魔剣になった俺(05)
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ノエルは、ゴーレムを倒したことに、しばらく呆けていた。しかし、ケルンが呻きながら膝をつくと、はっとして、その大きな腕にすがりつく。
「ケルン! 怪我は……!」
「申し訳ありません、姫様……少し休めば、治ります」
そ、そんな訳あるか。かなりの重症だろ?
しかしノエルは、ほっと息をついた。
「そうか、癒しの鎧の効果があるのだったな……良かった、なら、しばらく休んでくれ」
ふむ。ケルンの着ている鎧は、傷を治す効果があるのか。そういうアイテムあるよな。それなら、時間はかかるようだが、問題なさそうだ。
逃げて遠くから様子をうかがっていた村人達も戻ってきた。ノエルが手を振ると、歓声が上がった。
しばらく休むと、本当に傷は治ったらしく、ケルンは立ち上がった。倒れたゴーレムに近付き、観察する。ノエルもおっかなびっくりついてくる。もう動かないよ、多分。
しかし、近くで見ると本当に大きいな。
「このゴーレムを倒すとは、さすがは姫様……魔剣を使いこなしたのですね」
ケルンは感動に満ち溢れた目でノエルを見る。ノエルは一瞬、ぽかんとしたが、すぐに胸を張った。
「うむ! 我は魔剣に認められた魔王だからな!」
おーい。いや、間違ってはないんだけどさ。
ひとしきり親馬鹿タイムを堪能した後、ケルンはゴーレムの近くにしゃがみ、考え始める。
「魔道具であるゴーレムが勝手に村を襲うはずがない……やはりこれは、人間が送り込んだものなのか」
「人間はやはり、魔族相手に、戦争を起こすつもりなのか?」
ノエルが不安そうに言う。ケルンは険しい顔をした。
「すぐには判断できませんが、人間は、長く封印していた、聖剣エクスカリバーを持ち出したとの噂があります……」
聖剣エクスカリバー。おお、やっぱりあるのな。魔剣がある時点でなんとなく察していた。
「しかし、急に罪もない、民を襲うなど、何を考えているのだ……父上は言っていたぞ、人間は我らと敵対しているが、決して馬鹿ではない。油断はできないが、話は通じる相手だと」
ノエルは唇を噛む。敵国とはいえ、急に理不尽に侵略してきたことが信じられないのだろう。
「……全ての人間が愚かではないかもしれませんが、我々に敵愾心を抱く野蛮な輩もいるでしょう。人間を侮ってはいけませんが、しかし、信じてはなりません」
険しい顔でケルンは思案し、ノエルに進言する。
「姫様、まずは偵察を送りましょう。人間達の動きを探るのです」
「……む」
ノエルはしばらく考えた後、頷いた。
「ではまず、城に戻り、人を選びましょう」
「その必要はない」
ノエルは胸を張った。俺、嫌な予感がする。
「このまま我らで人間の国に向かうのだ」
ケルンは即座に反対した。
「いけません、姫様、危険です」
「危険だからこそ、我が行くのだ!」
また始まった。
俺は話せないので、黙って聞いているだけだが、常識的に考えて、ケルンの意見に賛成だ。魔王様自ら、敵地にずんずん進んでどうするんだよ。大将は後ろにいなさい。
「ご自分の立場を理解してください。魔剣は、代々魔王しか受け入れないと聞いていましたから、姫様自ら出向いて頂きましたが、姫様は我が国の大切なお方なのですよ!」
だよなー、普通。
……いや、割と、国の王子王女自ら魔王討伐に行く物語って少なくないけどな。
大事な世継ぎが死んだらどうすんだ。「死んでしまうとはなさけない」では済まされないのだ。
「違うぞ、ケルン。国にとって一番大切なのは国の民、とりわけ未来を担う子供達なのだ」
いや、お前もまだ子供だよ、ノエル。
ノエルは、村を見渡した。死人こそ出なかったようだが、焼き付くされた家の前で、うなだれている人々がいる。その中には、小さな子供もいた。
「我は民を守るために魔剣を手に入れたのだ。それに、遺跡地帯に向かうなら、城に戻るより、このまま南に行った方が早い」
「それはそうですが……」
ケルンは、長いため息をついた。
「仕方ありませんね……お供いたします。ですが、これだけはお約束ください。あくまで、偵察だけです。人間と戦うことになれば、すぐ引き返すのですよ」
うむ、とノエルは頷いた。
結局こうなるか。何だかんだ、ケルンはノエルに甘いんだな。
村でゆっくり休み、次の日、俺達は南へと出発した。
魔族と人間の国の境界――遺跡地帯を目指して。
伊織とプレイしたRPGを思い出すな。ん、RPGは一人でやるものだって? いや、意外と人のプレイ見るのも面白いからな。二人で4周とかザラだ。
俺はこれから、この世界の人間に、会うことはあるのか。
そして、聖剣と対決する時は来るのか。
そんなことを考えながら、俺はノエルに運ばれていくのだった。
★キャラ紹介
■魔剣ラグナロク(???)
性別:男?
魔族の宝であり、代々、王のみが持つことを許される魔道具の剣。
現在、なぜか異世界から男子高校生の魂が宿っている。聖剣に宿る魂の兄。
風を自在に操る能力を持つ。黒い刀身は、能力発動時に銀に輝く。
■聖剣エクスカリバー(伊織)
性別:女?
人間の宝であり、選ばれた勇者のみが持つことを許される魔道具の剣。
現在、異世界の女子高校生の魂が宿っている。魔剣に宿る魂の妹。
任意の対象物を自分から遠ざける、結界の能力を持つ。能力発動時は、白い刀身が金に輝く。
■セラ
性別:男
聖剣に選ばれた勇者。魔族との戦争を回避するべく、魔道具集めの命を受けて旅立った。
綺麗な顔立ち、細身の体格、柔らかな物腰から、女と勘違いされるが、れっきとした男。
■キース
性別:男
勇者セラの護衛として、共に旅立った弓使いの青年。
チャラい言動だが、実力は未知数。魔道具「幻惑の弓」を持っている。
■ノエル
性別:女
魔族の王族の姫。先代魔王が早世したことで、幼いながら魔王となった。
非常に非力で弱っちいが、立派な魔王になりたいと強く思っている。
魔剣と、魔剣を持つための魔道具「力の手袋」を所持。
■ケルン
性別:男
魔族の戦士で、ノエルの護衛をしている。先代魔王への忠誠心がありあまるためか、ノエルに過保護。
装備者の回復力を高める魔道具「癒しの鎧」を所持。本来は、「力の手袋」装備による怪力で槍を操っていた。
しかし、よく鍛えた体から繰り出される武術はそれだけでも強力。




