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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第二章  使い手との旅
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勇者と旅する私(04)


 †††


 取り囲まれて乱暴される、魔族の青年を見て、セラが、ぐっと拳を握りしめ、唇を噛んだ。


(セラ……)


 私は、この世界に来たばっかりで。しかも剣になったものだから、色々分からないことも質問できなくて。だから、この世界の事情については、全然知らないと思う。

 人間とか魔族とか、昔は戦争してたとか。……色々な確執はあるんだろうなと思う。

 だけど、日本人の平和ボケした感覚でここはいっちゃう。


(弱い者いじめは、よくないよ!)


 私は輝いた。目一杯、その存在を知らしめるために。


「聖剣様!」


 セラが腰に下げた私が強く眩しく輝いているのを見て、尋ねた。


「助けて……よいのですか? 僕はその、勇者で……魔族と戦うかもしれなくて……」


 ピカッ! 当然! 

 だって、セラも彼を助けたいと思ってたんでしょ?


 真面目で、正義感が強いんだなってことは、ちょっと一緒にいたらすぐ分かったよ、セラ。

 そんなセラが勇者に名乗り出たのは、きっと皆を守りたいからで、魔族を倒したいからじゃないって、私は期待してる。

 聖剣の私がセラを選んだのは、女の子同士(違ったけど)なんて単純な理由だったけど、でも、勝手だけど勇者はそうあってほしいんだ。


 セラはそんな私の期待に答えて――人をかき分け、前に出る。今まさに、魔族の青年に向かって投げられた石を、セラは私を抜き、剣で受けて弾いた。


「やめてください!」


 凛として青年を守るように立ちはだかるセラは綺麗で、そして格好よかった。



「何だ嬢ちゃん、お前も魔族か!」

「僕は人間です」


 そう言ってセラは、服の襟元を引っ張って胸を見せ、太陽の刺青を見せた。


 ……セラが胸を見せる時、なんか男どもから、おおっとどよめく声があがったのは無視……いや、やっぱりムカつく!

 あのね、セラは男の子なんだよ! 胸の小さい女の子じゃないんだよ!


「魔族の彼が盟約を破り、人間の街に来たのは問題ですが、こうして暴力で解決するのは――」

「うるせえ! 余所者が口出すな!」


 魔族の青年の腕をつかんでいる男が、セラに怒鳴った。


「魔族と戦争になったら、真っ先に巻き込まれるのはこの街だ! こいつは密偵に決まってる!」


 さっきから、男の人力ずくで青年を押さえ付けている。青年が痛がる様子が見ていられない。


 ……えいっ。聖剣の能力発動!


 セラと青年だけを結界の中に残して、騒ぐ男の人を弾いちゃう。


「うひゃっ!?」


 急に見えない力で吹き飛ばされ、尻餅をついた男の人は目を白黒させた。


「ま……魔法! こいつ、魔道具使い!」


 広場は大騒ぎになった。ただでさえ興奮してた人達は、私とセラを、恐怖の混じったギラギラした目で睨んで……あ、あれ?

 なんかヤバい感じ?


「ど……どうしましょう、聖剣様」


 セラが私に小声で聞くけど、私も心の中は冷や汗だらだらだよ! 顔がないから顔に出ないけど!

 どうしよう。かといって、町の人をむやみやたらに攻撃するわけにもいかないし、そんな絶体絶命の状態で――


「……あー、もう、仕方ないっすね」


 キースが、人混みの後ろでぽつりと呟き、背負っていた紫色の弓を手に取った。そして、弦を指で静かに弾く。

 ポロン、と不思議な音がした。

 キースは音楽でも奏でるように、弦を数度続けて弾き、静かに言う。


「……みんな、大人しく……静かにするっすよ」


 それだけで、劇的に変化が起きた。


 騒いでいた町の人達は、ぴたりと黙り、とろんと眠たそうな表情になっている。

 あれがキースの魔道具の魔法? とにかく、これは逃げるチャンスだよ!

 そう思ってセラを見れば――


「…………。」


 セラも眠そうな表情でぼうっとしている。術にかかってるー!? てか、魔族の彼に至っては、寝てる!

 どうしようキース、とピカピカ点滅してキースを呼ぶと、キースは苦笑しながらこっちに歩いてきた。術の効果なのか、みんなおとなしく道を開けてくれる。


「聖剣さんにはさすがに効かないんすね……これ、魔法の範囲を選べないんすよ」


 キースは苦笑して、弓を楽器のように弾き続けながら、セラの横に立つ。


「しかもこれだけ騒ぎになっちゃったら……さすがに町長さんが来ちゃったっす……」


 本当だ。なんか偉そうな人がお付きを連れてこっち来てる。


「どうするべきっすかねえ。聖剣さんにいい考えあります?」


 だから何で私に聞くの。

 はい、か、いいえ、しか答えられないんだから難しい質問しないでってば。

 私が2回点滅したのを見て、キースはそうっすよね、と言ってため息をついた。


「聖剣さんも協力してくださいっす……」


 え?

 キースは、ぼんやり虚ろな表情のセラの腕を掴み、私を高く掲げさせた。そして、普段からは想像できないような大声を張り上げる。


「控えよ! この者は聖剣に選ばれし勇者なるぞ! 我々は王命を受け、今より遺跡地帯、魔族領に向かう!」


 おおーっ、と半催眠状態の人々がどよめく。


「この魔族の青年は、捕虜として我々が身柄を預かる! 異論はないな!」


 ははーっ、と人々がひれ伏す。

 ほえ?

 混乱状態の私に、キースが小声で耳打ちする。


「聖剣さん、ピカーって輝くっす! 演出するっす!」


 あっ、はい!

 言われるままに神々しく輝いてみる。


「勇者様! 勇者様!」


 な、なんか変なコールが始まった!?

 キースは深いため息をついた。


「彼をここに残すと殺されかねなかったし、そうなると戦争の引き金になりかねないっす……。俺らで預かるために、無理矢理理由をつけたっすけど……ああ、もう後には引けないっすね……」


 街に入る前、目立たないようにって言われていたことを、今更思い出した。

 でも、理由は戦争回避のためなんでしょ? だったら、これで良かったんだよ。


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