聖剣になった私(05)
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「どもっす! 呼ばれてやってきましたー」
突然現れた、軽いノリの弓使いの若者に、私は聖剣として、コイツ、出来る! と感じていた。
そう感じたのにはちゃんと理由がある。
私は剣になってから、視界が広がって、全方位見えるようになった。だから、後ろから近付かれても――そもそも後ろってどっちだって話なんだけど――私は気付くはず。
なのに、今の青年がいつ入ってきたのか、まったくわからなかったわけで。
その青年は、セラに近付いてきた。
くしゃくしゃした癖っけのある黒髪で、ひょろっと背が高い。
「君が勇者っすか! 俺はキース、よろしくっす!」
「あ、はい、よろしく……ええと?」
困惑した様子のセラに、騎士さんが説明する。
「旅は危険だからな。また、遺跡地帯に行けば、魔族と会うこともあるかもしれない。そういうわけで、彼をセラ殿の護衛につける為に呼んだのだ」
「そういうわけっす、セラ」
軽い。チャラい。
しかし、ヘラヘラしてる割に何となく目は鋭い。国が勇者の護衛につけるくらいだから、まあ実力はあるんだろうな。
それから、セラは王様から出立金や手紙などを渡されると、いよいよ旅立った。
遺跡地帯を目指し、私達のいる街、”光の都”を出て、北に向かう。
街道を歩きながら、セラがキースに話しかける。
「あの、キースさん」
「キースでいいっすよ、何すか?」
「じゃあ、キース。キースの背負ってる弓って、魔道具?」
「お、よく気付いたっすね」
私は驚く。え、魔道具なの?
キースはちょい、と背中の弓に触れた。キースの背負っている弓は、全体的に紫色に塗られているが、見たところ普通の弓に見える。
いや、まあ、私も見た目は普通の剣とそう違わないんだけどさ。
「弓使いにしては、持っている矢が少ないと思ったから」
「なーるほど。賢いっすね」
「魔道具を持ってるなんて、凄いね」
セラは言う。どうやら、話を聞いている限り、魔道具というのはとても貴重なものらしい。
「や、聖剣に選ばれた勇者に言われてもっす……」
そ、そうだよセラ……。セラには私がいるじゃん。
しかし、セラは腰に提げた私に触れた後、少し眉を下げた。
「いや、何だかまだ実感はないんだ。勇者に志願はしたんだけど、まさか聖剣に選ばれるなんて……」
「俺も聞いていいっすか?」
「うん、何?」
「セラはなんで女の子なのに、勇者に志願したっすか?」
キースが尋ねると――セラは、一瞬固まり、ため息をついた。
「あの、キース。――僕は男だよ」
「えええーっ!?」
(えええええーっ!?)
キースの叫び声と、私の心の声が重なった。
ええ!? セラって男なの?
「嘘ぉ! そんな綺麗な顔してて、男っすか!?」
キースが、私の心の声を完璧に代弁する。
「いや、そんなこと言われても、顔は生まれつきだし……たまに、間違えられるけど」
いや、よく間違えられるというレベルではないって!
絶対に王様も騎士さんも、セラは女の子だと思ってたよ!
「ま、マジすか……俺、勇者が可愛い子でラッキーって思ってたのに……」
落ち込むキース。不純な気持ちが駄々漏れだよ。
私もどうしよう、である。女の子だと思ったからセラを勇者に選んだのに。
……いや、今さら引っ込みつかないけどさ。それにまあ、男だと分かった今でも、特に嫌悪感はないから、いいか。
セラは、頭を抱えるキースを微妙な表情で見る。
「……キース? まさかとは思うけど……僕が男でも、護衛はしてくれるんだよね?」
首を傾げるセラに、キースが明後日の方向を向いて悶絶する。ぶつぶつ呟いているのが、私の耳には入る。聖剣の聴力はそれなりにいいのだ。
「ううう、男だとわかってても守りたくなる可憐さ! 何なんすかこれは……」
……だ、大丈夫なのかな、この勇者パーティ。
いざとなればセラのことは私が守ろう、うん。
そんなこんなで、私達は北の遺跡地帯――魔道具が多く眠るという地に、向かっていったのでした。




