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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第二章  使い手との旅
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勇者と旅する私(05)


 †††


 あれから、キースの魔法の効果が解けて、我に返ったセラが、顔を真っ赤にして慌てたり、街の人達の盛大すぎる見送りを受けて、街を慌ただしく出たりと、色々なことがあった。


 なんやかんやの末、セラと私、キース、そして魔族の青年の三人は、遺跡地帯の中を進んでいた。



「さてと、もういいっすかね」


 街から十分に離れたところで、キースは魔族の青年を後ろ手に縛っていたロープを解いた。


「……ごめんね、こうしないと皆、納得しないって……」

「いえ、いいんです。お二人が私を助けてくれたのはわかってますから」


 魔族の青年は、改めてセラとキースに礼を言って、頭を下げた。


「ありがとうございます。あのままだったら、私はどうなっていたか……」

「そもそも、何で魔族の兄ちゃんが、人間の街に一人でいたっすか?」


 キースが尋ねると、彼は首を横に振った。


「私も分からないんです。私は遺跡地帯を見回ってたはずなんですが、気が付けばあの街に倒れていて……」


 不可解な話に、セラとキースは顔を見合わせる。


「……もう少し詳しく教えてもらえる?」

「はい。申し遅れました、私はソンタといいます。魔道具の研究をしています」


 挨拶する彼はとても礼儀正しかった。



「魔族の村では、遺跡地帯に人間や、許可を得ていない者が入り込まないか監視するために、双子水晶という魔道具を使っているのですが」


 双子水晶というのは、お互いに離れた場所の景色を写す魔道具だそうだ。Skypeみたいなものかな。

 村で監視している水晶が、急に写らなくなったことから、遺跡側に設置している方の水晶の様子を見に、ソンタさんは遺跡地帯に入ったらしい。


 こんな細いお兄さんが一人で行ったの? 危なくないの? と思ったんだけど、ソンタさんは魔道具、つまりは古代の文明について研究していて、よく遺跡地帯で調査をしていたから、大丈夫だと思ったらしい。


「なのですが、遺跡に入ってしばらくしたところで、意識を失って、気が付けばあの街にいまして」


 キースは首を傾げた。


「拉致されたんすかね? でも何のために」

「双子水晶を修理されたら不味いと思った、人間側の仕業では?」


 ソンタさんの言葉をキースは否定した。


「それでも、わざわざ人間の街に放り出す理由はないっす。遺跡地帯は結構広いっすよ? ソンタさんを担いでいくのも一苦労っす」


 キースの意見ももっともなので、ソンタさんも腕を組んで唸った。


「……ともかく、これからどうしましょうか?」


 セラが言うと、ソンタさんは困った顔をした。


「私としては、自分の村に帰りたいのですが……」

「俺たちもこうなった以上、遺跡地帯を適当にふらふらしてから、こっそり”煉瓦の街”の人たちに気付かれないように帰るのがいいかもしれないっすね」


 うーん。任務を与えてくれた王様には申し訳ないけど。


「それでいいですか? 聖剣様」


 ピカッ。任せるよー。

 私達のやりとりに、ソンタさんは目を丸くした。


「……え? 聖剣?」


 わなわなと震え出すソンタさん。あ、しまった。

 聖剣の存在は、魔族の彼を怖がらせたかも――なんて思っていると。


「すごい! もっとよく見せ――ぶあっ」


 セラの腰に提げられた私目がけて突進してきたソンタさんを、ついうっかり結界で弾いたのは、悪くないと思う。

 吹き飛ばされたソンタさんは、すぐに回復して謝った。


「すみません、つい、魔道具研究家の血が騒いでしまい」

「はあ……」

「あ、あの、女性に向かって我を忘れて突進するなんて、失礼しました」

「聖剣様、怒ってらっしゃいますか?」


 ピカピカ……と2回点滅する。怒ってはないけどさ。

 そもそも、ソンタさんの言ってる女性って、私のことじゃなくて、セラのことだからね。


「しかし、意思を持って対話が可能な魔道具とは……」


 ソンタさんは私に興味津々だ。


「珍しいっすか?」

「魔道具は、命令を受けて動くのが常識ですから……あ、いえ、遺跡の壁の一部にに、そんな記述があったかもしれませんね……魂を宿す魔道具・ラプラスという記述だったかな……」


 え、何それ。気になる。私みたいなのが他にいるってこと?


「魂を宿す魔道具、ですか?」

「ええ、残念ながら、遺跡の壁は崩れていて、それ以上読めなかったのですが」


 ううむ、残念。


「となれば、対となる存在の魔剣ラグナロクも……?」


 ぶつぶつ呟くソンタさん。魔剣ラグナロクか、それっぽい名前だなあ。



 おしゃべりはそれくらいにして、私達はどんどん歩いて行った。や、まあ、私だけはセラの腰にぶら下がってるから歩いてないけど。

 大昔に滅んだっていう文明の、崩れた建物の間を進んでいく。古代ギリシャとかエジプトとかの遺跡ってこんな感じかなあ。申し訳ないが、ゲームのイメージが先行してしまう。


「……結構歩いたっすねえ」

「そろそろ、人間と魔族の領地から中間地点くらいかな?」


 セラが太陽を見上げながら言うと、ソンタさんは頷いた。


「そうですね……あっ!」


 ソンタさんは、遺跡の台座らしきものを見つけて近付いた。台座には、布に巻かれた丸いものが置かれている。


「どうして、こんな……」

「何ですか、これ?」

「双子水晶ですよ。こんな風に布で隠されていたら、景色が映らないはずです」

「へえ……」


 興味を持って、セラが覗き込む。

 何重にもしっかり巻かれた布を、ソンタさんはほどいていった。


「ああ良かった、これで村の皆にも……」


 さらり、と布が外され、透明な水晶玉が表れた。そこに映っていたものを見て、私達は驚いた。


「――えっ?」


 そこには、驚いた顔の、鎧を来た男性と、可愛い金髪の女の子が映っていて、こちらとしっかり目が合った。


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