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俺が魔剣、妹が聖剣に転生した件  作者: 梨野可鈴
第一章 剣に転生した兄妹
10/61

聖剣になった私(05)


 †††


「どもっす! 呼ばれてやってきましたー」


 突然現れた、軽いノリの弓使いの若者に、私は聖剣として、コイツ、出来る! と感じていた。


 そう感じたのにはちゃんと理由がある。

 私は剣になってから、視界が広がって、全方位見えるようになった。だから、後ろから近付かれても――そもそも後ろってどっちだって話なんだけど――私は気付くはず。

 なのに、今の青年がいつ入ってきたのか、まったくわからなかったわけで。


 その青年は、セラに近付いてきた。

 くしゃくしゃした癖っけのある黒髪で、ひょろっと背が高い。


「君が勇者っすか! 俺はキース、よろしくっす!」

「あ、はい、よろしく……ええと?」


 困惑した様子のセラに、騎士さんが説明する。


「旅は危険だからな。また、遺跡地帯に行けば、魔族と会うこともあるかもしれない。そういうわけで、彼をセラ殿の護衛につける為に呼んだのだ」

「そういうわけっす、セラ」


 軽い。チャラい。

 しかし、ヘラヘラしてる割に何となく目は鋭い。国が勇者の護衛につけるくらいだから、まあ実力はあるんだろうな。


 それから、セラは王様から出立金や手紙などを渡されると、いよいよ旅立った。

 遺跡地帯を目指し、私達のいる街、”光の都”を出て、北に向かう。



 街道を歩きながら、セラがキースに話しかける。


「あの、キースさん」

「キースでいいっすよ、何すか?」

「じゃあ、キース。キースの背負ってる弓って、魔道具?」

「お、よく気付いたっすね」


 私は驚く。え、魔道具なの?

 キースはちょい、と背中の弓に触れた。キースの背負っている弓は、全体的に紫色に塗られているが、見たところ普通の弓に見える。

 いや、まあ、私も見た目は普通の剣とそう違わないんだけどさ。


「弓使いにしては、持っている矢が少ないと思ったから」

「なーるほど。賢いっすね」

「魔道具を持ってるなんて、凄いね」


 セラは言う。どうやら、話を聞いている限り、魔道具というのはとても貴重なものらしい。


「や、聖剣に選ばれた勇者に言われてもっす……」


 そ、そうだよセラ……。セラには私がいるじゃん。

 しかし、セラは腰に提げた私に触れた後、少し眉を下げた。


「いや、何だかまだ実感はないんだ。勇者に志願はしたんだけど、まさか聖剣に選ばれるなんて……」

「俺も聞いていいっすか?」

「うん、何?」

「セラはなんで女の子なのに、勇者に志願したっすか?」


 キースが尋ねると――セラは、一瞬固まり、ため息をついた。


「あの、キース。――僕は男だよ」



「えええーっ!?」

(えええええーっ!?)


 キースの叫び声と、私の心の声が重なった。

 ええ!? セラって男なの?


「嘘ぉ! そんな綺麗な顔してて、男っすか!?」


 キースが、私の心の声を完璧に代弁する。


「いや、そんなこと言われても、顔は生まれつきだし……たまに、間違えられるけど」


 いや、よく間違えられるというレベルではないって!

 絶対に王様も騎士さんも、セラは女の子だと思ってたよ!


「ま、マジすか……俺、勇者が可愛い子でラッキーって思ってたのに……」


 落ち込むキース。不純な気持ちが駄々漏れだよ。

 私もどうしよう、である。女の子だと思ったからセラを勇者に選んだのに。

 ……いや、今さら引っ込みつかないけどさ。それにまあ、男だと分かった今でも、特に嫌悪感はないから、いいか。

 セラは、頭を抱えるキースを微妙な表情で見る。


「……キース? まさかとは思うけど……僕が男でも、護衛はしてくれるんだよね?」


 首を傾げるセラに、キースが明後日の方向を向いて悶絶する。ぶつぶつ呟いているのが、私の耳には入る。聖剣の聴力はそれなりにいいのだ。


「ううう、男だとわかってても守りたくなる可憐さ! 何なんすかこれは……」


 ……だ、大丈夫なのかな、この勇者パーティ。

 いざとなればセラのことは私が守ろう、うん。



 そんなこんなで、私達は北の遺跡地帯――魔道具が多く眠るという地に、向かっていったのでした。


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