魔王と旅する俺(01)
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ごく普通の男子高校生だったはずが、なぜか異世界で魔剣になり、ノエルという少女――これが魔王らしいのだが――と旅をすることになって、しばらく経った。
ノエルとケルンとの旅は順調である。少女のノエルの足では、とてつもなく遅い旅になるんじゃないか? と俺は最初心配していたが、そんな懸念はすぐに吹き飛んだ。
ケルンがノエルを背負って走っているのだ。そしてケルンが走ればとんでもなく速い。飛脚か。
よくそんな重そうな鎧を着て、さらに大荷物と子供一人を背負って走り続けるなと思ったが、どうやら、ケルン自身は装備している「癒しの鎧」の効果で、疲れを感じていない――正確には、疲れてもすぐに回復するらしい。
俺を運ぶノエル、を運ぶケルンに背負われながら、広がる広大な草原や山々をぼーっと眺める。
絶景だな。地球で言うなら、アルプス辺りの景色はこんな感じかもしれない。俺の住んでたとこは、まあまあ都会だったから、緑が目に優しい。
さて、旅の間、俺はこの世界について、色々なことを学んでいた。
異世界らしく、この世界には、魔法が存在する。
しかしどうやら、魔法の力を持つのは、魔道具と呼ばれるアイテムだけらしい。つまり、魔道具がなければ、人間も魔族も、一切魔法が使えないようだ。
以前、ケルンが俺のいたダンジョンの扉を、呪文を唱えて封印していたが、あれはケルン自身が魔法を使ったのではなく、扉の力ということのようだ。
じゃあ、魔道具はどうやって作るのかというと――現代の技術では作ることができない。
魔道具を作る技術ははるか古代に失われてしまっている。ケルンの鎧にしても、ノエルの手袋にしても、現存する魔道具は全て古代から残っているものらしい。
この世界の文明は、見たところ中世ヨーロッパレベルだろう。そんな中、これらの魔道具はオーパーツなわけで、とても貴重だ。
その魔道具は、人間と魔族が互いにいくつか持っている。しかし、人間と魔族の国の境界にある地域、かつて古代文明があった「遺跡地帯」と呼ばれる場所にはまだ眠っているのではないかとのことだ。
かつては、人間と魔族が、遺跡地帯に眠る魔道具を目当てに争ったらしい。
そして、今、懸念されているのは、人間が戦争のために魔道具を大量に確保してるんじゃないか、という噂が流れていることだ。もし人間が、こっそりと魔道具を集めていたら、戦力差がすごいことになる。
――何で俺が、こんなにこの世界の事情に詳しいかって? ケルンが、ノエルに繰り返し繰り返し講義するのを聞いてるからだ。
「ですから、遺跡地帯を偵察するのです。偵察だけですよ、分かっていますか、姫様」
「うむ!」
何度も念押しするケルンと、威勢よく返事するノエル。
……本当に分かっているのかな。
歩き続け、俺達は”遠見の村”についた。
「ノエル様! なぜこのような田舎の村に?」
村人達は、ノエルが来たと知ると大騒ぎ。まあ、だよな、魔王ってことは、魔族の国の王様なんだし。ちなみに、村の若い女の子は、ケルンの姿を見てきゃーきゃー言ってる。やっぱりケルンって、この世界の基準でも美形なのか……。
ノエルは胸を張って堂々と立った。
「うむ。遺跡地帯の様子を見に来たのだが、何か変わった様子はないか?」
「……!」
村人達の間に動揺が広がる。これは何かあるな。
村の代表らしい老人が進み出ると、ノエルに頭を下げた。
「申し訳ございません、実は……双子水晶の様子が、おかしいのでございます」
「双子水晶……?」
ノエルが首を傾げたので、ケルンが説明する。
「二つで組になる水晶玉の魔道具です。水晶は、互いにもう片方の水晶の向こうの景色を映し出すのです」
なるほど、テレビ電話みたいなもんか。
「この村では確か、遺跡地帯に片方の水晶玉を置き、常に様子を見張っていたはずですね?」
ケルンが村長に聞くと、村長は頷いた。
「はい……しかし、数日前より、水晶が真っ暗になってしまいまして」
この村では、人間の侵攻がないか、常に交代で水晶を見張っているらしい。というより、村そのものが遺跡地帯の見張りのために存在しているようだ。
そして、ある時、村の側の水晶が急に真っ暗になってしまったらしい。
「遺跡に置いてある方の水晶が、壊れてしまったのだろうか?」
ノエルは首を捻る。村長は再び頭を下げた。
「分かりません――そこで、ソンタという魔道具に詳しい者に、様子を見に行かせたのですが……」
「まだ帰っていないのか!?」
むむ、事情は分かった。これは不味い事態かもしれない。
何しろ、魔族の村に対して、ゴーレムの襲撃があったばかりなのだ。国境周辺では何があるか分かったものじゃない。
ノエルもそう思ったのか、ケルンを振り返った。
「すぐにソンタ殿を助けにいくぞ!」




