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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第一章 剣に転生した兄妹
2/61

聖剣になった私(01)


 †††


 うーん、異世界転生って本当にあるんだなあ。

 最近、ネット小説でよく読んだよ。あれは本当に色々なシチュエーションで転生するよね。面白いから、好きだよ。

 だけど、いざ自分が異世界転生するとなったら、もう少しマシな状態で転生したいなあ……。


 たとえ、断罪直前の悪役令嬢でも、現代知識チートを駆使して何とかするよ! ……と言いたいとこなんだけど、今の私にはその「何とか」が何一つできない。

 そもそも、転生っていうか、生きてるといっていいのかなあ?


 お兄ちゃんと部屋でうだうだゲームしてたら、火事に巻き込まれて死んだ、ごく普通の女子高生だった私。

 気付けば、中世ヨーロッパみたいな世界――もっと言えばよくあるゲームみたいな世界――で、「聖剣エクスカリバー」になっていました。



 聖剣の私は、立派な教会っぽいところで、丁寧に保管されていた。

 何日かに一回、教会の神父さん? みたいな人が、錆びないようにーって、ちゃんと手入れをしてくれるので、私は常にピカピカの状態。白銀の剣はまるで鏡みたいだ。

 私が自分自身が聖剣だって知ったのは、その神父さんが、教会のシスターさんに説明してるのを聞いたから。


 どうやら私の体となっている聖剣は、大体、二百年前くらい前まで続いてた、魔族との戦争に使われた、すごい剣らしい。この教会では、その聖剣を代々大事に保管してると、神父のおじさんが誇らしげに話していた。

 何で、そんな剣に、転生しちゃったのかなあ。……いや、この剣自体は大昔からあったらしいから、剣に私の魂だけ宿った、というのが正しいかもしれない。


(はああ……)


 私はこの世界に来て、何度目になるか分からないため息をついた。

 いや、ため息っていっても心の中でね。剣だから、口も鼻もなくて、息してないから、気分的なものだけど。


 この世界に転生した時、私はパニックになった。だって、体は動かせない、声も出ない。

 最初に見えた景色は、教会の大聖堂の屋根だった。火事で死んだ記憶があった私は、「私死んだのか! ここは天国か!」なんて思って、心の中でぎゃーぎゃーわめいた。

 わめき疲れて、ちょっと落ち着いて、辺りを見回して――自分の体が、ゲームなんかでよく見る、両手剣になっているのを理解した時、再びパニックになった。

 それでも、どうにか状況を把握しようと、その場でじっとしているうちに――いや、体は動かないから、じっとしているしかなかったんだけど――大体、一週間くらいかけて、私は自分の状況をおおまかに理解したというわけ。


 理解はしたんだけど――だから、どうしろと。

 異世界とか、聖剣とか、そんなシチュエーションに、ちょっとときめいたのは確かです。ゲーム好きだから。

 けどね、剣なんだよ、私。

 ゲームでいったら、キャラクターじゃないの。装備品なの。


 この体、自分の意思では何一つできない。無機物らしく、食事も睡眠も必要ないけど、それって逆に考えれば、眠ることもできないわけで――暇すぎるのだ。

 退屈は精神を殺す。って、よくお兄ちゃんが言ってたけど……このまま、一生――いや、そもそも剣に寿命があるのかな? ――ずっと退屈してるだけだと、確かに、精神的に死にそう。


 異世界転生し、私は地味にピンチを迎えていた。



 異世界転生から20日。

 大聖堂の天井にある、大理石の黒いつぶつぶ模様の数を数えていた私のところに――焦った様子で神父さんがやってきた。


(こんにちは、神父さん。でも、昨日磨いたばっかじゃなかったっけ?)


 と、心の中で挨拶するも、神父さんに聞こえるはずもなく――神父さんは私を抱え、教会から出ていく。


(おお? この大聖堂の中から出るなんて初めて!)

 

 退屈しきっていた私は、どんな変化も大歓迎だった。

 ゲームにマンガ、アニメにネット、退屈を知らない現代人は、退屈に弱いのだよ。

 しかしあれかな、あんなに大事にしていた私を持ち出すって何だろう?

 ご開帳ってやつなのかな。どうやら私聖剣は、この教会のシンボル的な扱いみたいだし。

 そんなことを考えながら、神父さんに運ばれた私は、鎧を着た人に渡された。おお、騎士かな?


「これが聖剣か……」


 騎士さんはうやうやしく私を受けとる。あ、やっぱ神父さんさんよりゴツい手だ。

 そして、次に騎士さんが言った言葉に、私は驚喜した。


「では、聖剣にふさわしい勇者の選定を始める」


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