魔剣と聖剣が出会う時(01)
女子高生だった私は、どういうわけか異世界で聖剣に転生しました。
聖剣といえば勇者。私は勇者に選ばれた――いや、私が勇者に選んだんだけども――セラと、その仲間のキースと共に、何だか動きがキナ臭い、魔族との戦争を回避するために旅立ちました。
ここまで、まあその、何もなかったとは言わない。ゴーレムの群れと戦ったりとか、ちょっとしたイベントはあったよね。
け、けど……。
「魔王……!?」
私達に、漆黒の剣を突きつけてくる少女は確かにそう名乗った。
勇者として旅立ったばかりのセラと私に、魔王はまだ早すぎるんじゃないかな!
しかも、だ。
「あの子が持ってる剣って……まさか……」
セラが呟く。うん、私も同じことを思った。
魔王と名乗った女の子の持っている剣は、色こそ黒で銀に輝いているけど、私――聖剣にそっくりだった。
横で、ソンタさんが感動に震えながら呟いた。
「あれは、魔剣ラグナロク……!」
……。
やっぱり、そうなのねー!?
「ソンタ殿! 今助けるぞ!」
少女魔王は、こっちを睨みながら、そう宣言した。 む?
「助ける……?」
呼び掛けられた当のソンタが、きょとんとした。
「ちょっと待つっす、俺達は――」
キースがそう言った瞬間――背後から、槍を持った男が飛びかかってきた。
†††
「くうっ!」
俺はノエルに構えられながら、ケルンが背後から飛び出し、不意打ちを仕掛けるのを見ていた。そうか、ノエルは陽動だったのか。――しかし、その不意打ちは失敗した。
突如、表れた光のバリアーみたいなものが、目の前の三人を包み、ケルンを弾き飛ばしたからだ。
(え、何あれ、魔法?)
ケルンはすぐに体勢を立て直す。
「――次から次へと、何なんすか!」
猫目の青年が、弓に矢を構え、放った。矢が弓から離れる瞬間、ハープみたいな不思議な音がする。
「! ……キース、それ」
栗色の髪の女性――うわ、女優みたいなキレイな人だな――が、つらそうに眉をしかめた。
「……ああ、悪いっす、そっちは任せたっすよ!」
そう言って、弓使いの彼は、軽やかな動きでケルンの攻撃をかわしつつ、矢をケルンに放つ。
俺は、ケルンの周りで風を操って、矢を逸らした。
ケルンは一瞬ノエルに目配せした後、弓使いの青年に意識を集中させた。
遺跡の壁を蹴って跳び、走り、攻撃を繰り返しながら、俺達から徐々に距離を取る。
恐らくは、弓使い側も、俺達から離れたところで戦いたがっていたはずだ。
あの弓の能力は、どうやら敵味方を選べないのは、さっきの様子から確かだ。なら、弓使いは、「幻惑の弓」の能力を使うために、味方から離れるはず。
しかし、ケルンはその誘いにあえて乗った。耳を塞いでいるケルンは、弓の能力が効かないからだ。
さて、俺達は、ソンタを助けないといけない。
大丈夫、俺の能力で何とかなる。俺は威嚇のために、銀色の風を、渦巻かせた。
しかし――
「聖剣様! あれが本当に魔剣ならば、対抗できるのは……!」
そう言って、相手の剣士が構えた白と金に輝く剣。
まるで、俺の色違いだった。ということは。
†††
う、うううううー!
セラの手の中で、私は超テンパっていた。
いや、対抗って言われてもさ!
あの魔剣とかいうの、明らかに風を操ってませんか?
能力の万能感ハンパないよ? 攻撃性能は私より上じゃないの?
そんな私の混乱は誰にも伝わらないわけで。
ただ、セラも緊張しているのか、私を握る力がいつもより強い気がする。
そしてセラは、魔王の少女を睨んで言った。
「あなたが魔王だと言うなら――尋ねたいことがある! なぜ、僕の村に、ゴーレムを仕掛けた!」




