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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第一章 剣に転生した兄妹
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魔剣になった俺(05)


 †††


 ノエルは、ゴーレムを倒したことに、しばらく呆けていた。しかし、ケルンが呻きながら膝をつくと、はっとして、その大きな腕にすがりつく。


「ケルン! 怪我は……!」

「申し訳ありません、姫様……少し休めば、治ります」


 そ、そんな訳あるか。かなりの重症だろ?

 しかしノエルは、ほっと息をついた。


「そうか、癒しの鎧の効果があるのだったな……良かった、なら、しばらく休んでくれ」


 ふむ。ケルンの着ている鎧は、傷を治す効果があるのか。そういうアイテムあるよな。それなら、時間はかかるようだが、問題なさそうだ。

 逃げて遠くから様子をうかがっていた村人達も戻ってきた。ノエルが手を振ると、歓声が上がった。



 しばらく休むと、本当に傷は治ったらしく、ケルンは立ち上がった。倒れたゴーレムに近付き、観察する。ノエルもおっかなびっくりついてくる。もう動かないよ、多分。

 しかし、近くで見ると本当に大きいな。


「このゴーレムを倒すとは、さすがは姫様……魔剣を使いこなしたのですね」


 ケルンは感動に満ち溢れた目でノエルを見る。ノエルは一瞬、ぽかんとしたが、すぐに胸を張った。


「うむ! 我は魔剣に認められた魔王だからな!」


 おーい。いや、間違ってはないんだけどさ。

 ひとしきり親馬鹿タイムを堪能した後、ケルンはゴーレムの近くにしゃがみ、考え始める。


「魔道具であるゴーレムが勝手に村を襲うはずがない……やはりこれは、人間が送り込んだものなのか」

「人間はやはり、魔族相手に、戦争を起こすつもりなのか?」


 ノエルが不安そうに言う。ケルンは険しい顔をした。


「すぐには判断できませんが、人間は、長く封印していた、聖剣エクスカリバーを持ち出したとの噂があります……」


 聖剣エクスカリバー。おお、やっぱりあるのな。魔剣がある時点でなんとなく察していた。


「しかし、急に罪もない、民を襲うなど、何を考えているのだ……父上は言っていたぞ、人間は我らと敵対しているが、決して馬鹿ではない。油断はできないが、話は通じる相手だと」


 ノエルは唇を噛む。敵国とはいえ、急に理不尽に侵略してきたことが信じられないのだろう。


「……全ての人間が愚かではないかもしれませんが、我々に敵愾心を抱く野蛮な輩もいるでしょう。人間を侮ってはいけませんが、しかし、信じてはなりません」


 険しい顔でケルンは思案し、ノエルに進言する。


「姫様、まずは偵察を送りましょう。人間達の動きを探るのです」

「……む」


 ノエルはしばらく考えた後、頷いた。


「ではまず、城に戻り、人を選びましょう」

「その必要はない」


 ノエルは胸を張った。俺、嫌な予感がする。


「このまま我らで人間の国に向かうのだ」



 ケルンは即座に反対した。


「いけません、姫様、危険です」

「危険だからこそ、我が行くのだ!」


 また始まった。

 俺は話せないので、黙って聞いているだけだが、常識的に考えて、ケルンの意見に賛成だ。魔王様自ら、敵地にずんずん進んでどうするんだよ。大将は後ろにいなさい。


「ご自分の立場を理解してください。魔剣は、代々魔王しか受け入れないと聞いていましたから、姫様自ら出向いて頂きましたが、姫様は我が国の大切なお方なのですよ!」


 だよなー、普通。

 ……いや、割と、国の王子王女自ら魔王討伐に行く物語って少なくないけどな。

 大事な世継ぎが死んだらどうすんだ。「死んでしまうとはなさけない」では済まされないのだ。


「違うぞ、ケルン。国にとって一番大切なのは国の民、とりわけ未来を担う子供達なのだ」


 いや、お前もまだ子供だよ、ノエル。

 ノエルは、村を見渡した。死人こそ出なかったようだが、焼き付くされた家の前で、うなだれている人々がいる。その中には、小さな子供もいた。


「我は民を守るために魔剣を手に入れたのだ。それに、遺跡地帯に向かうなら、城に戻るより、このまま南に行った方が早い」

「それはそうですが……」


 ケルンは、長いため息をついた。


「仕方ありませんね……お供いたします。ですが、これだけはお約束ください。あくまで、偵察だけです。人間と戦うことになれば、すぐ引き返すのですよ」


 うむ、とノエルは頷いた。

 結局こうなるか。何だかんだ、ケルンはノエルに甘いんだな。


 村でゆっくり休み、次の日、俺達は南へと出発した。

 魔族と人間の国の境界――遺跡地帯を目指して。

 伊織とプレイしたRPGを思い出すな。ん、RPGは一人でやるものだって? いや、意外と人のプレイ見るのも面白いからな。二人で4周とかザラだ。


 俺はこれから、この世界の人間に、会うことはあるのか。

 そして、聖剣と対決する時は来るのか。

 そんなことを考えながら、俺はノエルに運ばれていくのだった。


★キャラ紹介


■魔剣ラグナロク(???)

 性別:男?

 魔族の宝であり、代々、王のみが持つことを許される魔道具の剣。

 現在、なぜか異世界から男子高校生の魂が宿っている。聖剣に宿る魂の兄。

 風を自在に操る能力を持つ。黒い刀身は、能力発動時に銀に輝く。



■聖剣エクスカリバー(伊織)

 性別:女?

 人間の宝であり、選ばれた勇者のみが持つことを許される魔道具の剣。

 現在、異世界の女子高校生の魂が宿っている。魔剣に宿る魂の妹。

 任意の対象物を自分から遠ざける、結界の能力を持つ。能力発動時は、白い刀身が金に輝く。



■セラ

 性別:男

 聖剣に選ばれた勇者。魔族との戦争を回避するべく、魔道具集めの命を受けて旅立った。

 綺麗な顔立ち、細身の体格、柔らかな物腰から、女と勘違いされるが、れっきとした男。



■キース

 性別:男

 勇者セラの護衛として、共に旅立った弓使いの青年。

 チャラい言動だが、実力は未知数。魔道具「幻惑の弓」を持っている。



■ノエル

 性別:女

 魔族の王族の姫。先代魔王が早世したことで、幼いながら魔王となった。

 非常に非力で弱っちいが、立派な魔王になりたいと強く思っている。

 魔剣と、魔剣を持つための魔道具「力の手袋」を所持。



■ケルン

 性別:男

 魔族の戦士で、ノエルの護衛をしている。先代魔王への忠誠心がありあまるためか、ノエルに過保護。

 装備者の回復力を高める魔道具「癒しの鎧」を所持。本来は、「力の手袋」装備による怪力で槍を操っていた。

 しかし、よく鍛えた体から繰り出される武術はそれだけでも強力。


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