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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第二章  使い手との旅
18/61

魔王と旅する俺(04)


 †††


 自分の手にしていた水晶に、急に人の顔が映った。

 驚いて、一瞬動きの止まったケルンだったが、次の行動は素早かった。


 すぐさま、自分のマントで水晶を覆い隠す。そして荷物から適当な布を引っ張り出し、水晶をぐるぐるとマントの下で包んでしまった。


「な、何なのだ、今、水晶に顔が映ったな?」

「水晶はやはり、壊れてはいなかったのでしょう……しかし、これは不味いことになりました」

「どういうことなのだ?」


 俺も、ケルンの言わんとしていることが分かる。

 ノエル、双子水晶の性質を思い出すんだ。片方が片方の景色を映しだす。ということは――


「向こう側に、我々の顔が見られたということです」



 俺は、水晶に映っていた人の顔を思い出す。

 水晶に映っていた顔は三つだった。

 栗色の長い髪を三つ編みにした女性と、猫みたいに細い目をしたくせっ毛の青年、あと茶髪の青年だった。

 ただ、すぐにケルンが隠してしまったので、あとは思い出せないが……。


「向こう側……映っていたのは誰なのだ?」

「おそらくは人間です。弓を背負っていた青年がいましたが、あれは現在人間側が所持しているはずの、『幻惑の弓』という魔道具なのです……」

「よ、よく気付いたのだな?」


 俺も思う。よくあの一瞬で。

 するとケルンは苦々しげに言った。


「忘れもしません。あの魔道具は、私の家に伝わっていたものの一つ……姉と共に、人間に奪われた魔道具なのですから」

「……。」


 ……シリアスな空気に、俺は何も言えない。

 ノエルが心配そうな目を向けたのに気づき、ケルンは、失礼しました、と言って、すぐに感情を消し、冷静な表情に戻る。


「そして、その横にいた茶髪の青年、彼がソンタでしょう。聞いていた特徴に合っていますし、村で会った彼の父親にそっくりでしたから」


 うーん。

 整理するとこういうことか?


 遺跡にあった双子水晶は、人間側が持っている。

 そしてそこにソンタがいる。


 不味い状況だと予想はしてたけど……もうこれは、人間の仕業で確定だろうな。唯一の救いは、そのソンタがまだ生きているということだけど。


「人間に奪われ、捕らわれているのであれば……助けなければならないな」


 ノエルはすっくと立ちあがり、胸を張った。


「ケルン。そなたの姉の話、我は初めて聞いたぞ。もう二度と、そんな悲劇を起こさせない。魔王として、我が民を一人とも奪わせないことを、我は誓う」

「姫様……」


 ケルンは、感極まった目でノエルを見つめる。


「さあ行くぞ、ケルン!」

 その時――ノエル目がけ、無数の針が飛んできた。



 俺は即座に風を作り出し、全方位に向けて竜巻を起こす。

 ノエルのすぐ近くに、勢いを無くした針が転がった。ノエルはぞっとした様子で、顔を青くする。あと一瞬遅れていたら、全身を針に貫かれるところだった。


「さすがは魔剣ラグナロク……一筋縄ではいかないようね」

「何者だ!」


 ケルンが吠える。

 すると、遺跡の影から巨大なゴーレムと、そのゴーレムの肩に乗った、少女が現れた。

 少女は、雪のような白い白髪に、透き通るような白い肌、輝くような金の瞳をしており――人間離れした美しさをしていた。


「……ふふっ」

「貴様……人間の手の者か」


 ケルンが睨む。俺も目はないが、できるだけそちらに意識を集中している。気分的には睨んでいるつもりだ。


 あの白い少女は、俺に対して魔剣ラグナロクとはっきり言った。ということは、その持ち主が魔王であることも当然知っているわけで――魔王に攻撃してくるのだから、当然人間と思われる。ケルンはそう考えて、人間の手の者と判断したのだろう。

 白い少女は不気味にほほ笑んだまま、何も答えず、ゴーレムの肩から、ひょいと飛び降りた。音もなく着地し――冷たい声でゴーレムに命令した。


「潰してしまいなさい」


 ゴーレムが両手を開く。するとその両手には無数の穴が開いており――マシンガンの如く、針を大量に打ち出してきた。


「ら、ラグナロクっ!」


 ノエルが俺を呼んで剣を掲げる。俺は応えるように風を吹き出し、針を吹き飛ばしてノエルとケルンを守る。

 だが――ゴーレムは両手から針を打ち出したまま、そのまま相撲の突っ張りのような姿勢で、ガンガン前に進み出てくる。


「く、くう……」


 不味いぞ、これ! 仮に針を俺の風で吹き飛ばし続けたとして――ゴーレムの巨体が迫ってくるのはさすがに吹き飛ばしきれない。

 風を小さく一点に集中させて吹き出し、刃のように打ち出すこともできるが、そうすると針が防ぎぎれない。


「うふふふ……」


 白い少女は、不気味に笑いながら、俺たちの戦いを見ていた。


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