勇者と旅する私(02)
†††
キースは猫のように目を細め、セラと私を見ていたが、ぽつりと呟いた。
「もしかして、その剣――賢いんじゃないっすかね」
キースの一言に、セラはきょとんとした。訳が分からないというように聞き返す。
「賢い……剣が?」
「うーん、何となくっすけどね、何かこっちの言うことを理解してる感じがするんすよ」
わああっ!?
まさかの発言に、私はピッカンピッカン点滅して答える。セラがちょっと眩しそうに目を細めた。
「えっ、急に何?」
「うーん、反応してるっす。……セラがやってる訳ではないっすよね」
「まさか……というより、僕はこの剣を魔道具として使いこなせてるとは言いがたいと思う」
キースは明らかにセラではなくて、私の方を向いて、恐る恐る聞いた。
「……はい、なら1回。いいえ、なら2回光れるっすか?」
ピカッ! 私は即座にイエスの返事を返す。
セラとキースが目を丸くした。
(こ、これは……剣に転生して諦めていた、他人とのコミュニケーションが可能に!?)
教会にしまいこまれていた頃に比べると、セラとキースと一緒に旅に出てから、ずっと退屈しなくなった。
二人の会話に割り込めなくても、聞いているだけでも楽しかった。
けど、話せたらずっと嬉しいにきまってる。
諦めていたコミュニケーションが、まさか叶うのか! ここは何としてもアピールしなければ!
セラは半信半疑で、私に尋ねる。
「せ、聖剣……様は本当に意識があるんですか?」
ピカッ。イエスの返事。
「んー、答えが分かってる質問しないと。俺は女っすか?」
ピカピカ。これは、ノーの返事ができるかどうかの確認だね。
更にキースは、指を3本にゅっと立てた。
「これは何本っすか?」
ピカピカピカッ。3回点滅する。
「1+1は?」
ピカピカ。2回点滅。
キースは感心したように腕を組む。
「完璧っすね。こっちが見えてるし、それなりの知能があるっすよ」
「そ、そんな……」
セラは私を地面に置くと、素早く半歩ほど距離を取った。
(……これはまさか、気味悪がられた?)
でも、自分の持ち物が実は意識を持ってたと分かったら……うう、私でも気色悪いとか思うかも。
ショックを受けていると、セラは――勢いよく頭を下げた。
「す、すみません! まさか聖剣様に意識があるとは知らず……振り回してしまい申し訳ありません」
……。
……あ、あれ?
地面に置かれた剣に頭を下げるセラ。すごくシュールだ。
振り回してすみませんって……あれかな?
そういえばセラ、私を使いこなせるよう、私で時々素振りしてたもんね。いや、剣だから、そこはむしろウェルカムなんだけど……どう伝えるべきか。
とりあえず「気にしてないよー」と言いたくて、否定の意味で2回点滅してみる。
しかしセラは勘違いを続ける。
「いいえ……お許し頂けないということですか?」
ち、違う違う! うう、どうしたらいいのよ!
混乱して、切れかけの蛍光灯のごとく点滅しだした私と、困惑するセラに、キースが助け舟を出してくれる。
「セラ、聖剣さんには、はいかいいえで答えられる会話をしないとっす」
「そうだね……え、ええと……」
言葉に詰まるセラに、キースが聞く。
「聖剣さんは気にしてないっすよね? そもそも、聖剣さんがセラを選んだんっすから」
ピカッ。その通りだよ。
「よろしいのですか……僕が、聖剣様を……その、使わせて頂いても」
ピカッ。使って下さい。
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」
うん、良かった。
まあ、欲を言えば、セラと私の年齢――前世のだけど――は、そんなに変わらないだろうし、変にあらたまって敬語を使わないでほしいな、なんて思う。
けど、そこまでのコミュニケーション能力はないから、とりあえず肯定の意味で、元気に1回輝いておいた。
「ちなみに聞いてもいいすか?」
何かな、キース?
チャラ男と思ってたけど、今私の中では、ぐんぐんと君の株が上がってるよ!
「聖剣さんは……男っすか?」
……。
この体で性別があるのかは微妙だけど、2回光っておいた。
というかキース、剣相手に性別を尋ねるのか。
「え? 女性なのですか?」
うん……一応。




