勇者と旅する私(01)
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ごく普通の女子高校生だった私が、聖剣に転生してしばらく経った。
勇者を選んで、その勇者と一緒に、平和のために旅をする。うん、聖剣らしいと思う。
セラとキースは、街道を歩き、森を抜け、時に野宿もしながら、北にある遺跡地帯を目指していた。何と絵に描いたような冒険でしょう。
さて、私は、魔物が襲いかかってきたら、セラを守るんだー、と意気込んでいたんだけども。歩けど歩けど、スライム一匹たりともエンカウントしない。
……ひょっとしてこの世界、魔物とかモンスターがいない?
最初にセラと協力して倒したゴーレム、あれは背中を押すと動く人形――魔道具だった。王様の話でも、「村はゴーレムに襲われた」って言ってたし、スライムとかゴブリンとか、そういう魔物的な生き物はいないと考えていいみたいだった。
「明日には遺跡地帯に一番近い町につくっすよー」
キースは伸びをしながら言う。
夜になり、セラとキースは森の中で野宿をしていた。たき火をはさんで向かい合うように座る。
「早く宿のふかふかベッドで寝たいっす、風呂入りたいっす」
「そうだね」
セラもキースに同意する。私は剣だからあんまり感じないけど、二人は汗もかいているし、さっぱりしたいだろう。
するとセラは私を置いて――服を脱ぎ始めた。
「うひゃあっ!?」
なぜか声をあげ、飛び退くキースを、セラは見た。
「なに、どうしたの」
「い、いや……何でもないんすけど……」
視線を逸らすキース。その頬が赤いのは、たき火の炎のせいだけじゃないよね?
うん……まあ、キースの奇行も分かる。セラは男。男なんだけど、分かって見てもやっぱり美人さん。
急に服を脱がれると、ドキッとする……のかな、うん。
そんな自覚のないセラは、濡らした布で体を拭いていた。
私は全方位ある視界をシャットアウト。見た目は剣でも、中身は乙女なのだ。 ただまあ……キースが、両手で顔を覆いながらも、ちらちら上半身裸のセラを指の隙間から見ているものだから、私も完全に視界をシャットアウトできない。
セラは私が守るのだ……色々な意味で。
ちなみに、私、少年漫画は大好きだけど基本的に原作派。女の子の少年漫画ファンが皆BLカップリング好きかっていうとすごい偏見だよ。
そんなことを考えていると、私はセラの体に刺青が入っているのを見つけた。 ちょうど鎖骨の間あたりに、太陽みたいな小さな模様が刻まれている。
(……何だろう?)
セラは服を着直すと、次に荷物から櫛を取り出し、三つ編みにしていた髪をほどいて、とかし始めた。
うわあ、色っぽい。というか、何でそんなに髪がサラサラなの。私自身にはもう髪がないのに、嫉妬しそうだ。
キースは、そんなセラを見て、ぶつぶつ呟いていた。
「何で髪なんかとかしてるんすか……」
「もうすぐ町につくなら、それなりに身だしなみは整えた方がいいかなって」
「そうじゃないっすよ! 顔が可愛いのは仕方ないとしても、何で髪を伸ばしてるんすか!」
無茶苦茶なキースだけど、言いたいことは分かるよ。髪が長いことも、セラが女の子に見える要因だよね。
それにセラは、少し目を伏せて答えた。
「願掛け、かな」
「?」
「……僕の村は、ゴーレムに襲われたんだ」
「まさか、”風の村”の出身っすか?」
(あ、ひょっとして)
私の中で、セラが王様の前で見せた辛い表情の意味が繋がった。
……ゴーレムに襲われた村は、セラの故郷だったのか。
「村を焼き尽くすゴーレムに、僕は、何もできなかった……。勇者に志願したのは、そのためだよ」
「仇を取るまで……髪を伸ばすつもりっすか?」
セラは、ため息をついた。
「切った方がいいかな?」
「いやいや、勿体ない……ん? 俺は何を言っているっすか……」
混乱しだしたキースは放っておいて、私は暗くなってしまったセラを心配した。
そんな理由があったなんて。
私は元気付けるように、そっと剣に光を灯した。金色の暖かい光が、セラの頬を照らす。
「……あれ? 剣が輝いてる」
うん、説明しよう!
私、聖剣は「結界」の能力を使う時に聖剣の刀身が光輝く。
この結界は、何を結界の範囲から弾くか・中に入れて守るか、が選べる。だから、「何も弾き出さないで、結界を発動する」ことで、剣を自由に輝かせることが可能なのだ!
セラは急に輝きだした私を、不思議そうに見ている。
「どうしたんだろう、何かに反応してるのかな?」
……う。伝わってない。
「何だか、剣がセラを元気づけてくれてるみたいっすね」
おお、すごいよ、キース! その通りだよ!
私の中でキースの株が上がった。
「まさか……?」
セラは私をしばらく眺めていた。私も答えるように、ちょっと点滅してみる。
ふっ、とセラが笑った。やっぱりその笑顔は、とっても綺麗だった。




