。

 俺も敵対の意思がないと示すため、一旦はノエルの周りに巻いていた風を収めた。戦闘能力のないノエルの守りを解くというのは、正直やっちゃいけないことなんだろうが……まあ、妹を信頼した形だ。


「……。」


 彼女の方も、自分より幼い少女が剣を下ろしたのだから、自分だけ武器を構えているわけにもいかないと思ったのだろうか。

 聖剣(妹)を下ろすと、ノエルに向き合った。だが――



「ふふふふっ」


 冷たい笑い声が聞こえ――真っ白な影が、突如、降ってきた。

 まるで鐘の音のような、澄んだ音が、響く。


 その音が何だろうと思った時、俺が見たのは。


 折れた聖剣の欠片を手に笑う、あの白い少女だった。


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